ドラマ24『コタキ兄弟と四苦八苦』。生真面目な兄・一路(いちろう)を古舘寛治、不真面目な弟・二路(じろう)を滝藤賢一が演じる。
第7話のゲストは門脇麦、サブタイトルは「病苦」。

めんどくさい病


「連絡が取れなくなった友達の無事を確かめてくれ。自分は遠方で行かれないから替わりに頼む」
という依頼でレンタル兄弟おやじは神野あかり(門脇麦)の家を訪ねる。孤独死しているのかも、とおそるおそるドアを開けるとそこはゴミの山。ゴミの中であかりはボォっと生きていた。

弟(滝藤賢一)は「ありゃめんどくさい病だな」と呆れるが兄(古舘寛治)は「事態はもっと深刻、セルフネグレクト」だと指摘。趣味の「現代用語の基礎知識」読書で得た知識だ。
セルフネグレクトとは生活環境や健康が悪化しているのに気力を失っているため人にも助けを求めない状態。行き着く先は孤独死という場合もある。

放っておくわけにいかなくなった。
「仕事。看護師、なんで辞めたの?」と弟が尋ねるとあかりはボォッとした口調で答え出す。
「感染してしまって。
感情です。気持ちの感染。怒りとか悲しみとかネガティブな感情ほどうつりやすいんです。情動感染っていうんですけど、相手の感情を自分の中に取り込んでしまう

職場で広がった情動感染。一人の医師から発せられた「苛立ち」が看護師たちにも音叉の響きのように静かに広がっていき(ドラマ効果音の音叉の音色がまた不気味……)やがて職場は混乱状態に。あかりの苛立ちも沸点を越え、気がつくと蓄尿容器をぶちまけていたそうだ。
「自分だけは冷静だと思っていたのに」というのが情動感染の恐ろしいところ。

人に共感するというのは普通のことだけど、共感しすぎて自分が参ってしまうのはまずい。昨今の暗いニュースにも「情動感染」しないようにしなくっちゃ(参考→ウートピ「その怒りや不安は「情動感染」のせいかも? 気疲れしやすい人の共通点」)。

孤独という病


古舘寛治と滝藤賢一「コタキ兄弟と四苦八苦」門脇麦のネガティブがリアルでしんどい、刺さる
イラストと文/まつもとりえこ

いつの間にか眠っていた兄弟。あかりから発せられる悪臭で我に返る。
あかりに風呂場に移動させ、部屋の大掃除を始めた。


部屋が綺麗に片付いた頃、あかりが「お風呂は良いねぇ!」と別人のようなテンションで風呂場から出てくる。
人間こんなに早く復活できるものかね、と思うがきっとこれが元々の姿。

「(依頼人の)中村君と電話で話した。あかりんが電話切って心配させっから仕事終わってすぐに新幹線に飛び乗ったんだと」
そう聞いて「めんどくさい!」と慌てるあかり。うん、友達の元カレとか確かにめんどくさい。
しかしその後やってきた中村は抜群に優しい男だった。


弟「あかりんと中村どうなったかなぁ」
兄「どうだろうな。ま、うまく行かなかったとしても気にかけてくれる人がいるっていうのはありがたいことなんじゃないか。面倒で死ぬことも能天気で死ぬこともない。だが孤独という病は人を死に至らしめる」

気にかけてくれる人がいるということを知ったあかりは本当に幸運だ。
めんどくさくても、やっぱり植物よりは人間が良いもん。

(イラストと文/まつもとりえこ)

ドラマ24『コタキ兄弟と四苦八苦』
テレビ東京 毎週金曜 深夜0:12~
配信:Tver・Paravi・ひかりTV・GYAO

出演:古舘寛治 滝藤賢一 芳根京子 宮藤官九郎 ほか
脚本:野木亜紀子(『逃げるは恥だが役に立つ』『アンナチュラル』『獣になれない私たち』ほか)
監督:山下敦弘(映画『ハード・コア』『リンダリンダリンダ』ほか)
オープニングテーマ:Creepy Nuts『オトナ』(ソニー・ミュージックレーベルズ)
エンディングテーマ:スターダスト☆レビュー『ちょうどいい幸せ』(日本コロムビア)
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:濱谷晃一(テレビ東京) 根岸洋之(マッチポイント)平林勉(AOI Pro.) 伊藤太一(AOI Pro.)
製作:テレビ東京 AOI Pro.
制作著作:「コタキ兄弟と四苦八苦」製作委員会

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