『24 JAPAN』観ればおもしろいのにイマイチ盛り上がっていない理由を考えた
イラスト/AYAMI

※本文にはネタバレがあります

後半の盛り上がりに期待『24 JAPAN』12話

『24 JAPAN』(テレビ朝日系 毎週金よる11時15分〜)第12回は午前11時〜正午。

【前話レビュー】家族のため常軌を逸していく現馬、毅然と娘を守って生きようとする六花 父も母も強し

ようやく半分まで来たところで、ついに獅童現馬(唐沢寿明)がただ走ったり銃を構えたり脅したりしているだけでなく、2丁拳銃で応戦、車も爆発させる大きな仕事をした。だんだん本家のジャック・バウワーのような、ならず者(?)的なイメージに近づいてきた。
それだけ状況がのっぴきならなくなっているということ。朝倉麗(仲間由紀恵)の周辺も目に見えて殺伐としてきた。

現馬は、にせ・函崎こと音守清介(神尾佑)六花(木村多江)美有(桜田ひより)が拉致されたところへ案内させ、なかなか逆探知できなかった場所にたどりつくことに成功する。いったいどれだけわかりにくい場所なのかどうもピンと来ないのだが……、CTUも場所をようやく探知して救助ヘリを送る。

途中、現馬は、いろいろ心配事が多すぎて、神経が高ぶっているのか、音守をボコボコにするなどひどく暴力的になる。「いまさらいい旦那みたいな顔するな」と音守の皮肉(でも正論)にカチンときたうえ、「寂しがってたぞ」という言い方もなんかやらしい意味に聞こえたのかも。知らんけど。

どんなに国家機密の重要案件を預かる優秀な人物であったとしてもある種のサラリーマンや公務員みたいなもので、懸命に任務遂行をすることによって、常にストレスがたまっているのだろう。それがときに爆発しちゃうのではないだろうか。

六花たちがふたりで逃げようとしていたところへ、タイミング良く現馬が現れ、感動の家族再会。しばし涙で抱き合う3人。そこに研矢(上杉柊平)も参加して、4人で脱走。


この日に賭けてきたらしきアンドレ・林(村上淳)に殺されそうで必死な神林(高橋和也)の追跡に、現馬と研矢が応戦。なんとか六花と美有だけでも先に救助のヘリのもとへ行かせようと奮闘。研矢もついに男を見せる。がんばった瞬間、撃たれて死んじゃうかもとひやひやしたが、12話の段階では大丈夫だった。

命を賭けて頑張っている現馬だが、彼の代わりにCTUの新・班長となった小畑緑子(霧島れいか)からは、テロリストと関わりがあるのではないかと疑いをもたれている。

亡くなった菫(朝倉あき)以外にもまだテロリストと内通しているかもしれないわけで、誰がスパイかわからないから牽制しあっている様が、ドラマとしても面白いところではある。

小畑は、食えない人物という印象ながら、救助ヘリも一応出すし、夜中の12時から朝までずっと働いている部下たちに「長時間の勤務お疲れ様です」とねぎらうだけまし。

CTUにいるスタッフたちは夜勤スタッフではないようで、昼になっても交代する様子がない。朝になって新たな顔も現れているが、水石伊月(栗山千明)南条巧(池内博之)、マイロ(時任勇気)たちは長時間、仮眠をとることもなく、働き続けている。伊月なんて一回殺されて、山から戻って来ているのだから、相当タフである。

『24 JAPAN』観ればおもしろいのにイマイチ盛り上がっていない理由を考えた
次回13話は2021年1月8日放送。画像は番組サイトより

アンドレと朝倉、獅堂現馬を結ぶ因縁は?

『24』は本家もJAPANも、深夜の間は密かな時間なので何があっても不思議はないが、日中になると、昼間のリアリティーがいまいちなくなっていくところが気になる。CTUの勤務体制もしかり。なんといっても朝倉麗の行動がどうしても理解に苦しむ。
選挙の当日、こんなに別件に動くことができるものなのか。しかも一回狙撃されそうになっているというのに……。

麗は、昔からの付き合いの施設に慰問に行って、子供たちと交流したあと、息子に影響を与えている心理カウンセラーの葵塔子(西丸優子)に会いに向かう。最初は、葵に電話して「山城まどかには明かしたのに」「わたしを脅す気ですか」などと口喧嘩になり、矢も楯もたまらず、後援会の人に会う前に、葵の事務所へ――。

ところが、そのビルがガス爆発し、葵らしき遺体が運び出されたという報告が……。これまで毎回のように誰か死んでいた『24 JAPAN』だが、朝倉の周りでも死が。「証拠を消したってこと?」「こんなタイミングで」「これって殺人でしょ」と動揺する
朝倉に、選挙参謀の長田(綾田俊樹)が「言葉が過ぎる」とたしなめる。

いつも一緒に行動している夫・遥平(筒井道隆)が珍しく別行動した途端の出来事というのも怪しい。朝倉の秘書・秋山(内村遥)もなんとなく怪しく見える。そもそも、とってもやばそうな闇の情報屋・上州(でんでん)に仕事を頼んでいたことが間違いな気もするけれど、政治の世界は清らかではないってことか。

12話まで来て、年明けから折り返しに入る。本家を観ていない体(てい)で書くと、アンドレ・林はなぜ朝倉麗を狙っているのかよくわからないが、アンドレは、麗の家族のスキャンダルをさっさと世間に暴き立てれば、暗殺までしなくても、政局は大きく動くのではないかと思うのだが……。


でもきっとここから、いろんなことがカードを続けざまにめくるように明らかになっていくのだろう。アンドレと朝倉、そして、獅堂現馬を結ぶ因縁があるのか。

なぜ『24 JAPAN』は盛り上がっていないのか

それにしても、20年前、日本で本家は大ブームだったが、12話時点ではリメイク版の関心は高いとはいえない。SNSを使った宣伝向きないろんなことが次々起こり、ツッコミどころも満載なドラマにもかかわらず、まったくそういう宣伝をする様子もない。

当時をなつかしむ大人層を狙ったとしたら、当時はレンタルビデオの時代で、我先にレンタルして観ていたわけだが、いまや気軽に配信でも観られるのだから、もう一度観るなら本家でいいという気分になるだろう。

プラスして、いまの三十代にも波及させたいとしたら、人口も違うし、当時の三十代はバブル世代、いまは堅実な人たちが多く、求めるものが違う。いまの若い世代も、配信でクオリティーの高い本家を観ることができるから、そこにできる限り完コピしてみました、という『JAPAN』を観る必要性があまりないのではないか。

唐沢寿明、木村多江、仲間由紀恵たちは実力派で見応えがあるが、三十代の俳優をメインにキャスティングして、『2.5次元24』みたいなノリでやったほうが新しい層を取り込めたのではないだろうか。

とはいえ、ストーリー自体はよく練られているので、観ればおもしろいのである。後半戦、盛り返すことを祈っている。

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Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami

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番組情報

テレビ朝日系
『24 JAPAN』
毎週金曜よる11:15〜

番組サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/24japan/
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