『ドラゴン桜』読解力の大切さ説く6話 本ドラマがよく観られているのはよくできた要約文のようだから?
イラスト/ゆいざえもん
※本文にはネタバレがあります

読解力強化『ドラゴン桜』第6話

日曜劇場『ドラゴン桜』(TBS / 日曜よる9時〜)第6話は2泊3日の地獄の合宿。桜木(阿部寛)はまたまた意外な合宿カリキュラムを行う。特別講師・太宰府治(安田顕)も登場し、【読解力】が強化された。


【前話レビュー】『ドラゴン桜』健太(細田佳央太)の才能見抜いた桜木(阿部寛)「秘密兵器」投入で東大専科大勝利

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(C)TBS

健太(細田佳央太)が入って東大専科の活動は順調。これで東大専科は岩崎楓(平手友梨奈)、瀬戸輝(高橋海人)、早瀬菜緒(南沙良)、天野晃一郎(加藤清史郎)の5人になった。あとは優秀な小杉(志田彩良)藤井(鈴鹿央士)が入れば鬼に金棒。合宿には小杉と藤井も参加して、一歩前進という感じである。が、そこに小杉の父母が乗り込んで来た。娘を抑圧する父(迫田孝也)を桜木は容赦なく責め立てる。

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太宰府治先生役の安田顕、小杉の父役の迫田孝也など、日曜劇場でおなじみの俳優たち。安田は阿部寛主演の『下町ロケット』で職人肌の技術部長を好演し、迫田は前回の『天国と地獄』でキーマンに抜擢され注目された。

地獄の合宿と思ったら、1日目は「自由」。自由、つまり自習。水野(長澤まさみ)の時代は1日16時間勉強をしたが、「共生と服従だけの時代は終わったんだ」と桜木は言い、子供の価値観を認めること、認めたうえで信じてやること、大人のやることはそのふたつであると水野に説く。

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自由にさせた後はポークカレーを中心にした栄養価満点の夕食。
受験に食事も大事。ただし、食べすぎてもいけない。「脳のエネルギー効率を考えた食事をしろ」と桜木はもっともらしいことを生徒たちに叩き込む。

桜木が合宿を行った理由のひとつは、集団行動することで小杉や藤井の凄さを成績の悪い4人が見て、刺激を受けることだった。4人は小杉や藤井が黙々と勉強する姿に心を動かしていく。

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「国語とは科学だ」

2日め。桜木は、本番で結果を出すために試験日をルーティーン化することを伝授。それから、なんだかネガティブな太宰府治先生の国語の授業。「国語とは科学だ。優れた文章とは建築学に則って作ってある」と岡本太郎のような顔で太宰府先生は文章の構造を力説する。「つまり」の同等関係、「それに対して」の対比関係、「なぜなら」の因果関係でできている。物事を言い換えることは、ほかの教科にも有効である。

「つまり」「例えば」「要するに」「いわば」「すなわち」「言い換えれば」を使う技術を伸ばしていく専科の生徒たち。
『走れメロス』を題材に要約を学んだ結果、導き出された「友を信じて待て」。「友」という言葉に健太が「麻里ちゃん」と反応する。父親に東大に行かせるつもりはないので退学させると連れ帰られてしまった小杉麻里を思う東大専科の面々。勉強は今のところさほどできない彼らだが、友情には厚い。

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小杉の父は、女性は学歴が必要なく結婚するのがいちばんの幸せだと一方的な考えを押し付け、DVまでする。かつて経験した辛い出来事が父をそうさせたことを知っている小杉は、もっと勉強したい意思を貫くことを躊躇してしまう。

そんな迷う彼女に東大専科の面々は「なぜなら」「例えば」「つまり」「そして」「だからこそ」を使った要約文で、彼女がいかに東大に行くべき才能を持っているか訴える。“要する”に「小杉麻里こそ集中力がある人が集まっている東大に行くべきだ」ということを5人が作文化。それを聞いて「いい文章かどうかはわからないけど……みんなが言いたいことは伝わった」と小杉は感謝する。

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『ドラゴン桜』の第6話を要約すると?

読解力の大切さは東大受験に限らない。SNSの急速な広がりによって誰もが文章を読んだり書いたりする機会が増えた。読んだり書いたりしたものが多くの人たちに読まれジャッジされるようになったことで、文章力や読解力の差があからさまになり、それが分断を生んでいく。読解力のない人が文意を勘違いしたり理解できないことで感情を害したりすることが増えた。
もちろん誰もがわかる文章表現に気遣うことは大切だけれど、そのため独自の表現を避けるようになることは残念でもある。

『ドラゴン桜』の影響で読解力を身につけようとする人が増えたり、実際、基本構造に則って読みやすい文章を書く人が増えたりしたら喜ばしい。反面、生徒たちが書いた要約文のような表現ばかりになることを恐れる。現に、SNSで拡散され、読まれる文章はこの手の文章だからである。「要するに」のあとに当たる言いたいことがシンプルなのはいいとして、言い換えの部分すら誰もがわかる個性を排除したものがよく読まれていることがある。

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例えば『ドラゴン桜』の第6話。これを要約すると、優秀な小杉麻里が進学しようとしない理由は、父の反対によるものだった。なぜ父が反対するかというと、過去、会社の事業がうまくいかなくなったことからコンプレックスを抱え、娘が自分を超えていくことを恐れたから。

それまでは優しかった父親のことを忘れられない麻里は父に反抗できない。桜木が父子の心に秘めた思いを暴いたことと生徒たちの要約文で事態は好転する。父娘の葛藤の解決がめっちゃあっさりしている。ドラマの内容がまるでよくできた要約文のようなのである。


『ドラゴン桜』読解力の大切さ説く6話 本ドラマがよく観られているのはよくできた要約文のようだから?
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東大受験成功のノウハウを描く『ドラゴン桜』が多くの人に観られている理由は、よくできた要約文のようだからだ。日本の中枢を背負う人たちを輩出する最高峰・東大――すなわち日本の知識の基準の元になっている大学に入るためのノウハウになっている「要約文」の構造まんまなのだから間違いはない。

『ドラゴン桜』が東大に入ることを勧める理由は、社会に利用されないためである。頭のいい人たちによって自分たちに都合よく作られたルールに騙されず、自分たちもそっち側にまわるための共通ルールを学ぶことを桜木は勧めてくる。それによって自ずと東大的なひとつの型に収まってしまうというなんともパラドックス。桜木が提示する頭の体操みたいなことは知らないよりは知っているほうが全然いいけれど、それはつまり単に負け組から勝ち組に居場所を変えるだけのことである。

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番組情報

TBS
日曜劇場『ドラゴン桜』
毎週日曜よる9時〜

出演:出演:阿部寛 長澤まさみ 高橋海人(King & Prince) 南 沙良 平手友梨奈 加藤清史郎 鈴鹿央士 志田彩良 細田佳央太 西山 潤 西垣 匠 吉田美月喜 齋藤瑠希 内村 遥 山田キヌヲ ケン(水玉れっぷう隊) 鶴ヶ崎好昭 駿河太郎 馬渕英里何 大幡しえり 深田竜生(少年忍者/ジャニーズJr.) 林 遣都 佐野勇斗 早霧せいな 山崎銀之丞 木場勝己 江口のりこ 及川光博

原作:三田紀房『ドラゴン桜2』(コルク)
脚本:オークラ 李 正美 小山正太
音楽:木村秀彬
プロデューサー:飯田和孝 黎 景怡
演出:福澤克雄 石井康晴 青山貴洋

制作著作:TBS
番組サイト:https://www.tbs.co.jp/dragonzakura/

※第7話のレビューを更新しましたら、エキレビ!のツイッターにてお知らせします

Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami

Illustrator

ゆいざえもん


フリーで活動するグラフィックデザイナー・イラストレーター。得意としているファンアートは、透明水彩画や似顔絵で役者さん・舞台の魅力にアイデアを加えながら描いています。他にブランディングデザインやパッケージ・ウェブデザインなどを行う。宝塚歌劇が大好き。愛知県在住。

関連サイト
@yui_zaemon

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