『ドラゴン桜』第9話はまさかの逆転展開で池井戸ドラマ風 まんまと騙されたアァァ!
イラスト/ゆいざえもん
※本文にはネタバレがあります

ミッチー劇場『ドラゴン桜』第9話

日曜劇場『ドラゴン桜』(TBS / 日曜よる9時〜)第9話。大学入学共通テストまであと115日から当日まで一気に進む。「俺は」「私は」「絶対合格する」と目に力が入る専科の面々。


【前話レビュー】『ドラゴン桜』平手友梨奈の一途な表情が胸を打つ8話 今のところ林遣都は無駄遣い状態だが、残りあと2回

10分間延長で、学園売却問題も本格化した。まさかの逆転展開で池井戸ドラマ風になって来た。しかもその立役者が思いがけないあの人だったからびっくりしたし、信じられない〜、むかつく〜と心底腹が立ってしまった。こういうふうに素直に感情を動かされるのがエンタメの良さである。

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(C)TBS

岩崎楓(平手友梨奈)、瀬戸輝(高橋海人)、早瀬菜緒(南沙良)、天野晃一郎(加藤清史郎)、小杉麻里(志田彩良)、藤井遼(鈴鹿央士)、原健太(細田佳央太)に、小橋(西山潤)岩井(西垣匠)も参加して、専科は9人になった。

これまでの個性派・講師陣が再登場。国語:太宰府治(安田顕)、数学:柳鉄之介(品川徹)、英語:由利杏奈(ゆりあんレトリィバァ)……彼らが今一度、大事なことを教え、生徒たちに基礎学力がついた。

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「安心ね」と理事長(江口のりこ)は言うけれど、彼女はこれで解任が確定。水野法律事務所の契約もおじゃん。東大受験と学園売却問題という関係なさそうな題材をまとめるのは水野(長澤まさみ)の役割だった。

かつて東大受験に励んだ学校が水野にとってかけがえのない場所であり、大人になっても戻る場所として母校はあるべきだと願う彼女は、なんとか学園を守りたいと行動に出る。高原先生(及川光博)奥田校長(山崎銀之丞)のふたりに結託してもらい、5人の理事からあとひとり味方になれば多数決で売却に反対できる。
5人のうち元校長を味方に引っ張り込もうとする……があっさりダメだった。

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今回もまた、土地売却問題は茶番展開だなあと思って見ていたが、後半戦、まさか……の展開に。そこに至るまでは友情、努力、勝利と安定の東大受験編である。

桜木は受験に役立つ「共通テストの5ヵ条」を伝授。全部、引き写すことは避けるが、そのひとつに「一日目の試験後はひとりで帰れ」があった。影響されるから互いに連絡をしないこと。それと「自分さえ受かればいいと思って挑むこと」。ここまで仲良く力を合わせてきたが最終的には“自分ひとり”の戦いになる。

ところが、共通テストプレの日、藤井がひとりで帰ったことを心配した健太がバナナを持って慰めに来る。本番はひとりで帰るべきと桜木に言われたが、プレではみんなで帰る約束をしたようだ。

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「人生はどうなるかじゃない。どうするかだ」

藤井は両親に出来のいい弟と比較されて苦しんで、勉強も進んでいなかった。
当初、成績の良いことを鼻にかけ、感じの悪いことこの上なかった藤井だが、メンタルの弱さは人一倍。なんかもう毎回悩んで、毎回、誰かに励まされている。性格が悪いと合格しないと桜木に言われた藤井が性格の良い人たちに支えられていく。

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学校という場があるからこそ、これができる。水野が学校を売却させないように張り切る理由はそこにある。今、コロナ禍でリモート授業になって学校でリアルに交流できない学生たちが、友だちと会いたいと思うことと重なって見える。やっぱり実際に人と会うことって大事なのだ。

「東大専科に入ってなかったら、今頃どうなっていただろう」と考える瀬戸。「みんなと東大に行きたい」と健太も思う。その気持はほぼみんな一緒。岩崎だけは「オリンピックだけが夢だと思っていた。だけど私の人生それだけじゃない」と野望に燃えているのがすごい。
オリンピックだけでもすごいのに。東大まで……。比較するものではないとはいえ、岩崎がいちばんすごい気がする……。でも、人それぞれ、生き方がある。

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「人生はどうなるかじゃない。どうするかだ」

共通テスト1日前、桜木はこう生徒たちに発破をかける。この時点で、9時26分。まだ30分以上ある。ずいぶん駆け足で話が進むのであった。

テストに向かう9人はハイスピードカメラでゆっくり歩き、その重みはまるで戦いに赴くヒーローたちのようだった。

試験の帰りは、桜木の教えのとおり、行きとは違ってひとりで帰る。でも、それまでに共に過ごしてきた時間があるから、決して独りではない。
帰りに瀬戸は以前、桜木がバスケをやりながら教えてくれた言葉を思い出す(そのときの、阿部寛の遠投力のものすごさ)。みんなと過ごした時間が学びと自信に繋がっている。

生徒たちは希望に満ちている。自分を信じ、仲間を信じるすばらしさを知った若者たち。

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「身近なものこそ危険をはらんでいるもんだよ」

ところが後半22分間は一転して、信じた仲間に裏切られる話になるのだ。それは学園売却問題のほうで、キラキラした若者と比べて、大人たちのなんと腹黒いことか。

学園売却を阻止する可能性を水野が見つけたと思ったのもつかの間、かつて同じ弁護士事務所にいた岸本(早霧せいな)、後輩の坂本(林遣都)、桜木と因縁のある元教え子の米山(佐野勇斗)が登場し、動揺する水野。桜木は冷静な顔をしながら、頭を動かしているのがなんかわかる。生徒たちに、常に冷静であれ、と教えている桜木はここで実践しているのである。彼の中では想定外のピンチも想定内という感じなのであろう。

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だが、ここまでは、視聴者も想定内。想定外はこの後だった。まさかの――
高原が裏切者であった。


高原を演じている及川光博は、『半沢直樹』でも最後まで主人公の半沢に尽くし続ける善人で、今回もニコニコとよく言えば人当たりの良い、悪く言えば当たり障りのない人物を好演していて、完全にノーマークであった。及川だからどこかでもっと活躍するはずと考えるべきだったが、東大受験の話に力が入り、売却問題が薄っぺらかったので(第9話の前半の元校長を味方に着ける計画とかも)まんまと騙されてしまった。

「ンフ フフフフ……」と正体を明かしたときのにやけた表情が、決して巨悪ではない小物感が出ていて、最高。「身近なものこそ危険をはらんでいるもんだよ」は名言。ミッチー劇場。
(木俣冬)

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※最終回のレビューを更新しましたら、エキレビ!のツイッターにてお知らせします

番組情報

TBS
日曜劇場『ドラゴン桜』
毎週日曜よる9時〜

出演:出演:阿部寛 長澤まさみ 高橋海人(King & Prince) 南 沙良 平手友梨奈 加藤清史郎 鈴鹿央士 志田彩良 細田佳央太 西山 潤 西垣 匠 吉田美月喜 齋藤瑠希 内村 遥 山田キヌヲ ケン(水玉れっぷう隊) 鶴ヶ崎好昭 駿河太郎 馬渕英里何 大幡しえり 深田竜生(少年忍者/ジャニーズJr.) 林 遣都 佐野勇斗 早霧せいな 山崎銀之丞 木場勝己 江口のりこ 及川光博

原作:三田紀房『ドラゴン桜2』(コルク)
脚本:オークラ 李 正美 小山正太
音楽:木村秀彬
プロデューサー:飯田和孝 黎 景怡
演出:福澤克雄 石井康晴 青山貴洋

制作著作:TBS
番組サイト:https://www.tbs.co.jp/dragonzakura/

Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami

Illustrator

ゆいざえもん


フリーで活動するグラフィックデザイナー・イラストレーター。得意としているファンアートは、透明水彩画や似顔絵で役者さん・舞台の魅力にアイデアを加えながら描いています。他にブランディングデザインやパッケージ・ウェブデザインなどを行う。宝塚歌劇が大好き。愛知県在住。

関連サイト
@yui_zaemon

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