※本文にネタバレ要素を含みます
『ブラック・ウィドウ』21年ぶり「家族」の再会にハラハラ、スパイ映画らしいアクションの数々にドキドキ
(c)Marvel Studios 2021

この映画のタイトルにもなっているブラック・ウィドウといえば、2010年の『アイアンマン2』からマーベル・シネマティック・ユニバース(以下MCU)に参加した、比較的古株のキャラクターである。当初は謎めいたS.H.I.E.L.D.の女スパイとして登場したものの、途中からはアベンジャーズのまとめ役として活躍し、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でチームが分裂した際にはアイアンマン側にとどまるも最終的にはキャプテン・アメリカと共に行動。
サノスの脅威から世界を救うため、最後には自ら死を選んだ。

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『ブラック・ウィドウ』21年ぶり「家族」の再会にハラハラ、スパイ映画らしいアクションの数々にドキドキ
(c)Marvel Studios 2021

遅れに遅れた『ブラック・ウィドウ』、ついに公開

そんな彼女の過去にフォーカスしたのが、『ブラック・ウィドウ』である。この映画、昨年公開されるはずだったもののコロナのせいでスケジュールが延びに延び、最終的にはこの7月に劇場および配信で公開されることとなった。

MCUは関連作品を劇中の大イベントごとに「フェーズ」と呼ばれる区切りで分けている。『アベンジャーズ/エンドゲーム』『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』で一区切りついた後、この『ブラック・ウィドウ』からMCUの新たなフェーズが始まるはずだったのだ。しかし残念ながら当初は後から公開されるはずだった配信ドラマの方が先に世に出てしまい、『ブラック・ウィドウ』は遅れることに。このズレが今後シリーズにどのような影響を生むか、微妙にわからないところがある。

『ブラック・ウィドウ』21年ぶり「家族」の再会にハラハラ、スパイ映画らしいアクションの数々にドキドキ
(c)Marvel Studios 2021

『ブラック・ウィドウ』21年ぶり「家族」の再会にハラハラ、スパイ映画らしいアクションの数々にドキドキ
(c)Marvel Studios 2021

バラバラになった家族を探し、巨悪に挑め!

映画は1995年のオハイオ州で、父、母、長女である幼いナターシャ(後のブラック・ウィドウ)、次女のエレーナの4人家族が平和に暮らしているところから始まる。しかし、家族はS.H.I.E.L.D.の襲撃を受け、危ないところで小型機を使い脱出。キューバにたどり着く。

飛行場で待っていたのはロシア兵。親2人はロシアのスパイであり、娘2人は隠れ蓑としてアメリカに連れて行かれただけだったのだ。ナターシャとエレーナはその場で引き離され、「レッド・ルーム」という訓練施設に送られることに。

『ブラック・ウィドウ』21年ぶり「家族」の再会にハラハラ、スパイ映画らしいアクションの数々にドキドキ
(c)Marvel Studios 2021

『ブラック・ウィドウ』21年ぶり「家族」の再会にハラハラ、スパイ映画らしいアクションの数々にドキドキ
(c)Marvel Studios 2021

21年後、2016年のブラック・ウィドウは『シビル・ウォー』の後に失踪、S.H.I.E.L.D.の追跡から逃げていた。
かつての伝手を頼ってノルウェーの隠れ家に逃れた彼女は、以前使っていたブダペストの潜伏場所から引き上げた荷物の中に妙な箱が入っているのを見つける。その箱を積んだまま車で燃料を買いに出た彼女は、こちらの動きを真似てくる謎の敵"タスクマスター"の襲撃を受け、箱を強奪されそうになる。

辛くも逃げ出したブラック・ウィドウが箱を開けると、中には謎の赤い薬剤、そして全く連絡を取れなくなっていた妹エレーナが遠い昔に撮った写真が入っていた。これは妹からのメッセージだと確信したブラック・ウィドウは、危険を顧みず単身ブダペストに向かう。

『ブラック・ウィドウ』21年ぶり「家族」の再会にハラハラ、スパイ映画らしいアクションの数々にドキドキ
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というわけで、ナターシャとエレーナはなぜ世界有数のスパイ/暗殺者となり、彼女たちはどのようにして育てられたのか……という疑問を軸に、「アベンジャーズが空中分解していた時期、ブラック・ウィドウは何をしていたのか」に迫る作品ということになる。

キーとなるのは彼女が偽の家族として暮らしていた男女、父親役のアレクセイと母親役のメリーナだ。アレクセイのはロシア製超人兵士「レッド・ガーディアン」、メリーナはレッド・ルームの敏腕科学者という正体を、それぞれ持っている。

『ブラック・ウィドウ』21年ぶり「家族」の再会にハラハラ、スパイ映画らしいアクションの数々にドキドキ
(c)Marvel Studios 2021

『ブラック・ウィドウ』21年ぶり「家族」の再会にハラハラ、スパイ映画らしいアクションの数々にドキドキ
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そんなアレクセイの描写はけっこうキツい。21年前はスパイとしてちゃんと仕事をしていたのに、最近は刑務所に幽閉されて囚人たちと腕相撲をするくらいしかやることがない。「80年代の冷戦真っ只中の頃はキャプテン・アメリカと戦って、互いに認め合うライバルだった……」という自慢話をしても、囚人仲間から「その頃はキャプテンって氷漬けだったろ」と突っ込まれる始末である。

ソ連の超人兵士としてキャプテン・アメリカの向こうを張るはずだったのに、地味なスパイ任務のあとは見捨てられ、過去の栄光を妄想してすがりつくしかないおっさんなのである。

Disney+(ディズニープラス)
▲『ブラック・ウィドウ』Disney+(ディズニープラス)にて配信中


『ブラック・ウィドウ』21年ぶり「家族」の再会にハラハラ、スパイ映画らしいアクションの数々にドキドキ
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この困ったおっさんとキレ者の元母親役メリーナ、そして「妹」であるエレーナがどうブラック・ウィドウと絡むのか、21年ぶりに再会した彼らはまともにチームワークが取れるのか。
観客はハラハラしながら見守ることになる。

ブラック・ウィドウさん、お疲れ様でした

宇宙規模の敵もゴロゴロ登場するMCUだが、今回はスパイのブラック・ウィドウが主役ということで敵の規模感はちょっと小さめ、ブラック・ウィドウ一家だけで戦うのにちょうどいいサイズとなっている。

『ブラック・ウィドウ』21年ぶり「家族」の再会にハラハラ、スパイ映画らしいアクションの数々にドキドキ
(c)Marvel Studios 2021

『ブラック・ウィドウ』21年ぶり「家族」の再会にハラハラ、スパイ映画らしいアクションの数々にドキドキ
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さらにアクションの方も実在感のあるハードなものとなっており、家の中にある道具を使ったガチンコの殺し合いや、市街地を走り回るカーチェイス、ヘリを使った急襲と、スパイ映画らしいバリエーションを見せてくれる。

そんな中で、特によかったのがエレーナ役のフローレンス・ピューだ。映画だと『ファイティング・ファミリー』でも女子プロレスラーの役をやっていたが、力感のあるアクションはなかなかのもの。打撃がけっこう重そうな感じがして説得力があるし、口が減らない負けん気の強さとふてぶてしさも印象的である。今後もMCUではレギュラーとして登場してほしいキャラクターだ。

『ブラック・ウィドウ』21年ぶり「家族」の再会にハラハラ、スパイ映画らしいアクションの数々にドキドキ
(c)Marvel Studios 2021

『ブラック・ウィドウ』21年ぶり「家族」の再会にハラハラ、スパイ映画らしいアクションの数々にドキドキ
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という感じでアクションはカッコいいのだが、困ったことにブラック・ウィドウがもう死んでいることを我々は知っている。劇中のブラック・ウィドウがカッコよく頑張れば頑張るほど「でもこの人、死んでるんだよな……」「惜しい人を亡くしましたね……」という気持ちになっちゃうのだ。いやほんと、「この内容なら、時系列通りに『シビル・ウォー』の後あたりに公開しておけばよかったのでは……?」という疑問がつい湧いてしまうのである。

ただまあ、これまでアベンジャーズの屋台骨を支えてくれたブラック・ウィドウに、一本も単独作がないのはそれはそれで寂しいという気持ちもある。今回の映画でもいいヤツだし、親が誰なのかすらわからなかった彼女が最終的にどのような「家族」にたどり着いたのかという経緯を見せられると、素直に「よかったね……」というテンションになってしまったのも事実。まあ、それにしても「もう死んでる」というのはけっこう重たいわけですが……。


『ブラック・ウィドウ』21年ぶり「家族」の再会にハラハラ、スパイ映画らしいアクションの数々にドキドキ
(c)Marvel Studios 2021

『ブラック・ウィドウ』21年ぶり「家族」の再会にハラハラ、スパイ映画らしいアクションの数々にドキドキ
(c)Marvel Studios 2021

そんなこんなで、10年以上にわたってアベンジャーズのレギュラーとして頑張ったブラック・ウィドウが、最後に最もパーソナルな問題にケリをつけた……と思えば、たしかにこの映画の存在意義を感じられるというもの。ひとまずは、お疲れ様でしたと言いたいところである。しかし今後MCUはどうなっていくのか、ある意味『ブラック・ウィドウ』のおかげで読めなくなったところもある。次回作も楽しみに待ちたいところだ。
(しげる)

作品概要

『ブラック・ウィドウ』
映画館&ディズニープラス プレミア アクセス大ヒット同時公開中

『ブラック・ウィドウ』21年ぶり「家族」の再会にハラハラ、スパイ映画らしいアクションの数々にドキドキ

出演:スカーレット・ヨハンソン フローレンス・ピュー レイチェル・ワイズ デヴィッド・ハーバー O. T. ファグベンル
監督:ケイト・ショートランド
脚本:エリック・ピアソン
ストーリー:ジャック・シェイファー AND ネッド・ベンソン
製作:ケヴィン・ファイギ,p.g.a.
製作総指揮:スカーレット・ヨハンソン

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)Marvel Studios 2021

公式サイト:https://marvel.disney.co.jp/

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Writer

しげる


ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

関連サイト
@gerusea
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