「スカーレット」7話。草間(佐藤隆太)は「キャンディキャンディ」のアルバートさん的存在か
連続テレビ小説「スカーレット」7話。木俣冬の連続朝ドラレビューでエキレビ!毎日追いかけます

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連続テレビ小説「スカーレット」 
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~
「スカーレット」7話。草間(佐藤隆太)は「キャンディキャンディ」のアルバートさん的存在か

『連続テレビ小説 スカーレット Part1 (1)』 (NHKドラマ・ガイド)

第2週「意地と誇りの旅立ち」7話(10月7日・月 放送 演出・中島由貴)


土曜日の少女たちのキスシーンは視聴率18.1%だったそうだ(関東地区)。以前から土曜日は視聴率が下がる傾向にあったから、それも織り込み済みで、実験的なことをやってみたのかもしれない。そう思うと、次回作「エール」から週5になるのはいささか惜しい。
実験してみる場がなくなるからだ。例えば、「ひよっこ」のときは土曜日に茨城で田植えなどをして牧歌的な15分が意外と好評で、何かと主人公が地元に帰る土曜日に珍しく視聴率が上がるなんていう逆転現象もあったのだ。実験されても…と思う人もいるかもしれないからなんともいえないし、そもそも当事者たちは実験しているつもりはないかもしれないし。

草間さん、もう戻って来た


開けて月曜、第2週も、借金取りの工藤(福田転球)と本木(武蔵)が、またまた登場した草間(佐藤隆太)に柔道で投げられてクルクルクルと空の向こうに飛んでいくという漫画ぽい画面が出て来た。

それよりなにより草間である。あんなに余韻を残して去っていったのに(喜美子〈川島夕空〉なんて手紙が読めなくて泣いていた)、もう戻って来たことに驚いた。そして、借金取りを退治したり、川原家に借金を肩代わりしたり。とっても都合のいい人である。ふらっと出てきて主人公を助ける「キャンディキャンディ」のアルバートさん的キャラ。物語にはこういう人がいていいのである。

「優しい男ちゃうの?」


借金とりは、川島家で風呂に入ったり、ゆでたまごを食べたり、やりたい放題。
喜美子は風呂を熱く炊いてこらしめようかと考えたりもする。やがて陶芸家として灼熱の炎と向き合うことになることを土曜日からほのめかすサービス伏線だ。

いざ薪をくべようとしたそのとき、工藤が話しかけてきた。

父・常治(北村一輝)に借金があり自分たちの行為の正当性を語る。また、自分にも子供がいることも明かし、ひとは、見る人によって、いい人になったり悪い人になったりすると説く。
怖く見えても優しい人かもしれないと思った喜美子は、ゆでたまごを独り占めする本木の優しさに期待するも、卵を譲ってはもらえず「優しい男ちゃうの?」とがっかり。

直子(やくわなつみ)が噛み付いて反撃、外に逃げると、そこに草間がやってきて助けてくれた。
このとき、かかるエレキギターの軽妙な劇伴は、第一週でいじめっこたちが喜美子を攻撃するときにもかかったもの。軽妙なので、深刻にならず、起こっている出来事がそれほど根深い問題ではなさそうだと感じさせてくれる。

草間といい、工藤といい、外から来た人たちが喜美子に教えをもたらす。おじいちゃん、おばあちゃんなどの年寄りがいたら借金はよくないと言われていたであろうとも工藤は言う。父母がいわゆる教えという意味で機能していないのは、おじいちゃんやおばあちゃん、それに近所のひとたちで助け合っていこうという提案のためかもしれない。

ところで、じょーじ


草間がせっかく助けてもらったお礼にお金を払うといっても、なぜか常治(北村一輝)は頑なに拒否する。
なかなか複雑な人である。
北村一輝がジョージ、ジョージと呼ばれていることにデジャヴュを感じていたのだが、「春ランマン」(02年 関西テレビ)というドラマで、丈二という、愛されるだめ人間を演じて人気だったことを思い出した。人気だったので「秋ランマン 丈二の夢は夜ひらく」というスピンオフ舞台までできたほどの、北村一輝の出世作のひとつであった。

なまえといえば、戸田恵梨香はヒット作「コードブルー〜ドクターヘリ緊急救命」で「緋山」という役名だった。となると、ほかにもリンクを感じさせる名前がまだあるかも。


登場人物のまとめ



川原喜美子…戸田恵梨香 幼少期 川島夕空  主人公。空襲のとき妹の手を離してトラウマにしてしまったことを引きずっている。 漢字が読めなかったが、勉強してすぐ読めるようになった。絵がうまい。
川原常治…北村一輝 戦争や商売の失敗で何もかも失い、大阪から信楽にやってきた。気のいい家長だが、酒好きで、借金もある。にもかかわらず人助けをしてしまうお人好し。丸熊陶業で働く。
川原マツ…富田靖子 地主の娘だったがなぜか常治と結婚。体が弱いらしく家事を喜美子の手伝いに頼っている。
あまり子供の教育に熱心には見えない。
川原直子…桜庭ななみ 幼少期 やくわなつみ 川原家次女 空襲でこわい目にあってPTSDに苦しんでいる。それを理由にわがまま放題。
川原百合子…福田麻由子 昭和22年時、まだ赤ちゃん
熊谷照子…大島優子 幼少期 横溝菜帆 信楽の大きな窯元の娘。「友達になってあげてもいい」が口癖で喜美子にやたら構う。兄が学徒動員で戦死している。
熊谷秀男…阪田マサノブ  信楽で最も大きな「丸熊陶業」の社長。
大野信作…林遣都 幼少期 中村謙心 喜美子の同級生 体が弱い。
大野忠信…マギー 大野雑貨店の店主。信作の父。戦争時、常治に助けられてその恩返しに、信楽に川原一家を呼んでなにかと世話する。
大野陽子…財前直見 信作の母。
川原一家に目をかける。
慶乃川善…村上ショージ 丸熊陶業の陶工。陶芸家を目指していたが諦めて引退する。喜美子に作品を
「ゴミ」扱いされる。
草間宗一郎…佐藤隆太 大阪の闇市で常治に拾われる謎の旅人。医者の見立てでは「心に栄養が足りない」。戦時中は満州にいてそこで何かあったらしい。喜美子の良いところと悪いところを指摘して影響を与えながら、ふらりと信楽を出ていってしまう。

工藤…福田転球  大阪から来た借金取り。  幼い子どもがいる。
本木…武蔵 大阪から来た借金取り。


脚本:水橋文美枝
演出:中島由貴、佐藤譲、鈴木航ほか
音楽:冬野ユミ
キャスト: 戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ、福田麻由子、佐藤隆太、大島優子、林 遣都、財前直見、水野美紀、溝端淳平ほか
語り:中條誠子アナウンサー
主題歌:Superfly「フレア」
制作統括:内田ゆき
(木俣冬 タイトルデザイン/まつもとりえこ)
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