※本文にはネタバレがあります

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『ナイト・ドクター』第7話 レッテルや偏見はねのけ「堂々と生きてください」美月の言葉に涙
イラスト/AYAMI

「レッテル」がテーマ『ナイト・ドクター』第7話

月9『ナイト・ドクター』(フジテレビ 系 月曜よる9時〜)は夜間専門の緊急救命(ナイト・ドクター)に勤しむ若者たちの群像劇。夜に働いて、昼間、休んだり勉強したりする。時々、寮の屋上で仲間とコミュニケーションを図る。
みんなそれぞれ悩みを抱えている。第7話は、前回の第6話深澤新(岸優太)が自信をつけ波に乗り始めた様子とは反対に、朝倉美月(波瑠)に残念なことが起こる。

【前話レビュー】『ナイト・ドクター』深澤(岸優太)チキン卒業! 仲間の存在が力になり成長につながる

朝倉の元カレ・大輔(戸塚純貴)がデキ婚したことをメールで報告してきた。第1話の終わりに鉢合わせした女性との幸福そうな写真を見たときの朝倉の顔が秀逸だった。これをきっかけに朝倉は、誘われても頑として参加しようとしなかった合コン(ランチ会)にキャラ変して参加する。その時の「朝倉美月です」の可愛らしい言い方も見事だった。

引き立て要員として、高岡幸保(岡崎紗絵)に呼ばれたにもかかわらず一番モテてしまう朝倉だったが、「ナイト・ドクター」であることを堂々と明かすと、男性たちはたちまちさーっと引く。けっきょく、看護師の舞子(野呂佳代)だけに視線が集中。そのあからさまな態度を目の当たりにして高岡は憤慨し、自分の仕事を卑下する。

恋愛のみならず、仕事の面でも患者の保護者から、ナイト・ドクターよりも昼間のドクターのほうが信用できると治療を断られたものだから、いたたまれない。たしかに第1話でもナイト・ドクターは「二軍」と呼ばれていた。

「人はどうしたって最初は肩書や見てくれで相手をふるいにかけるものなの」と言う高岡。
指導医・本郷亨(沢村一樹)は、恋愛はさておき、仕事面におけるナイト・ドクターへの世間的な偏見(若い研修医が多いのではないか)を変えたいと考えているが、高岡は「そんなの理想論ですよね」と諦め気味。「自分たちが変わらない限り何も変わらないぞ」と本郷は諭すが……。

世間の勝手なレッテル

働く若者たちの様々な悩みを描く『ナイト・ドクター』の第7話のテーマは「レッテル」――肩書や見てくれでふるいにかけられることが世の常で、一度ついたレッテルはなかなか払拭できない。医者を偏見で見る患者の親、ホームレスだからと受け入れを敬遠される濱辺(彼が第1話で朝倉がデート中に処置したことで元カレと別れることになったきっかけの人)、合コンで公務員と嘘をつき、実は保育士だった赤松直人(佐伯大地)。誰もが、世間の勝手なレッテルに振り回され傷ついている。

それは「ナイトドクター」「ホームレス」「保育士」に限ったことではない。世間から「境界線を引かれる」(高岡)ことは枚挙にいとまない。すべては勝手な決めつけ(良くないものと考える)からもたらされる誤解である。ナイトドクター問題は本郷が日勤の医師だと嘘をついて手術すると親はすんなり受け入れるという皮肉。

赤松が罹った「りんご病」も子供がかかるものと思い込みがあるが、成人もかかることがわかる。やがて「隠しているだけじゃ何も変わらないんですよね」と高岡も気持ちを変えて、赤松を「自分の仕事を胸張って言えるようになるといいですよね」を自分にも言い聞かせるように励ます。



朝倉はホームレスの濱辺に「堂々と生きてください」と言う。自分が常に受け入れるからと。
ホームレスやナイト・ドクターを憐れみの目で見ることこそ問題なのである。


成瀬(田中圭)の最高の顔

晴れた空の下、桜庭(北村匠海)のアイデアでスイカ割に興じる5人。まさに風通しのいい関係が屋上で築かれていく。朝倉は4人のイメージが最初とは打って変わって良いところに気づけたと語る。年齢、キャリアが違う5人が名字を呼び捨てているのも、年齢、キャリアによる境界線を外しているのであろう。屋上から見上げる空には境界がない。

境界線を引かないといえば、深澤の料理。第6話では朝倉がそれを食し、7話は高岡が深澤の部屋に来て料理を作ってもらっている。女性キャラが料理を作らず、男性キャラが料理を当たり前に作っている。男性が料理してすごいでもなく、女性が料理をしないなんて情けないでもない。ただ、深澤が美味しそうな料理を作っている。それだけである。一応「なんで俺が」とぼやいてはいるが。
朝倉も高岡も女性は料理を作るものという偏見などまったく意に返さず、けろりと食事を作ってもらって食べている。

体が弱くみんなと同じように現場にいられない桜庭は桜場で自分のできることをやろうと考えている。成瀬暁人(田中圭)は後輩・里中(古舘佑太郎)に優秀なのにナイト・ドクター?とやはり偏見の視線にさらされ、でもそれをきっかけに脳外科医の道に向かうチャンスを得る。後輩に「え、あの噂の(ナイト・ドクター)?」「なんか意外です」と言われたときのリアクションに困る顔が最高であった。
(木俣冬)

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番組情報

フジテレビ 系
『ナイト・ドクター』
毎週月曜よる9時〜

出演:波瑠 田中圭 岸優太 岡崎紗絵 北村匠海
一ノ瀬 颯 野呂佳代 櫻井海音 梶原善 真矢ミキ 小野武彦 沢村一樹、ほか

脚本:大北はるか
音楽:得田真裕
プロデュース:野田悠介
演出:関野宗紀 澤田鎌作

制作著作:フジテレビ

番組サイト:https://www.fujitv.co.jp/NightDoctor/


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami
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