
8時間の音楽フェス『ななしふぇす どぅーいっと!』開催
「有閑喫茶あにまーれ」「ハニーストラップ(ハニスト)」「ブイアパ」「シュガーリリック(シュガリリ)」を運営する「774inc.(ななしいんく)」がVチューバー事務所単独では史上最大規模となる8時間のオンライン音楽フェス『ななしふぇす どぅーいっと!』を12月19日(土)に開催。13時から21時までの8時間、全4部構成で、20人の出演者全員が主役の音楽ライブをオンライン配信する。【インタビュー後編】因幡はねるが語る『ななしふぇす どぅーいっと!』への思い「一緒にステージに立っている気持ちで」
エキレビ!では、単独のVTuber事務所による音楽イベントとしては最大規模となるこのフェスに注目し、774inc.の歴史を知る二人のVTuberへのロングインタビューを実施。
2018年6月、5人組VTuberグループ「有閑喫茶あにまーれ」の一員として、YouTubeでの配信活動を始めると、活動の初期から「因幡組」と呼ばれる熱心なファン(公式ファンネームは、はねるっこ)を獲得。
デビューからの一年間は一日も休むことなく配信を続けて、「因幡組」の勢力をさらに拡大していくと同時に、学力テスト企画「VakaTuberは誰だ?」や、トークバラエティ企画「Vのから騒ぎ」など、自身が主催する多人数コラボ配信で、卓越した企画力やMCとしてのスキルの高さを発揮。VTuber界全体の中での知名度や人気も増していった。
しかし、その道のりは、順風満帆だったわけではない。何度も悔しい思いもした末に、仲間とともに実現する晴れ舞台『ななしふぇす どぅーいっと!』を前に、因幡はねるは何を思うのか? ほぼ毎日という配信ペースを今もキープしながら、本番へのレッスンにも取り組む多忙な日々の中、じっくりと語ってもらった。
人気のあるVTuberさんは別世界の存在に感じていた
──774inc.初の全体イベントが開催されることになった時の率直な感想を教えてください。因幡 大きなイベントをやりたい気持ちはずっとあったので、決まった時は「やっとだ!」って思いました。でも、そう思うようになるまでの心の葛藤というか、気持ちの移り変わりはいろいろとありました。
私たち「あにまーれ」がデビューした時期って、私たちはちょっとマイノリティだったというか。キズナアイちゃんとか、ときのそらちゃんとか人気のあるVTuberさんがキラキラした存在だったのに対して、私たちは「なんか、普通の人がデビューしたぞ」みたいな感じで(笑)。自分としてもそういう人気のあるVTuberさんは別世界の存在みたいに感じていたから、「私もあんな風になりたい」みたいな気持ちではなく、「すごいなーパチパチ」みたいな気持ちで見ていたんです。
元々、普通のアイドルさん──AKBさんとか乃木坂さんとかが大好きだったので、そういう世界への憧れみたいなものはあったのですが、自分自身がそういう華やかなことをできるとは、あまり想像できなかったです。

──しかも、「あにまーれ」がデビューした時期は、最初のVTuberブームが少し落ち着き、VTuberという文化の目新しさも少し薄れてきた頃でしたね。
因幡 ものすごくメジャーにはなってないけど、珍しさは少し薄れてきたという狭間の時期でしたよね。そんな中でも、私たちと同じくらいの時期にデビューしたVTuberさんの中からも人気者が出てきて。そういう人たちは、イベントとかにも呼ばれるようになっていきました。
その年の年末、いろいろなVTuberのイベントがあったのですが、私たち「あにまーれ」は一つもお声がかからなかったんですよ。でも、私たちより1カ月後にデビューした「ハニスト」は呼ばれてて。
──音楽イベント『count0』に出演しましたね。
因幡 私はまだ3Dにすらなれていなかったのに、後からデビューした「ハニスト」が3Dでイベントに出てて、むちゃくちゃショックでした。
でも、そのくらいの時期から、ほぼ同期の子や、同じ運営の「ハニスト」の子がイベントなどにも出ているのだから、自分たちも頑張れば、そういう方向に進めるんじゃないかみたいな気持ちが出てきたんです。「キズナアイちゃんや、ときのそらちゃんたちはすごいなー」という感覚だったのが、「私たちも、そっちにいけるんじゃないか」という希望が少しだけ出てきた時期でもありました。
自分のファンをもっと信用しようと思った
──大人気企画「VakaTuberは誰だ?」の第1回を開催したのが2018年の10月。大好評に応えて第2回を開催したのが2019年の1月なので、ちょうど因幡さんの意識に変化があった時期に始まった企画だったのですね。因幡 最初の『VakaTuber』は「あにまーれ」と「ハニスト」の企画も出演者も全部自分たちだけでやったんですけれど、初めて何万人もの人が観に来てくれて。

──当時、因幡さんの活動を観ながら、大型コラボを成功させる企画力やMCスキルは高いのに、人見知りで人に声をかけるのが苦手ということで、持っているスキルと性格の相性がよくなさそうだなと思っていました。
因幡 誘っても断られるんじゃないかという気持ちもあって、声をかけづらいというのはありました。でも正直、コラボとかをして華やかにやらなくっても、活動自体は楽しかったんですよ。リスナーさんは自分のことを観てくれるし、Twitterや配信で毎日やり取りもできていたから、べつに困ることはないわけで。当時、(運営の)黒猫ななしにも「私、ニッチだから」って、ずっと言ってました(笑)。ニッチでいいとも思っていたんです。
でも、華やかなところに出て行けるかもという希望を感じた時、リスクとか大変なことは増えるかもしれないけれど、頑張って外に出ていかないともっと多くの人に知ってもらえないし、自分の特技も活かせない。今は今で楽しいけど、それじゃダメだと思うようになって。いろいろなVTuberさんに、コラボにお誘いするDMを送ったりするようになりました。
ニッチではない場に出ていくことで、「あまり、こっちに向いてくれなくなった」と感じてしまうリスナーさんもいるかもしれないけれど、応援してくれる人も絶対にいるからと思って。
自分のファンをもっと信用しようと思ったのも、その時期でしたね。それまでは「そういうことをしたら、リスナーさんが離れちゃうかも」ということばかり気にしていたのですが、「きっと、それでも応援してくれるはず」と信じるようにしたんです。そういったリスナーさんへの思いも、その時期に大きく変わった事の一つですね。
──もっと華やかな場所で活躍したいと思うようになった理由の中には、ファンのみんなにそういう舞台でも活躍する姿を見せたいという気持ちも含まれていたのですか?
因幡 それは逆な感じです。華やかな所に行きたいとか、(大好きな)ポムポムプリンくんとコラボカフェをやりたいとか、ピューロランドでイベントをやりたいとかは、完全に私個人の気持ちです。そういった個人的な願望が私の中にまずあって。リスナーさんがそこに私を立たせるために頑張って押し上げてくれている。そういうイメージですね。

『Vのから騒ぎ』で自分の能力が活きるスタイルも見えてきた
──2018年の年末や第1回vakatuber以外にも、2年半の活動の中で大きなターニングポイントになった配信や出来事などはありますか?因幡 いっぱいありますが……。一つ挙げるなら、『Vのから騒ぎ』(第1回は2019年1月27日に配信)を始めてからは、こういう風に企画をテンプレート化すると、いろいろと応用効くことがわかって。それまで企画をやるときには「企画を頑張んなきゃ!」って必死に準備する感じだったのが、考える幅が少し変わりましたね。
──しっかりしたフォーマットがあれば、一定の面白さは計算できることがわかった?
因幡 ある程度できるなということがわかってきたり、自分の能力が活きるスタイルも見えてきたりしました。
──『VakaTuber』や『Vのから騒ぎ』などの大型コラボ系企画を行う時、特に大事にしていることはありますか? どちらの企画も、問題作りや質問作りなどの前準備がまずは大事だとは思うのですが。
因幡 どちらの企画も台本はまったくないんですよね(笑)。ただ、問題作りや質問作りの段階で面白くなるような工夫をしてますね。
──では、やはり、誰をゲストに呼ぶのかも共通して大事なポイントに?
因幡 何人か来ていただく人が決まった後、最後の一人を決める時は、誰にお願いするのかをけっこう気にするかもしれません。「人選がおとなしめの人が多かった時に、最後の1人は話を広げてくれる人を呼ぼうとか、よく笑ってくれる人を呼ぼう」とかですね。
あと、そういった企画の配信前、ゲストのみんなには「よくわからなければ、とりあえず笑っててください」とお願いしています。可愛い女の子が可愛い声で笑っていたら、リスナーさんは嬉しいから。
でも皆さん、お話も上手いし面白い方ばかりなので、私が何もしなくても全然問題なくて、いつも助かっています。MCなんて楽なもんですよ(笑)。

私たちのダンスを観たら皆さんも驚くと思います
──最近は個人配信での歌枠も増えています。それも活動の中の大きな変化だと感じているのですが、何かきっかけがあったのでしょうか?因幡 今年に入ってから、歌をもっと頑張ろうと思うようになりました。
──一度出たことで、意欲がより強くなったのですね。
因幡 はい。それまでは、そういうイベントに呼ばれる人たちのことを羨ましいなって思っているだけだったんです。でも、『TUBEOUT!』の後、どうすれば出られるようになるんだろうと考えて。ボイトレに行ったり、歌枠をやって少しずつでも上手くなっていく様子を観てもらったりとか、自分のできることからやっていきました。そうやって上手くなっていけば、声をかけてもらえる機会も増えるかなって。
──『ななしふぇす どぅーいっと!』の本番も近付いている中、Twitterや普段の配信でも、歌やダンスの練習を重ねている様子がよく報告されています。本番への手応えは感じていますか?
因幡 今日、集まれるメンバー5人で自主練をしたのですが、すごくかわいいダンスを踊れるようになったんですよ。「私たちでも、こんなダンスができるんだ!」って、自分たちでも驚きました(笑)。
──かわいいダンスを踊る「あにまーれ」の皆さんですか……。
因幡 本当にすごく上達しているので、私たちのダンスを観たら皆さんも驚くと思いますよ。1曲、振り付けが完成した時、気づいたら自然とみんなで拍手していたくらい。今日、一緒だったメンバーは全員、ダンスをやったことがなかったんですけれど、私たちでも頑張れば、こんなことができるんだなと思いました。
774inc.メンバーの全員が全員、このイベントを絶対に成功させたい、観てくれた人たちを絶対に後悔させたくないという気持ちで頑張っているので、ぜひチケットを買って、観に来てください!
【インタビュー後編】因幡はねるが語る『ななしふぇす どぅーいっと!』への思い「一緒にステージに立っている気持ちで」
イベント概要
【イベント名】『ななしふぇす どぅーいっと』
【日時】
12月19日(土)13:00〜21:00(予定)
【公式サイト】
https://774fes-doit.com/
【チケット販売サイト】
https://virtual.spwn.jp/events/201219-774fes-doit
【チケット】
後日お届けグッズ付き「通し」配信チケット(限定特典付き)25,000円
「通し」配信チケット(限定特典付き)15,000円
「第1部・あにまーれと どぅーいっと!」配信チケット 4,000円
「第2部・ブイアパと どぅーいっと!」配信チケット 4,000円
「第3部・シュガリリと どぅーいっと!」配信チケット 4,000円
「第4部・ハニストと どぅーいっと!」配信チケット 4,000円
※チケット販売期間 〜12月19日(土)21:00
ライブ配信時より2020年12月26日(土)23:59まで視聴可能
丸本大輔
フリーライター&編集者。瀬戸内海の因島出身、現在は東京在住。専門ジャンルは、アニメ、漫画などで、インタビューを中心に活動。「たまゆら」「終末のイゼッタ」「銀河英雄伝説DNT」ではオフィシャルライターを担当した。にじさんじ、ホロライブを中心にVTuber(バーチャルYouTuber)の取材実績も多数。
@maru_working