
リスナーの投票により選曲した『We are the Fellows』、そして自身の選曲による『Made in ASKA』という2作のベストアルバムを間にはさんで、約2年半ぶりにASKAが10作目のオリジナルアルバム『Breath of Bless』をリリースする。
すでに配信シングルとして発表されている6曲のほか、昨年リリースしたシングル2曲と新曲7曲を加えたボリュームのある作品だが、おおらかに世相をひと撫でするような、目をそらさず心の隅まで見つめるような、温かい目線で愛情を愛でているような……曲の数々に惹きつけられる。
そのインタビュー模様を前後編にわたってお伝えする。
ASKA史上、最高傑作のアルバムができた

──先日のライブ“ASKA premium ensemble concert -higher ground-”でも「今回のアルバム『Breath of Bless』は最高傑作になった」と言われていましたが、それくらい満足のいくものになったと。
はい、最高傑作です。毎回、前のアルバムを超えたっていう言い方をしていますけど。僕のなかで前作に見劣りしない、聴き劣りしないものを作れたと思ったときに“超えた”っていう言い方しているんですね。とはいっても前作を超えるって、なかなか難しいことだったりして。でも今回は、すごい手応えがあって。これまでは『NEVER END』(1995年2月リリース、3枚目のソロアルバム)がみんなに一番の傑作と言われていたんですけど、僕は今回それを超えたかなと思いますね。
──曲を書いているときから、「もしかして今回は……」という予感のようなものはありました?
どうですかね。ただ今回は、一昨年の3月から8月まで毎月新曲を配信で出したのがよかったですね。どれもシングルみたいな感じで作っていたんですけど、それが軸になってアルバムができていったんで。
──毎月のリリースは、ストック曲のなかから選ぶのではなく。
いや、もうその都度、どんどん作っていきましたね。
──それは作った曲をすぐに聴いてもらいたい、という気持ちから?
それもありますけど、それだけじゃなく自分に課してみたんですよね、毎月リリースするっていうことをどこまでやれるのかって。
でも半年やったところで、「これ、1年やれるわ」と思って。ただ1年やったら12曲になるでしょ、そうなるとアルバムがベストアルバムになっちゃう(笑)。毎月曲を出すのは、いくらでもできることがわかったので、半年で「これにて毎月配信を終了させていただきます」と。残りはアルバムを楽しみにしてくださいっていうことにしたんです。

──リリースする側からすると、配信はタイムラグなしに届けられるのが魅力ですか。
そうですね、今や配信したら10分後にはレスポンスが来るから。嬉しいですよね。「ここが良かった」みたいなレスポンスが来ると、モチベーションも上がるし。
──毎月リリースということのプレッシャーなどはなかったですか。
プレッシャーですか? 何もなかったですね。僕は楽曲を作りながらアレンジもしていくので、そんな大変でもないですね。スタジオにドラム、ベース、生ピアノといったミュージシャンを呼んでレコーディングするケースもありますけど、けっこう自宅でできちゃう部分が多いので。
デビュー当時はコンピュータもなかったですし、アレンジャー任せでした。「どんなアレンジになるんだろう? 自分の曲がどう変わるんだろう?」ってワクワクして待っていました。自分の予想通りのときと、予想を超えたときと、想いが届かなかったときがあってね。届かなかったとしても昔はやり直しがきかないから。アレンジを頼むときは、よほど綿密に打ち合わせをして進めていかないと、取り返しのつかないことになったんです。でも今はアレンジも同時進行で進めていきますし、自分の部屋でできるので、時間も気にせず、どれだけでも時間をかけられるでしょう? サンプル音源も、生演奏と区別がつかないほど完成されてる。そういう意味では本当にいい時代になりましたよね。

──ところで今回は内容もさることながら、『Breath of Bless』というタイトルもすごく素敵だと思ったのですが。
これはね、あるとき浮かんだんです。だからあまり理由はないです(笑)。ただ、もともと2020年東京オリンピックに向けたテーマ曲を作ったのがはじまりで。当初はタイトルもそのままだったんですよ。だけど、ふと「この曲はオリンピックだけで終わらせたくないな」「オリンピックが終わったあと、この曲も一緒に影が薄くなるのは嫌だな」と思って。オリンピックということじゃなく、アスリートに向けたタイトルにしようと思ってから『Breath of Bless』っていう言葉が出てきて。でもこれ、直訳しても“福音の吐息”とか、あまり気の利いた訳にならないので。あえて訳さないようにしているんです。
60代に入ってから作った2曲のラブソング「書くことに抵抗がなくなってきた」

──今回のアルバムを作るうえで、テーマやコンセプトはありましたか。
なんにも、何もない(笑)。いつも収録曲は全部いいって言ってもらわないと気がすまない、という気持ちで作ってますが、今回もそれだけですね。やっぱり毎回思うんですよ、少しでも躊躇があったり、自信のないものは絶対に出しちゃいけないって。自分のなかにちょっと高めに設定した一定のラインがあって、そこを超えた楽曲じゃないとダメだって。
──それは今回に限らず常に思っていることですよね。
思っています。で、今回もそうだった、ということですね。
──そういう作品作りのなかで、特に印象深い曲、思い入れの強い曲、このタイミングじゃないと出てこなかった曲、ということだと、どうでしょうか。
どうでしょうね。例えば『We Love Music』はスタジアムミュージックみたいなことを、ものすごく意識しましたね。『ヘイ・ジュード』じゃないですけど、とにかく観客と大合唱になるような曲を書いてみたいと思ったので。うん、この曲は狙いましたね。
──実際、先日のライブではすごく盛り上がりましたね。
まだ発表してない曲なのにね。
──その一方、『どうしたの?』や『イイ天気』といった淡々とした日常を描いた曲が、とても染みてきました。
この2曲、ラブソングなんですよね。
──それはなぜですか。
リアルなラブソングは歌えなくなりますよ、年齢的にね。で、50代になると昔出したラブソングを歌うのはいいけど、新曲のラブソングはちょっとなんか……キモくなりますよね(笑)。ところが60代になると、またなんか純粋な部分が出てきて。かえって歌えるようになってきたというか。
──やはりラブソングは年齢に左右されますか。
歌っていて綺麗ですよね、若い頃のラブソングって。でも30代、40代で作るラブソングって嘘くさくなりそうで、それが嫌であまり作らなかったんですよね。またラブソング以外のものを書きたい時期でもあったんでしょうね。
──今回のラブソング2曲は他愛もない会話が出てきたりするところが、すごくいいですね。柔らかい日常にあるラブソングというか。
年齢に応じて作るラブソングも変わってくるんですね。まぁ年齢や時代によって変わるのはラブソングだけじゃないけど。

──秋にはツアーも控えています。
ツアーはね、僕はもう公言しちゃっているんですけど。昨年の夏に“40年のありったけ”というツアーやってしまった以上、もう“41年のありったけ““42年のありったけ”ですよ(笑)。毎回毎回、そのときに選曲したベストな形でやればいいと思っているので、新しいアルバムを引っさげてのツアーはもうやらないですね。
──2020年のASKAみたいな。
そうです。その前にシングルを出そうと思っているので、もう取りかかっているところです。
──早いペースですね。
今、楽曲を書くのが面白いので。楽曲を作るのは苦労といえば苦労なんですけど、できあがってしまうと喜びだから。それは変わらないですよね、昔から。
──これだけ長くやっていても変わらないですか。
変わらないですね。……うん、聴いた人に喜んでもらうっていうのが、最高なんですよね。
リリース情報

Breath of Bless
発売日:2020年3月20日(金)
価格:4,000円(税抜)
レーベル:DADA label
3月6日(金)よりハイレゾ音源、通常音源先行配信中
ハイレゾ音源&通常音源配信サイト:
・e-onkyo「Weare」
通常音源配信サイト:
・iTunes(iTunesは単曲での展開のみ)
・Google Play Music
・レコチョク
・mora
・music.jp
・オリコンミュージックストア
・着信★うた♪
・MySoundフル
・GIGA MUSIC(Android)
・ototoy
その他、順次各配信サイトで通常音源配信開始予定
収録曲目:
1.憲兵も王様も居ない城
2.修羅を行く
3.どうしたの?
4.未来の人よ
5.忘れ物はあったかい
6.百花繚乱
7.イイ天気
8.虹の花
9.じゃんがじゃんがりん
10.歌になりたい
11.消えても忘れられても
12.青い海になる
13.星は何でも知っている
14.We Love Music
15.Breath of Bless〜すべてのアスリートたちへ
オフィシャルサイト
ASKA Officia Web Site 「Fellows」