
視聴率20.4%で有終の美『ドラゴン桜』最終回
日曜劇場『ドラゴン桜』(TBS / 日曜よる9時〜)最終話は共通テスト本番と合格発表。それだけでもドキドキな上、第1シリーズの生徒たちが全員登場して、いやが上にも盛り上がり、世帯視聴率は20%超え、個人視聴率も13.1%とかなり高い数字を叩き出し、有終の美を飾った。【前話レビュー】『ドラゴン桜』第9話はまさかの逆転展開で池井戸ドラマ風 まんまと騙されたアァァ!
合格発表時、生徒が自分の番号が掲載されているかどうか確かめる場面は、観ているほうも我がことのような緊張感があった(受験生がすごい密!)。

事前にネットニュースで、山下と新垣が出るという情報が流れていたが、まず登場したのは、第1話にすでに登場していた小林麻紀役のサエコ(紗栄子)、緒方英喜役の小池徹平、奥野一郎役の中尾明慶の3人。その後、引っぱりに引っぱって、矢島勇介役の山下智久が声の出演、トリに香坂よしの役の新垣結衣が登場した。
小池と中尾の登場が想像していなかったので、いちばんのサプライズであった。予想外のことが起きる逆転劇が最近の日曜劇場のトレンド。その法則に則った構成は見事である。


ストーリー自体も、第9回で及川光博演じる高原が裏切り者だったことに驚いたが、最終回も、まさかの展開が待っていた。それよりまず東大受験について振り返っておこう。
人として成長した藤井の姿に感動
最初はいちばん嫌なヤツに見えた藤井遼(鈴鹿央士)がすっかり様変わり。「明日、明後日(テストの日)は自分に集中しろ」と桜木(阿部寛)に言われたにもかかわらず、原健太(細田佳央太)が受験生からいやがらせを受けているのを見て、見ぬふりできず助けに入ってケガしてしまう。

「性格が悪いヤツは東大に受からねえんだよ」という言葉は以前、藤井自身が桜木に言われたことである。それがいまや、すっかり性格の良い人に。
残念だったのは、悪者受験生が藤井には手を出さずに去っていこうとすると、藤井が後追いして「健太に謝れ」とかかっていって反撃にあうこと。謝罪させたい気持ちもわかるが、ここは放っておくのが得策だろう。勉強よりもそういう判断をできる大人になってほしい。


また、合格発表のときに、悪者受験生がしつこく健太と小杉麻里(志田彩良)にからんでいると、小橋(西山潤)と岩井(西垣匠)が助けること。小橋と岩井の活躍の場を作らないといけないのはわかるけれど、最初に彼らが助けておけば、藤井はケガもしないで、不合格にもならなかったかもしれないのにと、物語のご都合展開にじりじりする。もっとも藤井は難易度の高いほうを目指したので落ちただけかもしれないが。
まあ、すべてが物語なので、楽しんでいるところに水を差しても仕方ないこともわかっている。

岩崎楓(平手友梨奈)が父母にも応援してもらえるようになって合格、瀬戸輝(高橋海人)は強運を発揮し合格、天野晃一郎(加藤清史郎)も合格、早瀬菜緒(南沙良)はまさかの展開に。皆、それぞれ見せ場があった。


「よしの」「直美」
最終回の最大の大逆転は、坂本(林遣都)と米山(佐野勇斗)。彼らがこのまま桜木と水野(長澤まさみ)を陥れる悪役に徹したら無駄遣いに終わるところだが、さすがにそんな使い方はしなかった。坂本と米山は本性を隠して、ずっと岸本を見張っていたのである。岸本(早霧せいか)と高原と龍野恭二郎(木場勝己)は最後まで悪者で、米山の怖い目は、「おれはもう止まりませんよ、あんたを徹底的に潰すまではな」と岸本に向けられる。


「こんな茶番やってられるか」
恭二郎の激怒セリフ(木場勝己はかなり飛沫を撒き散らしていた)に筆者は共感してしまった。演じている人は1ミリも悪くはないのだが、坂本と米山の物語や学園買収に内容がなさ過ぎる。彼らの悪事が録画され、これが公表されたらおしまいという展開、最近のドラマは録画、録音で大逆転が多過ぎないか。なまじ視聴率が高いからまだまだこの手のドラマが作り続けられるのであろう。高学歴の優秀な人たちがこういう上っ面のドラマばかり作っている状況を筆者は嘆く。

もちろん良いところもあった。桜木が話しているときの、理事長・龍野久美子を演じる江口のりこの反応のすばらしさ。目の強さ、呼吸、久美子の心が動いていることがみごとに可視化されていた。
そして、最後の最後に新垣結衣が、坂本たちに協力していた人物として登場。その前に、矢島(山下智久)が声だけ出てきて、物語は最高潮に高まる。同級生として、「よしの」「直美」と手を取り合う姿は問答無用に麗しい。
東大専科の生徒たちを演じた若い俳優たちの瑞々しく清潔感あふれる姿も良かった。




ラストは、桜木のメッセージ。せっかく植えたドラゴン桜(の木)の下に集まって――という感じではなく、ベタベタと余韻を引っぱらず、「自分の信じる道を行け」と桜木のドアップと声援でスパッと切ったところが良かった。
これからの若者たちには、「クソみたいな人生」(桜木)を送らず、茶番な世の中に流されず、染まらず、瞬間瞬間を真剣に生きてほしい。
(木俣冬)



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番組情報
TBS日曜劇場『ドラゴン桜』
毎週日曜よる9時〜
※放送終了
出演:出演:阿部寛 長澤まさみ 高橋海人(King & Prince) 南 沙良 平手友梨奈 加藤清史郎 鈴鹿央士 志田彩良 細田佳央太 西山 潤 西垣 匠 吉田美月喜 齋藤瑠希 内村 遥 山田キヌヲ ケン(水玉れっぷう隊) 鶴ヶ崎好昭 駿河太郎 馬渕英里何 大幡しえり 深田竜生(少年忍者/ジャニーズJr.) 林 遣都 佐野勇斗 早霧せいな 山崎銀之丞 木場勝己 江口のりこ 及川光博
原作:三田紀房『ドラゴン桜2』(コルク)
脚本:オークラ 李 正美 小山正太
音楽:木村秀彬
プロデューサー:飯田和孝 黎 景怡
演出:福澤克雄 石井康晴 青山貴洋
制作著作:TBS
番組サイト:https://www.tbs.co.jp/dragonzakura/
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
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ゆいざえもん
フリーで活動するグラフィックデザイナー・イラストレーター。得意としているファンアートは、透明水彩画や似顔絵で役者さん・舞台の魅力にアイデアを加えながら描いています。他にブランディングデザインやパッケージ・ウェブデザインなどを行う。宝塚歌劇が大好き。愛知県在住。
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