音楽を数字で見ていく本連載、今回は「ライブ」をテーマに取り上げたい。
正直いうと、新型コロナウイルスの影響により世界各地でライブが延期・中止になっているなかでライブをテーマにした記事を書くのもいかがなものかと思ったが、「ライブを積極的に行っているアーティストは実はこんなにたくさんいる!」ということを数字にするのは意味があるかと思ったので、こんな時期だからこそライブにまつわるテーマをお届けできればと思う。
というわけで、今回は「海外に積極的に進出している日本人アーティストは誰なのか?」を調査したい。
自分が好きなアーティストでも、日本にいると海外での人気に気付かないことはよくあるだろう。しかし地道なプロモーションやライブ活動で海外での人気を着実に伸ばしているアーティストは少なくないため、そんな「実は積極的に海外でライブを行っているアーティスト」に今回はスポットを当ててみたい。
調査の都合上、今回はSpotifyが発表している2019年に海外で最も聞かれた日本のアーティストリストと、2019年のYouTube再生数ランキング上位アーティスト計114組に絞り、海外で一定の人気があると考えられるアーティストを対象に調査した。また、データはLiveFans上に登録されている公演をもとに独自で調査しており、実際のライブ数とは異なる点がある。
人気のアーティストが海外でライブをしている割合はどれくらい?
では、日本のアーティストがどれくらい海外でライブを行っているのかを最初に見てみよう。
海外でライブをしたことがない:52.6%
海外でライブを1回したことがある:8.8%
海外でライブを2回したことがある:8.8%
海外でライブを3回以上したことがある:29.8%
今回調査したアーティストに限って言えば、海外でライブをしたことのアーティストは半分以下という結果になっている。
一度も海外でライブをしたことがないアーティストと、1-2回ほど海外でライブを行っているアーティストをあわせると7割を超え、積極的に海外進出しているアーティストは、現状かなり少ないようである。
海外でのライブが多い日本の人気アーティスト
では、そんな逆境の中で果敢に海外でのライブを行っているアーティストは誰だろうか。
1位 MAN WITH A MISSION
2位 ONE OK ROCK
3位 RADWIMPS
4位 Perfume
5位 GENERATIONS from EXILE TRIBE
6位 SEKAI NO OWARI
7位 B’z / GLAY
8位 嵐
9位 きゃりーぱみゅぱみゅ / [Alexandros]
10位 スピッツ / 安室奈美恵
最も海外での累計ライブ数が多かったのはオオカミ姿の奇抜なビジュアルでも知られる5人組バンド・MAN WITH A MISSON。イギリス最大規模のロックフェス「レディング・フェスティバル」などに出演したことでも知られる彼らだが、今までの合計ライブ数は49回とかなりの本数を誇っている。海外アーティストとの交流やコラボ作曲なども多く、日本での人気もさることながら海外で着実に人気を得ているアーティストである。
僅差で2位となったのがONE OK ROCK。ファンならよく知っているように、海外志向が非常に強いロックバンドのひとつで、ライブの本数にもそれが表れている。
3位につけたのはRADWIMPS。ボーカル・野田洋次郎が帰国子女ということもあり、もともと英語での歌詞が多かった彼らだが、映画「君の名は。」とのタイアップによる人気も後押しして、海外進出に繋がったのだろう。
注目したいのが5位のGENERATIONS from EXILE TRIBEだ。EXILEグループといえば、他にEXILE、三代目 J SOUL BROTHERS、THE RAMPAGEなどの人気グループが在籍しているが、海外でライブを行っているのはGENERATIONSのみ。これはメンバーである片寄涼太が、映画「兄に愛されすぎて困ってます」の主演を通じてアジアでの人気に火をつけたためであり、EXILEグループの海外展開に今後も期待できそうである。
海外でのライブの割合が高いアーティストは?
では、ライブの本数ではなく「海外でのライブの割合」ではどうだろうか?
本数の場合は単純にライブが多いアーティストが上位になってしまいがちだが、割合に絞ると「出来るだけ海外でライブをしようとしているアーティスト」が上位になる。
最も海外進出に積極的なアーティストは誰だろうか?
1位 ONE OK ROCK
2位 RADWIMPS
3位 MAN WITH A MISSON
4位 SEKAI NO OWARI
5位 TK from 凛として時雨
6位 GENERATIONs from EXILE TRIBE
7位 Perfume
8位 [Alexandros]
9位 DEAN FUJIOKA
10位 まらしぃ
1位を飾ったのは、ライブ本数ランキングでも2位につけたONE OK ROCK。なんと今までのライブのうち約1割が海外でのライブということで、バンドとして本当に海外展開に力を入れたいという意気込みが伝わってくる数字である。
本数は少ないものの、割合が高かったのが4位のSEKAI NO OWARI。海外ではEnd of the worldとして別で活動している彼らだが、海外向けのPVなどもクオリティが高く、世界観が伝わってくる内容なのでぜひ国内ファンにも視聴して欲しい内容だ。
そのほか、5位にはアニメ「東京喰種」の主題歌を担当したTK from 凛として時雨がランクイン。9位にはアニメ「ユーリ!on ice」で主題歌を務めたDEAN FUJIOKAもランクインしており、アニメ主題歌をきっかけにして海外に進出するアーティストは多いようだ。
残念ながらライブシーンは現在、厳しい状況が続いており、海外でのライブも延期・中止が相次いでいる。音楽ファンとしてはライブ以外での活動も見守りつつ、ライブシーンが再始動した際にはすぐに駆けつけられるようにしておきたいところである。国内・海外のライブ活動が早く平常に戻ることを祈るばかりだ。
■まいしろ
社会の荒波から逃げ回ってる意識低めのエンタメ系マーケターです。音楽の分析記事・エンタメ業界のことをよく書きます。
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