『先生を消す方程式。』恋は無様――自らも「無様」だとする義経（田中圭）を突き動かす原動力は？

「義経、討伐編」いよいよ完結へ 『先生を消す方程式。』3話

待って。これまで「義経、討伐編」だったのか……と3話の予告を見て知った。

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『先生を消す方程式。』（テレビ朝日系 / 毎週土曜よる11時〜）3話は、4話で完結するらしい「義経、討伐編」を前にしたクライマックス。義経（義澤経男／田中圭）が4Cたちに殺害されそうになり、ギリギリ生還。彼らに決死の授業を行う。

義経「犯人はあなたですよね」
朝日「え？」
義経「僕の彼女を階段から突き落とした犯人は」

2話のラストから3話の冒頭のこれは義経のドッキリということで一旦、収めたものの、義経と頼田朝日（山田裕貴）には因縁がある。気を失った義経を抱きかかえて歩く朝日の姿は画になった。最終的に義経 対 頼朝（朝日）の一騎打ちになるかと期待が膨らむ。

義経、朝日、ふたりの教師は、各々、生徒たちとコミュニケーションをとりながら、牽制し合い、着々と勝負の準備をしている。

朝日は、保健室に運ばれた義経をクッションで窒息死させようとして未遂に終わり、同じく失敗した薙（森田想）に引き続き、先生を殺す方程式発見を続けさせようとする。朝日に言われて、義経の弱みを握ろうと尾行する薙。

さらに朝日は、弓（久保田紗友）の刀矢（高橋文哉）への忠誠心を利用して、義経殺害計画を進行させる。

こんな邪悪な話題をするとき、朝日はまるで、試験勉強をがんばっている生徒をカジュアルに応援するようにドーナツを弓に与える。ドーナツの穴からのぞき込んだり、弓の背後にまわって語りかけたり、その仕草がひとつひとつ、悪魔的。「たそがれタイム中に失礼しまーす」というセリフもいい。

来たるべく復讐のために身体を鍛える義経。これは本気だ

甘いものは人の心をほぐすもの。義経は、長らく学校に出てこなくて引きこもっている生徒・伊吹命（秋谷郁甫）を外に呼び出し、ソフトクリームを食べながら話す。古本屋をまわりまくって彼が欲しそうな本を探してきて機嫌をとる。アイス、さらに欲しい本。尽くしまくり。こうして、命から4Cの情報を聞き出そうとする。

義経も恋人・静（松本まりか）を生き返らせたくて興味を持っていた“死体蘇生術”への興味によって、命と義経の心がかすかにつながるところがなんとも皮肉めいている。

義経は基本、おだやかに微笑み続けているが、内面は恋人への想いが募っている。だから、なんにでも、恋人との思い出につなげてしまう。2話で朝日にお弁当を差し入れされれば静を思い出し、3話で命とソフトクリームを食べれば、また静の言葉を思い出す。


愛する静を死んだも同然の身体にしてしまった犯人を許せない、その復讐心が彼を突き動かす原動力。そんな自分を「無様」と自覚する義経。今回の授業は、同じように恋愛によって間違った行動を起こしてしまっている弓への説得だった。

弓は、好きだった家庭教師が自慢の母と関係をもっていることに傷つき、それを慰めてくれた刀矢に忠誠を誓い悪事に手を染めていた。弓は、義経殺害計画を考えて、薙と力（高橋侃）と3人で実行する。

首を吊られてもがくとき、来たるべき復讐のために（？）身体を鍛えている義経の本気のカットが挿入される。それを見て、松田優作の『蘇る金狼』を思い出す人はどれだけいるだろうか。田中圭にはぜひ本格ハードボイルドをやってほしい。

高橋文哉の達者な演技にも注目

限界まで首が締まり、心臓も止まった義経だったが、2話に引き続き、生還。本当に不死身である。そして、いつもの授業。

恋（人生―自分）＝無様

弓を無様に振り回し、薙と力を権力で押さえつけている人がいる。それが許せないと言う義経に、刀矢は、弓と薙と刀が先生を殺そうとしているところを見たと言いだす。ひどい。だが、彼は事前に父親（矢島健一）に事件を揉み消してほしいと根回ししている。どうやら父との間にも秘密があるようだ。

義経は訴えに耳を貸さず、「賢い人と賢いと思っている人の違い」の方程式を黒板に書き始める。刀矢は、賢い（と思っている）から、義経が何を言いたいのか即座に察知し、「疲れたんでもういいんじゃないですか」と止めるが、授業は止まらない。そこで激しくブチ切れる。

高橋文哉は、まだ少年の面影を残すかわいさが未成熟故の身勝手さや残酷さとして表出する身ぶりが達者。山田裕貴の、いま絶好調という感じで、直球、変化球、球種を取り混ぜてガンガン放ってくるような悪意の演技とはまた違う魅力で、このふたりのヒール対決もドラマの見どころ。

さらに、このふたりの悪人に攻められる田中圭は、優しい顔して、がんとまっすぐ揺らがない、愛と正義を掲げて、暑苦しくなく立ち続ける底力。茶番みたいな展開なのに、みんな、なんて立派なんだろうか。

静が、義経と前世でも恋人だったと占われたと言っている場面で、義経と静御前だったんだねと誰もが思うわけだが、NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で田中圭と松本まりかが義経と静御前役だったら最高の茶番（いい意味）になるのに。
（木俣冬）

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番組情報

テレビ朝日系『先生を消す方程式。』
毎週土曜よる11:00〜

公式サイト：https://www.tv-asahi.co.jp/houteishiki/