「私にはセフレが5人いる。みんなマッチングアプリで知り合った。
男たちは深夜でも会ってくれるし、セックスはお金がかからない合理的な趣味だ」


これを「ぶっ飛んだ設定だなあ」と思うか、「私のことだ……」と思うか。

1月8日(水)深夜から放送開始の内田理央主演ドラマ 『来世ではちゃんとします』(テレビ東京系)。CG制作会社で働く性に奔放な女性・大森桃江(内田理央)と、その周囲の性をこじらせた人々の暮らしを描くラブコメディーだ。
内田理央「来世ではちゃんとします」1話。セフレ5人いる女子に驚くか「私のことだ」と共感するか?
いつまちゃん「来世ではちゃんとします」1巻(集英社)

原作は、『グランドジャンプ』(集英社)で連載中の同名漫画。原作者はいつまちゃん。ドラマ版の脚本は、演劇ユニット・ブス会主宰でAV監督のペヤンヌマキ、映画『私たちのハァハァ』(2015年)の舘そらみが担う。
監督には、映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』(2016年)、『“隠れビッチ”やってました。』(2019年)の三木康一郎らが名を連ねている。

記号として描かれないヤリマンと処女


桃江には、Aくん(塩野瑛久)、Bくん(平田雄也)、Cくん(野村尚平(令和喜多みな実))、Dくん(富田健太郎)、Eくん(おばたのお兄さん)という5人のセックスフレンドがいる。5人いれば、一人がダメでも誰かは盛っているから便利とのこと。セックスだけと割り切って楽しんでいるかというとそうではなく、商社勤務で高学歴・高収入・顔が良いAくんには恋をしてしまっている。

Aくんの性的嗜好は、桃江いわく「かなりハードコア」。桃江を亀甲縛りし、自分が作ったオムライスを手を使わずに食べさせる。
桃江を見ながら徐々に息を荒くしていくAくん。わざとらしくエロそうな声を出したり舌なめずりをしたりせず、深い息と唾を飲むだけで興奮を表現していた。

セフレとの連絡は、LINEやメールではなくカカオトーク。これは「リアリティ要素」ではないだろうか。セフレとの連絡手段をメインのSNSではなくサブの別なツールにするのは、ある一定層には「あるある」だ。本命の恋人や配偶者がいたりできたりする可能性があるし、仕事仲間や友人にも知られたくないから。
サブツールのアプリはスマホのホーム画面から消している人もいる。

「楽しそうでいいね」
桃江「楽しいことばかりじゃないよ。本命にしてもらえないし」
「え、本命になりたいの?」
桃江「え? うん、まあ一応」
「セフレなのに関係の発展望むのって厳しくない?」

桃江の同僚・高杉梅(太田莉菜)は、桃江に5人のセフレがいることを知った上でそれを認め、客観的な意見もくれる。そんな梅は、二次元の男性やBL(ボーイズラブ)が好きで、彼氏いない歴=年齢の処女、そしてアセクシャル(=他者に対して恋愛感情を持たない人)。性に関して色々と込み入っている。

桃江「穴があったら入りたい」
「あ、でも桃ちゃんいっつも穴に入れてばっかだもんな。
ふふふ」
桃江「えへへ。え、なにそれめっちゃ面白い」
「ふふふ、まあ本当のことだしな」
桃江「えへへ、確かに〜」

「変な友情を深めるヤリマンと処女でした」と、つぶやきシローのナレーション。ヤリマンと処女が、敵対したりマウントティングし合ったりしない関係として登場するのが嬉しい。

そもそも、ヤリマンや処女が記号的に描かれていない。会社のデスクの引き出しを下着のタンスにし、下着を選んではウキウキと着替えに行く桃江。同僚に「嫁の貰い手がない」と茶化されても、ムキになって反論しない梅。
おっとりした二人の話し方や、ユルくて笑えるやりとりは、日常ドラマだ。

性をこじらせた彼らを「変わった人たち」ではなく、「普通に生きてきた人たち」として描くべく、脚本、演出、演技でもって日常に丁寧に落とし込めていることがうかがえる。突飛なようで奇をてらっていない、これは日常エロラブコメディードラマだ。

性に悩む人びとを罰しないドラマ


内田理央「来世ではちゃんとします」1話。セフレ5人いる女子に驚くか「私のことだ」と共感するか?
内田理央写真集「だーりおのいっしゅうかん。」(集英社)

1話では、Aくんに亀甲縛りでオムライスを食べさせられている内田理央が話題となった。「なんだそれ……」とつい笑ってしまう(人のセックスを笑うな……)。一方で、別の日に桃江の汚部屋で朝を迎えたAくんと桃江が朝日の中でじゃれ合うシーンには「きれい」「いいなあ」「可愛いなあ」とも感じた。


時々、性に奔放な女性には罰が当たってほしい、悲惨な目に遭ってほしいと思っているような人に出くわすことがある。また、性に奔放な女性には何を言ってもハラスメントにはならないと思っているような心ない人もいる。

しかし本作は桃江を罰しない。桃江に「幸せ」とか「嬉しい」と思える瞬間も与えている。

桃江「まあいっか、来世ではちゃんとします、ということで」
他の誰かに言われずとも、現世ではまっとうに生きられないと諦めて生きる桃江たち。2話以降は、魔性のタラシ・松田健(小関裕太)、セカンド童貞・林勝(後藤剛範)、セフレ初心者・桜木亜子(小島籐子)、ソープ嬢にガチ恋・檜山トオル(飛永翼)と、こじらせた人々がどんどん登場する。性に迷いながら生きる彼らを、ドラマがどんな風に包み込んでいくのか。

第2話は、1月15日深夜に放送(テレビ東京、テレビ大阪)。Paraviでは、放送を先取配信中だ。
(むらたえりか)

【配信サイト】
Paravi:https://www.paravi.jp/watch/50172
※1月1日(水)21時?、Paraviにて毎話独占先行配信

【作品情報】
ドラマパラビ『来世ではちゃんとします』(テレビ東京系)
2020年1月8日(水)から、毎週水曜深夜1時35分〜放送
出演:内田理央、太田莉菜、小関裕太、後藤剛範、飛永翼(ラバーガール)、小島藤子、ゆうたろう、中川知香、塩野瑛久
ナレーター:つぶやきシロー
原作:いつまちゃん『来世ではちゃんとします』(集英社)
脚本:ペヤンヌマキ、舘そらみ
監督:三木康一郎、湯浅弘章、ペヤンヌマキ、大内隆弘、松浦健志
音楽:スキャット後藤
オープニング:大森靖子feat.峯田和伸「Re: Re: Love」
エンディング:SCANDAL「Tonight」
エンディングアニメーション:いつまちゃん
チーフ・プロデューサー:山鹿達也
プロデューサー:祖父江里奈、北川俊樹、熊谷理恵、塙太志
制作:テレビ東京、大映テレビ
製作:「来世ではちゃんとします」製作委員会

公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/raisechan/
公式Twitter:https://twitter.com/tx_raisechan
公式Instagram:https://www.instagram.com/tx_raisechan/