石原さとみ主演の火曜ドラマ「Heaven? ~ご苦楽レストラン~」。墓地の裏にあるフレンチレストラン「ロワン ディシー」(この世の果て)を舞台にしたレストランコメディー。


先週放送された8話の視聴率は7.5%。6話で記録したシリーズ最低視聴率に戻ってしまった。演出は6話と同じく木村ひさし氏。

石原さとみのメガネ姿は麗しく、“ダブル岸部一徳”による掛け合いもおかしかった。物議を醸した「生首演出」もCGによる背後の文字もかなり少なめになっている(なくなったわけではない)。しかし、8話に関しては、圧倒的にコメディーとしてのストーリーのヒネリが足りなかったように思えてならない。
石原さとみ「Heaven?」の「生首演出」が極端に減った件について考える。今夜最終章へ 
イラスト/まつもとりえこ

ダブル岸部一徳の丁々発止


「ロワン ディシー」のソムリエ、山縣(岸部一徳)の宿命のライバル、浦海(岸部一徳。二役)が店にやってきた。どこからか噂で山縣がソムリエをしているのを聞きつけてやってきたのだ。

丁々発止のやりとりを繰り広げるそっくりな2人。浦海は、山縣がソムリエ試験に合格していないと聞いて嘲笑う。ソムリエ試験は飲食サービスに3年以上従事していないと受験資格がなく、いかに山縣が資格マニアであっても受験できなかったのだ。

浦海はワインエキスパート資格のバッジを自慢気に見せびらかす。
ソムリエ資格もワインエキスパート資格も日本ソムリエ協会が認定する資格だが、前者が飲食店で働くときに役立つ資格であるのに対し、後者はあくまで趣味の資格で誰でも受験できる。それでもわざわざ資格を取って見せびらかすイヤミさに山縣は歯噛みする。

浦海は山縣がソムリエ資格に一発合格したら、30万円のワインを開けることを約束。オーナーの黒須仮名子(石原さとみ)にも合格を厳命された山縣は、受験資格があったシェフドランの伊賀(福士蒼汰)と店長の堤(勝村政信)にソムリエ資格を受験させてデータを収集しようとする。

ところが、なんでもソツなくこなす伊賀は試験が大の苦手。かつて大学受験を母親(財前直見)に邪魔されたトラウマがあるからだ。だが、オーナーの仮名子の指示によって強制的に受験が決定する。

山縣、堤、集中講座で出会った板前の彦坂(平泉成)と支え合いながら、一次試験、二次試験を突破(堤は二次試験で脱落)。いよいよ最終試験に臨む伊賀の前に、母親の影が忍び寄る。そして、なぜか試験会場にはトラブルメーカーの仮名子の姿が……!

何も起きなかった最終試験


ワハハと笑うのではなく、クスッと笑わせるのが佐々木倫子による原作版の真骨頂だが、実はそれがもっとも難しい。

序盤の“ダブル岸部一徳”は画面から感じる圧も含めて面白かったのだが、そこから最終試験に至るまで、特に笑わせるところもなく、スルスルと話が進んでいく。ちょっとした言い間違いや聞き間違いなどで笑いをとろうとしている部分もあったが、あまりにも微細だったため、気が付かない視聴者もいたと思う。


その後、最終試験になって、伊賀が苦手としている母親が登場。さらに仮名子が試験会場に現れて、「これはいよいよ何かが起こる……!」と身構えていたのだが、特に何も起きない。仮名子がちょっと騒ぎを起こすが、大事には至らず。伊賀は淡々と試験を終える。

理不尽な災いによって努力が台無しになるストレスフルな展開は視聴者に嫌われるかもしれないが、ここまで何も起きないと逆に「何か起こしてよ!」という気になってくる。

結局、(何が悪かったのかよくわからないまま)伊賀は不合格で、試験中にワインをこぼしていた彦坂は合格。それは別にいいんだけど、お話のきっかけになった浦海がまったく登場しないまま、ワハハと終わってしまった。もうちょっとお話に決着をつけようとしても良かったんじゃないの?

試験会場でありふれたドタバタをやらなかったのは、「上質なコメディーを作りたい」という制作サイドの意思の表れだったのだろうが、同時に極端に引っかかりのないエピソードになってしまった。

「Heaven?」は特にメッセージなどのない作品だ。だから、その分だけ、作り手に何かをやろうとする意思が必要になると思う。それが「生首演出」だったのかもしれないが、それを減らしたら何もなくなってしまった……では、困る。

ラスト2話、超クセ者の白井晃が登場する。
「ロワン ディシー」の面々とどんな化学反応を起こすのか? それともまるごと食ってしまうのか? 今夜10時から。
(大山くまお)

「Heaven? ~ご苦楽レストラン~」
出演:石原さとみ、福士蒼汰、志尊淳、勝村政信、段田安則、岸部一徳、舘ひろし
原作:佐々木倫子 『Heaven?』(ビッグスピリッツコミックス刊)
脚本: 吉田恵里香
音楽:井筒昭雄
主題歌:あいみょん 「真夏の夜の匂いがする」
演出:木村ひさし、松木彩、村尾嘉昭
プロデュース:瀬戸口克陽
製作著作:TBS
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