新作&映画化『バイプレイヤーズ 』松居大悟監督語る「6人集まると奔放、個々で向き合うと真摯」<前編>
左から、田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一

『バイプレイヤーズ 』松居大悟監督インタビュー<前編>

遠藤憲一、大杉漣、田口トモロヲ、寺島進、松重豊、光石研という日本を代表する名脇役が集結し、業界内視聴率30%とも言われ反響を呼んだドラマ『バイプレイヤーズ』。前作から2年の時を経て、今年1月クールでシリーズ3作目となる『バイプレイヤーズ〜名脇役の森の100日間〜』が放送されるのに加え、今春には映画化が決定!

【インタビュー後編】松居大悟監督語る『バイプレイヤーズ 』「映画化を希望していた大杉漣さんの想いを形にしたい」

今作では元祖バイプレイヤーズの田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一をはじめ、ドラマ&映画で総勢100人超の個性派俳優が本人役で登場するなど、よりパワーアップした内容で注目を集めている。

そこで今回は、『バイプレイヤーズ』シリーズの監督を担う松居大悟氏にインタビューを敢行。
前編では『バイプレイヤーズ』という作品について、自身のこだわりや過去の作品でのエピソードを語ってもらった。

あの6人が集まるわけがないと思っていた

――2017年の『バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜』に続き、翌2018年の『バイプレイヤーズ〜もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら〜』から約2年。松居監督は今、『バイプレイヤーズ』という作品をどのように捉えていますか?

松居大悟(以下、松居):僕自身、『バイプレイヤーズ』までと『バイプレイヤーズ』以降で作品への取り組み方が変わりました。それまでは自分のこだわりやオリジナリティのようなものを、なんとか表現しようと思って苦心していたんです。でも、『バイプレイヤーズ』という作品では、そうやって準備していたものに対するこだわりを捨て、その瞬間の役者さんたちの雰囲気や面白さをみずみずしく撮るかってことに切り替えていったところがあって。積み重ねる作業から捨てる作業へ、作り方が変わっていきました。

この作品の前後であまりにも撮り方が違うので、いまだに『バイプレイヤーズ』をやるとなると、けっこう気を張ってしまいます。
でも、現場に入ったらとにかく身軽でいなければいけない。前作、前々作の撮影中は、その繰り返しでした。

――積み重ねる作業から捨てる作業への変化のきっかけは、やはり出演者のみなさんですか?

松居:そうです。みんな言うことを聞いてくれないし、台本通りになんて演じないので(笑)。毎回、今回はこういう話にしようって演出プランを組むんですけど、撮影の初日の最初のシーンからそれが崩れるというか(苦笑)。こういうプランだからもう少しこうやってほしいと伝えても、「わかったわかった」と言いながら、好き放題(笑)。


でも、僕が描いていたイメージより、そっちのほうが面白かったりするんですよ。なので、そのシーンをそう撮ると、次のシーンも変わってくるし、そのまた次のシーンも……という感じになって、台本が出来上がったときに考えた演出プランはなくなり、撮り進める中で現場でいかに成立させていくかになってくるっていう。

そういうのが第1作目のときにあり、第2作目のときはそうなるとわかっていたので、お互いに意見を出し合いながら撮るようになっていきました。

新作&映画化『バイプレイヤーズ 』松居大悟監督語る「6人集まると奔放、個々で向き合うと真摯」<前編>

――松居監督が『バイプレイヤーズ』を撮ることになったのは、プロデューサーからの指名だったとのこと。当時の松居さんは30代前半ですが、人生においても演劇においても大先輩の役者さんたちを相手にするプレッシャーも大きかったのでは?

松居:そうですね。最初に言われたのが、あの6人(遠藤憲一、大杉漣、田口トモロヲ、寺島進、松重豊、光石研)でやる企画というので「松居さんくらいの世代の人たちが観たいオジサンたちを描いてください」という話でした。
でも、集まるわけないと思って(笑)。「やりたいですけど、絶対に無理だと思います」と言ってたんですけど、集まりそうだってことになり……。

そして、最初の読み合わせで6人がズラッと並んだときは、殺される!と思ってめちゃくちゃ怖かったです(笑)。

――当時、ドラマを観ていても画力がハンパないと思いました(笑)。

松居:みなさん顔が強いですからね(笑)。

――それにしても、バイプレイヤーの方々を6人集めることは、主役級の役者を6人集めるのと同じくらい大変なことですよね。


松居:逆にいちばん忙しいのがバイプレイヤーの方たちだと思います。

――立ち位置的に共演する機会も少ないと思うのですが、みなさんが集まったときの現場の雰囲気というのはどういう感じでしたか?

松居:最初はやっぱり、6人が揃うことがないからっていう独特の緊張感があったりもしましたけど、久しぶりに会えたというところでワイワイ楽しそうにしてらっしゃいました。

芝居をするときも、気負っている方は1人もいなくて、むしろ、みなさん好き放題。いかに自由に演じるか、“自由合戦”みたいになっちゃって(笑)。第1作目ではわりとそういう感じでしたが、第2作目では関係性も出来上がっていたので、ずっと楽しそうでしたね。

バイプレイヤーが愛される理由

――松居さんは立場的にいろいろな役者さんとお仕事をされていると思うんですけど、そんな松居さんから見て、主役の方とバイプレイヤーの方とで何か明確な違いを感じたりしますか?

松居:芝居に関しては、主役の人とバイプレイヤーの人で違いがあるとはあまり感じません。ただ、『バイプレイヤーズ』の人たちのすごいところは、おそらく誰よりも現場を踏んできているのに、年下のスタッフたちにも気を遣わせないで振る舞えること。
だからこそ、現場に愛されているんだろうなと思います。

――第1作目のときも、第2作目のときもありましたが、スタッフから名前を間違えて呼ばれたりとか。

松居:きっとあるんでしょうね(笑)。そこで何も言わない感じ、すごく愛おしいなと思います。

――そういったみなさんの気遣いは、年下の松居監督に対しても同じでしたか?

松居:そうですね。特に第1作目の中盤くらいからは対等に見てくださっていたと思います。
監督として話を聞いてくださいましたし、6人が集まったときはみなさん好き放題してますけど(笑)、1対1で話すと真摯に向き合ってくださって。だからこそ、この人たちをもっと魅力的に撮りたいと思いました。

――観ている側も、あの6人をどんどん好きになっていく感じでした。今思うと、『バイプレイヤーズ』は最近の“おじかわ”ブームの火付け役なのでは?とも思ったりします。

松居:あの当時は“おじかわ”なんて言葉なかったですもんね。僕らは別にかわいいと思って撮ってなかったんですけど(笑)。

でも、そういう感じで流行るのはすごくいいと思います。言われてみれば、たしかに“おじかわ”かもしれないし、役者さんが本人役を演じるっていうのもですけど、そういう流れができてきた感じがします。

――それはきっと、『バイプレイヤーズ』の攻めの姿勢が流れを作った部分も大いにあると思います。

松居:やりたい放題やってるだけなんですけどね(笑)。

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新作ドラマ『バイプレイヤーズ〜名脇役の森の100日間〜』は1月8日(金)放送スタート

◎松居大悟監督プロフィール
1985年11月2日生まれ、福岡県出身。
劇団ゴジゲン主宰、全作品の作・演出を担う。
2012 年、『アフロ田中』で長編映画初監督。その後『スイートプールサイド』『私たちのハァハァ』『アズミ・ハルコは行方不明』など監督作を発表、枠に捉われない作風は国内外から評価が高い。
そして、テレビ東京ドラマ24『バイプレイヤーズ』シリーズではメイン監督をつとめ、さらにミュージックビデオ監督やラジオナビゲーター、コラム連載など活動は多岐に渡る。2021年GWには映画『くれなずめ』が公開予定。


ドラマ概要

ドラマ 24 「バイプレイヤーズ〜名脇役の森の100日間〜」
【放送日時】2021年1月8日(金)深夜0時12分スタート
【放送局】テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送
※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0時12分から放送

【出演】田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一/ 相島一之 阿部亮平、安藤玉恵、池谷のぶえ、石丸謙二郎、稲葉友、井上肇、伊武雅刀、宇梶剛士、宇野祥平、柄本時生、大倉孝二、岡田浩暉、岡山天音、小木茂光、小沢仁志、尾上寛之、尾美としのり、勝村政信、加藤諒、金子大地、北香那、木下ほうか、甲本雅裕、近藤芳正、今野浩喜、佐々木希、宍戸美和公、志田未来、渋川清彦、杉野遥亮、菅田俊、醍醐虎汰朗、高杉真宙、高畑淳子、滝藤賢一、竹原ピストル、田中泯、田中要次、玉置玲央、津田寛治、寺島しのぶ、富田望生、波岡一喜、西村まさ彦、野間口徹、橋本じゅん、長谷川京子、濱田岳、浜野謙太、林泰文、速水もこみち、原田龍二、ふせえり、堀内敬子、本多力、本田博太郎、本田望結、前田敦子、前野朋哉、升毅、松尾貴史、観月ありさ、水間ロン、向井理、六平直政、村田雄浩、MEGUMI、本宮泰風、森下能幸、吉田羊、芳根京子、利重剛、りょう、六角精児、渡辺いっけい
※田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一以外のキャストは五十音順にて記載

【オープニングテーマ】10-FEET「アオ」(BADASS / EMI Records)
【エンディングテーマ】竹原ピストル「今宵もかろうじて歌い切る」(SPEEDSTAR RECORDS / ビクターエンタテインメント)
【監督】松居大悟、浅野敦也、守下敏行、トミー・チャン
【脚本】ふじきみつ彦、宮下武史
【チーフプロデューサー】阿部真士(テレビ東京)
【プロデューサー】濱谷晃一(テレビ東京)、田辺勇人(テレビ東京)/ 浅野敦也(TBSスパークル)
【制作】テレビ東京、TBSスパークル
【製作著作】「バイプレイヤーズ2021」製作委員会
【後期サイト】https://www.tv-tokyo.co.jp/byplayers/

(C)「バイプレイヤーズ2021」製作委員会

映画概要

映画『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画をつくったら〜』
【公開日】2021年春公開
【出演】田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一
【監督】松居大悟
【脚本】ふじきみつ彦 宮本武史
【製作】「映画 バイプレイヤーズ」製作委員会
【制作プロダクション】スパークル
【配給】東宝映像事業部
【公式サイト】http://byplayers.jp
(C)2021「映画 バイプレイヤーズ」製作委員会


Writer

片貝久美子


ライター(ときどき編集)。アーティストや俳優をはじめとするエンタメ系のほか、コーポレートサイトなどでインタビューを中心に活動中。最近は金継ぎや文楽といった伝統芸能にハマってます。