必ず訪れる未来である主人公・井沢範人(沢村一樹)の「射殺事件」。第1話から少しずつその全貌が描かれていく……という作りの今作。第4話では、事件の被害者であるミハンチームの統括責任者で法務省官僚の香坂朱里(水野美紀)の過去が明かされた。
本作に登場するミハンシステムとは、あらゆるビッグデータから未然に犯罪を犯しそうな人物を特定するシステム。警察の秘密組織である「未然犯罪捜査班」(通称・ミハン)はこれをもとに事件を未然に防ごうと奮闘する。

加害者家族にスポット
ミハンシステムが今回弾き出した危険人物は、通り魔に夫を殺された過去を持つ杉原佳代(木野花)。杉原は、自殺を考えている人たちの相談に乗る"命の相談員"として活動しつつ、様々な問題を抱えた人たちが住むためのシェアハウスを運営していた。
ミハンチームが調べてみると、数か月前までシェアハウスには杉原の夫を殺した通り魔の妹・佐藤奈々(木竜麻生)が住んでいた。被害者家族と加害者家族、相容れない関係に見える2人。杉原にはある思惑があった。
事件の被害者家族だけではなく、加害者家族にスポットを当てた第4話。日本には、加害者家族を守る法律がないらしく、何もしていないのに奈々はネットでさらされ、道で生卵をぶつけられたり、階段から突き落とされたりしていた。
「加害者本人は塀の中である意味守られ、バッシングの矢面に立つのは加害者家族の方だもんね」
井沢のセリフが印象的だ。
香坂は大事件の加害者家族だった
一話完結で描かれる事件は、井沢の「射殺事件」とおそらくなんの関係もない。しかし、今回でいう"加害者家族"のようにキーワードが本筋と深く関わっており、そこから人物のキャラクター性が掘り下げられ、結果的に「射殺事件」の謎が少し明かされるという作りになっている。この構成は本当に見事だ。
そして今回明らかになったのは、「射殺事件」の被害者である香坂の過去。26年前、精神を病んだ香坂の父親は、映画館内で神経ガスを撒き、死傷者を6人出す事件を起こしていた。香坂は、加害者の家族だったのだ。
暗い過去を持つ香坂は、時折、必要以上に悪を憎む一面を見せる。その姿は、妻子を殺された被害者家族の井沢と、男性に襲われた過去を持つ被害者の小田切(本田翼)と少し似ている。立場こそ逆に見えるが、過去がきっかけとなり未然に犯罪を防ぎたいという思いを持つのは2人と一緒だ。今までどこか敵対視していたミハンメンバーに、香坂は少しだけ気を許したような表情を見せた。
本筋もちょっと考察
本筋である井沢の「射殺事件」について、少しだけ考察もしておきたい。断片的に描かれているこの事件は、一見、井沢が香坂を銃で殺したように見える。
だが、不自然な部分もある。普通だったら銃殺する場合、少し距離を取って撃ちそうなものだが、井沢の手はまるでナイフで刺したかのように血がべっとりとついていた。このことから、至近距離で撃ったということがわかる。一体2人の間に何があったのだろう。
第4話で発覚したのは、香坂が加害者の娘だったということ。香坂が悪に強い恨みがあるとしたら、事件を起こした父親の精神を破壊した人物が関係してくるはずだ。その相手を探す、もしくは近づくために香坂が法務省に入ったのではないだろうか? そして、復讐を果たすと決めたその日に、井沢は香坂の計画に気付いて止めに入り、銃が暴発してしまった……と考えられる。
今話では、若かりし香坂とミハンの捜査員・加賀美(柄本明)がすれ違っていたという意味ありげなシーンが描かれた。また、第3話では小田切が辞表を提出する場面も。これらの要素が、どう井沢と香坂の関係に入り込んでくるのかはわからないが、少しずつ、全貌が見えてきたような気がする。
(さわだ)
■「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」
出演:沢村一樹、横山裕、本田翼、森永悠希、高杉真宙、上杉柊平、マギー、粗品、水野美紀、柄本明
脚本:浜田秀哉
音楽:横山克
企画:稲葉直人
プロデュース:永井麗子、関本純一
演出:石川淳一、品田俊介、木村真人、小林義則
主題歌:家入レオ『未完成』