
2019年、夏の全国ツアーで20公演を走り抜けた、うらたぬき、志麻、となりの坂田。、センラで構成される「浦島坂田船」。
彼らのハロウィン公演も、数えれば3年目。今年は『Happy Halloweeeen 浦島坂田幽霊船~ようこそ令和元年 やっぱり霊はあかんねん 憑依GO!~』と題し、2日間に渡っての開催だ。10月22日に兵庫県 ワールド記念ホールで、そして24日には自身初でもある横浜アリーナで開催。本稿では24日の模様をレポートする。

廃墟を思わせるメインステージにはジャック・オ・ランタンがあしらわれ、期待に胸を高鳴らせるcrew(浦島坂田船のファンの呼称)を怪しく誘う。定刻を迎え、厳かなナレーションが語り始めたのは、共栄していくはずだった2つの名家と、開催されるはずだった舞踏会の物語。悲劇によって未来と平和は奪われ、300年が経った今もなおさまよい続ける魂が今夜、ここ横浜アリーナに集ったという。
そしていよいよ、失われた舞踏会の幕が上がる。オープニングを飾るのは、今年のハロウィン曲「HORRORISM」。最初は浦島坂田船の姿がなく、映像と音声のみの登場という、まさしく幽霊を思わせる演出。曲の途中にモニターが上下に分かれ、その間から4人の姿が現れた。

「おい横浜、声出せんのか!」と、舞踏会にしてはやや荒々しく口火を切ったのは、足軽ゾンビに扮し、傷メイクや血のりを施した志麻。うらたぬきは悪魔として頭から黒い角を生やし、となりの坂田。は首からロザリオを提げて神父、センラは青いジャケットを纏った貴族と、それぞれに仮装しての登場だ。いつもとは違う衣装や物語性のあるコンセプトでライブを楽しめるのも、ハロウィン公演の大きな魅力と言えよう。そのまま、昨年のハロウィン曲「グリムメイカー」を歌い上げた。

「Mrs.Pumpkinの滑稽な夢」のイントロを合図に、4人は花道を歩いてセンターステージへ。間奏の音に合わせてポーズを決めたり、<お迎えに上がりました>の部分では腕をふって恭しくお辞儀をするなど、歌唱だけでなく細かな演出の部分でも楽しませることを忘れない。コール&レスポンスで盛り上がる「ハロウ!ゴーストシップ」で一体感を最大まで高めると、そのままペア歌唱パートへ。

……が、カボチャのいたずらによって、うらたぬき・となりの坂田。、志麻・センラが入れ替わってしまう。そのまま最新アルバム「$HUFFLE」収録曲を、シンガーを変更して展開。すなわち、うらたぬき・となりの坂田。


寸劇を経て、10月18日に発表された新曲「ハングリー・ゴースト」。ボカロP界の巨匠的存在・DECO*27が作詞曲を担当し、「Gimmie, Gimmie, Gimmie,」と繰り返すフレーズに自然と体が揺れるハロウィンナンバーだ。「舞踏会」というテーマを体現するように、今回の公演は振付のある楽曲が多い。ダンサー陣も交えて横長の空間を贅沢に使い、様々なエンタメが飛び出す彼らのステージは、それこそ魅惑的なお菓子箱のようだ。4人は浦島坂田船としてのライブに加えてソロライブやペアライブ、そして個々のゲスト出演など、ライブ尽くしの1年を過ごしてきた。小気味好いMCトークも含め、そのステージングには貫禄すら漂い始めている。

後半戦、4人はアメカジファッションにスタイルチェンジ。ライブで必ず盛り上がる定番曲「Starry Cruise」が始まると、トロッコで、緑、紫、赤、黄の4色に光るペンライトの大海原へ乗り出した。


メインステージに戻り、ここからは1人ずつソロ曲を披露していく。




夏ツアーの代名詞的ナンバー「ポーカーフェイク」は、全員で大人の余裕たっぷりに。そのまま和風曲「花吹雪」「千本桜-guitar rock arrangement ver-」と続け、モニターの桜が突如クリスマスツリーに変われば、2016年発表のラブソング「Snow melody」をロマンチックに歌い上げた。



「いつか、『浦島坂田船っていうよくわかんないグループいたなあ』とか、『その時推してて楽しかったなあ』っていう思い出をしっかりと記憶に留めてほしいです。約束できますか?」(うらたぬき)と問いかけ、crewの元気な返事に満足げな表情を見せると、本編最後の「カレンダーリマインダー」を披露。実は現在、彼らを題材としたTVアニメ「浦島坂田船の日常」が放送されており、同曲はそのOP曲である。


鳴り止まないアンコールに応え、パーカー・Tシャツに着替えた彼らはなんとステージと反対側、会場後方から現れた。crew達がそれに気付くとほぼ同時に、聞き慣れた「Shouter」のイントロが流れる。

ステージに戻ると記念撮影を経て、本日そして今年最後の曲。TVアニメ「イナズマイレブン オリオンの刻印」のED曲であり、つんく♂が手がけたことでも話題を集めた「明日へのBye Bye」だ。ライブの終わりが示すのはお別れではなく、また会うための約束―。そんな風にポジティブに考えてしまうほど、彼らの歌は聴く者に希望を抱かせる。全25曲を終えステージを去る際に彼らが残した、思い思いの愛のセリフ。また来年彼らに会える日まで、crewの胸に大切にしまわれることだろう。


センラ:みんな楽しかった?君は楽しかったですか? じゃあ、次までのデートプラン、また俺考えとくからな。
となりの坂田。:ええっと、どうも坂田です。今日はありがとうございました。僕はデートプラン考えるの苦手なので、一緒に考えよ!
志麻:どうも志麻でーす。
うらたぬき:みんな楽しかったかー! ちょっと目つぶってください(カメラに向かってキス)。あ、しちゃったけど……な、内緒だぞ!

取材・文/ヒガキユウカ
撮影/小松陽祐(ODD JOB)、堀卓朗(ELENORE)
<セットリスト>
01. HORRORISM
02. グリムメイカー
03. ゴーストルール
04. 拝啓ドッペルゲンガー
05. Mrs.Pumpkinの滑稽な夢
06. Happy Halloween
07. ハロウ!ゴーストシップ
08. Trip-Trap, Love Trap!! / うらたぬき・となりの坂田。→志麻・センラ
09. 決戦前夜 /うらたぬき・となりの坂田。
10. ハングリー・ゴースト
11. Starry Cruise
12. Fortune!!
13. ARK
14. ビターチョコデコレーション / となりの坂田。
15. 最適解 / 志麻
16. コールボーイ / センラ
17. 誘惑 / うらたぬき
18. Beetle Battle
19. ポーカーフェイク
20. 花吹雪
21. 千本桜-guitar rock arrangement ver.-
22. Snow melody
23. カレンダーリマインダー
Encore
En-1. Shouter
En-2. 明日へのBye Bye
※「Shouter」の「e」はウムラウト付きが正式表記。