古川雄大 「エール」で強烈インパクト 絢爛豪華な物語世界に深く誘ってくれるミュージカル俳優
イラスト/おうか

「エール」での“朝ドラ”初出演でいきなり強烈なインパクトを残すことに成功


“朝ドラ”こと連続テレビ小説「エール」(NHK)の「ミュージック ティーチャー」ですっかり注目を浴びた古川雄大。“朝ドラ”初出演でいきなり強烈なインパクトを残すことに成功した。

ミュージック ティーチャーは本名・御手洗清太郎。
「エール」の主人公・裕一(窪田正孝)の未来の妻・音(二階堂ふみ)の歌の先生。海外帰りのトランスジェンダー設定で、音と裕一(窪田正孝)を熱烈に応援する。言葉遣いはオネエキャラのようだけれど、ピアノを弾く姿をはじめとして立ち居振る舞いはエレガント、話し方は明晰で、物語がビビッドに伝わってくる。明るくさわやかでユーモアがあって、色モノのように見えるが、じつは朝ドラにふさわしいキャラクターにも思えた。

出てくるだけで目が覚める華やかな俳優・古川雄大は、1〜3月期の天海祐希主演の医療ドラマ「トップナイフ -天才脳外科医の条件-」(日本テレビ系)にも出ていた。脚本は「エール」原作者の林宏司。「トップナイフ」ではサーフィンと女性が好きなBARのマスターで、「ミュージックティーチャー」の優雅さとはまた違う、ギラギラした「悩殺王子」。


このふたり、まったくタイプが違うが、2点、瞳で殺すというべき瞳から“色気”がダダ漏れなところと「悩殺王子」「ミュージック ティーチャー」とキャッチフレーズによって記憶に鮮やかに残るアプローチは同じだと感じる。「瞳の色気」そして「キャッチフレーズ」、この2点が人気上昇の要因であろう。「下町ロケット」(18年/TBS系)にも嫌味な農協職員役で出演していた。瞳の色気を負のベクトルにもっていくことで意地悪そうな役にも対応可能である。

首がしゅっと長く、そこに乗った顔は小さく、手足が長くエレガント


テレビドラマの世界で今後、活躍していくであろうと期待のかかる古川雄大。だがすでに、舞台――とくにミュージカルの世界では大人気なのであった。
惜しくも新型コロナウイルス感染予防のため中止になってしまったが、4月に出演予定だった帝国劇場のミュージカル「エリザベート」ではとても重要な役である死の概念・黄泉の帝王・トートを演じる予定だった。

本来なら「エール」で裕一の親友・久志役の山崎育三郎とダブルキャスト、大阪、名古屋、福岡公演ではミュージカル界のプリンス・井上芳雄とダブルキャストという栄えあるキャスティングでもあった。井上芳雄と山崎育三郎と同じ役というのはかなり期待がかかっている証であろう。

気を取り直して古川雄大のミュージカル俳優としての歴史を振り返ろう。ミュージカルデビューは2007年、2.5次元ミュージカル「テニスの王子様」。漫画の世界に限りなく忠実にキャラのビジュアルを再現して繰り広げるミュージカルの魁的な作品で、古川は4代目不二周助を演じた。

ユニフォームから伸びる首がしゅっと長く、そこに乗った顔は小さく、手足が長くエレガントで貴公子感に溢れていた古川。このときから、やがてミュージカルの殿堂・東宝ミュージカルに出演して、ホンモノの貴族や王子さまを演じる運命だったと言っていいだろう。実際、その後、「ファントム」(10年)で伯爵役を演じたのち、東宝ミュージカル「エリザベート」(12、15、16年)の皇太子ルドルフ役で初めて帝国劇場の舞台に立った。この役は出番こそ短いが、新鋭ミュージカル俳優の登竜門的役であり、古川への期待が感じられた。

古川の代表作のひとつにミュージカル「ロミオ&ジュリエット」(13、17、19年)の主人公ロミオもある。シェイクスピアの代表作であり、演劇界では、ロミオは俳優なら若いうちに演じておくべき、勢いのある主人公である。
そのミュージカル版で堂々主演。ちなみに、この時、ジュリエットは朝ドラ「わろてんか」のヒロインを演じた葵わかな(ダブルキャスト)で、古川とふたり、とても初々しかった。



様式性の高い役といえば、古川雄大に時代はなりかかっている


2.5次元ミュージカルをやっていただけに、漫画から抜け出したような雰囲気のある古川。線が細く顔立ちもゴツくないので、舞台メイクすると、男装の麗人みたいな雰囲気も漂って、現実から高く飛躍して絢爛豪華な物語世界に深く誘ってくれる。

そんなこんなで「黒執事」などの2.5次元ミュージカルもやりつつ、着々と研鑽を積み、2018年、東宝ミュージカルの人気作「モーツァルト!」の主役に抜擢され、天才作曲家の苦悩を演じた。ロミオもヴォルフガング・モーツァルトも、古川が演じると見た目は少女漫画的な様式美に富みながら、表現は現代の若者らしさがあり、今と遠い時代に生きた人物にも共感しやすい。見た目は現実を忘れさせてくれるのに演技が等身大というギャップ。そういうところが新しいミュージカル俳優なのだろうと感じる。


「モーツァルト!」の代表曲「僕こそ音楽」に「僕こそミュージック♪」と高々と歌い上げるところがあって、ミュージッーークと音を上げるところが肝で、古川の懸命に絞り出す声が若さそのもの。「エール」の「ミュージック ティーチャー」のネタもとはこれではないかと思うのだがいかがであろうか。そして満を持しての「エリザベート」のトートだったわけだが、中止は本当に残念。いつか再挑戦してほしい。

これまた新型コロナ感染予防のため公開延期になった映画「コンフィデンスマンJPプリンス編」にも大富豪一家の長男(冷酷無比)役で出演している。
様式性の高い役といえば、古川雄大に時代はなりかかっている。
(文/木俣冬、イラスト/おうか)


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★「古川雄大」出演作品★
トップナイフ -天才脳外科医の条件-(2020年)
嫌な女(2016年)
仮面ライダー×仮面ライダー×仮面ライダー THE MOVIE 超・電王トリロジー EPISODE YELLOW



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