
現在、第3話までが配信されている『ロキ』。いよいよ話の本筋にたどり着いた感があるが、その本筋はなんとも大規模。
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ターゲットはまさかの女ロキ! そして行き着いたのは滅亡寸前の星!
ロキとTVAが追跡する、悪質な変異体のロキ。前回初めて見せたその姿は、なんと女だった。ロキたちの前から姿を消した女ロキが次に現れたのは、TVA本部。女ロキを追ってただ一人で次元を抜けるドアをくぐったロキは、TVA本部で彼女と激しく戦いつつ協力を申し出る。しかし女ロキはロキの協力を拒み、二人は次元のドアを跨ぎながら激しく戦う。その最中、ロキは女ロキからタイムパッドを強奪、魔術で消し去ってしまう。しかも戦闘の最中に次元を跨ぎ超えたため、着地できたのはまったくデタラメな地点。というわけで2人が到着したのは、2077年のラメンティス1号星だった。

ラメンティスに到着したことに焦る女ロキ。ラメンティスは人類が入植していた衛星だったが、現在は母星へ飲み込まれる危機の真っ只中だったのだ。隕石が降り注ぐ中を逃げる2人。しかもタイムパッドは電池が切れてしまい、次元のドアを開くことができない。
前回「神聖時間軸から派生した時間軸を大量発生させ、TVAを大混乱に陥れる」という強烈なテロを仕掛けたシルヴィ。今回はさらに「触れた相手の行動を操作できる」「人の記憶に入り込んで知っていることを吐かせる」という能力も明らかに。他人の弱みをついて裏切りを重ねるロキとはまた違った、しかしロキの一種らしい能力を見せる。
さらにシルヴィは戦闘能力も随一。TVAの隊員を格闘で倒し、ナイフ使いであるロキと互角に渡り合うなど、フィジカルも強いという強敵である。時間軸を大量発生させてTVAを大混乱させ、さらに本部へ殴り込むという行動をとった理由は、どうやらTVAを作り出したタイムキーパーに直接会うことな様子。しかしその目的の詳細はまだわからず、謎に包まれている。

そんなシルヴィとロキが「ロキ同士で会話する」というMCUでも全く発生していなかったシーンを見せる。あんなに裏切りまくりで性格は最悪のロキだが、育ての母であるフリッガのことを語る時だけは少し寂しげな表情を見せるのが切ない。しかしシルヴィの話の内容や出自はそれ以上に謎。
世界の破滅すらよくあるイベント? 今後のMCUのスケール感に震える
今回の舞台となったラメンティス1号星は、どうやら人類が入植して鉱物を掘り出していた鉱山の星らしい。そのデザインのセンスは、「アメリカ開拓時代に微妙にレトロなSFっぽいムードを掛け合わせる」という、近年の洋ゲーでよく見る雰囲気。『アウターワールド』とか『ボーダーランズ』とかのムードといえばわかりやすいだろうか。80年代の東側諸国っぽいデザインだったTVAとは、全く異なる雰囲気なのが楽しい。しかしまあ、流行ってるんですかね、こういうデザイン。そんなデザインで1から設計された舞台が、隕石の落下でガンガン破壊される。すでに開拓地には人間はほとんどおらず、逃げられる金持ちは鉄道に乗って脱出用シャトルの発着所へと移動しており、開拓地に残っているのはなんらかの事情を抱えた人間ばかり。
星全体が破滅するまであと12時間な上に、すでにこの星の行く末を知っているシルヴィは、シャトルに乗ったところで全員助からないという結末を知っている。なんとも悲惨な状況下で、ロキとシルヴィは「タイムパッドを充電する」という目的のためだけに動く。

前回もそういう内容ではあったが、今回でも「世界の破滅はありふれている」という点が繰り返し強調される。シルヴィがTVAから身を隠していたのはその場にいる全員がもれなく死亡するイベントが発生する場所であり、世界の破滅に隠れてTVAへの攻撃を画策していた。大規模な破滅はそれなりにレアなイベントではあるが、しかしそれなりの頻度で発生している。
しかしまあ、スーパーヒーロー映画といえば、ヒーローたちがなんとか頑張ってこの世の破滅を防ぐものである。ラメンティス1号星の物語だって、これを主題にして「この破滅をいかにして防ぐか」をお題に映画が一本作れそうだ。
アベンジャーズだって、サノスの侵攻から地球を守るために戦っていた。だが、『ロキ』ではそのレベルの破滅が続けざまに発生している。おまけにロキには、それを防ごうとして行動する気配が微塵もない。今回だって「タイムパッドをなんとかして充電しないとな~」とドタバタしているだけである。

この「そこに確かに人が住んでいる」と思えるレベルまで作り込んだ世界を、いきなりガンガン破滅させるという『ロキ』のハイカロリーな作りには驚くばかりである。それと同時に、マーベルが今後のシリーズでどういった存在を描くつもりなのか、なんとなく見えてきたような気もする。
時間や空間を簡単に飛び越えられる存在からすれば、ひとつの世界が破滅することも取るに足りない些事なのである。いってしまえばドラマシリーズであり本筋からの派生作(といっていいかどうか不安になる内容ですが)である『ロキ』がこういったメッセージを発している以上、今後の映画もそれに則った内容になっていくはずだ。
かつてヒーローたちが必死で争っていた「世界の破滅」ですら、よくあるイベントとして処理できるようになったMCU……。
(しげる)
作品情報
『ロキ』Disney+(ディズニープラス)にて配信中
(C)2021 Marvel

Disney+(ディズニープラス)
>はじめてなら初月無料でお試し
>月額770円(税込)ですべての作品が見放題
◆配信スケジュール(全6話)
※毎週水曜日 16:00配信開始
第1話:6月9日(水)
第2話:6月16日(水)
第3話:6月23日(水)
第4話:6月30日(水)
第5話:7月7日(水)
第6話:7月14日(水)
しげる
ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。
@gerusea