※本文にはネタバレがあります

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『ナイト・ドクター』第8話 働き方も多様化されていい。本郷が成瀬に刺激を与え、桜庭がいいこと言う
イラスト/AYAMI

「専門性」がテーマ『ナイト・ドクター』第8話

夜間専門の緊急救命(ナイト・ドクター)に勤しむ若者たちの群像劇『ナイト・ドクター』(フジテレビ 系 月曜よる9時〜)第8話は「専門性」がテーマ。「人生100年時代に専門性のない仕事を選ぶなんてリスクでしかないでしょ」と問題提議がなされる。

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いきなり「人生100年時代」をどう生きるかの話が浮上してきて驚いたが、国力が落ちて不景気な時代、20代ならあと80年、30代なら70年も先があると思うと途方もなく、早いうちからしっかり考えていかないとならないだろう。
堅実なナイト・ドクターの面々が悩みながら実体験を経て考えに至ったことは――。問題は真剣だったが、山と湖、自然いっぱいの中でのバーベキュー、屋上での流しそうめんと爽やかな場面もたくさんあって清々しかった。

成瀬暁人(田中圭)がなりたかった脳外科の道に転身するか悩んでいると、相変わらずおせっかいでうざい朝倉美月(波瑠)が成瀬の話を聞き、すぐさま高岡幸保(岡崎紗絵)深澤新(岸優太)に報告。これは一大事と騒ぎ、高岡が全力で引き留めようとする。

案の定「驚くほど口が軽いな」と成瀬にちくり言われてしまう朝倉だが、別に嫌われるふうではない。個人情報にうるさい現代に、朝倉の存在は、みんなもっとお互いのことをわかりあっていこうという感じである。

そんなとき、“なんでもできてカッコいい”と尊敬されてきた成瀬が手術をあきらめる出来事が起こる。専門外の脳の手術だったからで、そこで、ナイト・ドクターは「マルチな救急医」として「中途半端」な存在である問題が浮き上がってくる。余談だが、成瀬の腕の血管がめちゃめちゃ何本も浮き出ている。

そこで「人生100年時代に専門性のない仕事を選ぶなんてリスクでしかないでしょ」と桜庭(北村匠海)がクールに言う。

成瀬があきらめた手術は第7話に出てきた後輩・里中(古舘佑太郎)がさっさと引き継ぐ。第7話に続いてショックというか、いささかしょんぼりしたような顔になる成瀬。
里中が親切で感じがいいから余計に立ち場がない感じ。その所在なさは両手を前に組んだ仕草から伝わってくるようだった。

またしてもオペを途中で辞めてしまう成瀬

生きていく上で得意分野が必要である。深澤は妹・心美(原菜乃華)と彼女の彼の岡本勇馬(宮世琉弥)と朝倉とのダブルデートで自分の得意分野――アピールポイントを認識することになる。

心美が考えてくれたポイントその1:華麗なハンドルさばきは朝倉が運転してしまい発揮できない。ここはおもしろかった。その2:隠れ細マッチョも朝倉が活躍してしまう。3つ目の料理上手は確実かと思いきや……。ちょっとヘタレの深澤を演じている岸は他局の『24時間テレビ』のリレーマラソンで、激しそうな雨の中、最初の走者として頑張った頼もしい人物である。

専門性を持つべきと思いながらも、ひとつに決められないもので。深澤は心美のために心臓外科の専門性を身につけたいがナイト・ドクターの仕事にもやりがいを感じていた。

そんなとき、有名な料理人・安西が脳卒中で倒れ、諸事情からまたしても成瀬が手術を行うことになる。ところがまたしても途中でオペを辞めてしまう。
2回も途中で手術を辞めた成瀬にはもう後がないと思ったら――。



結果的に成瀬の手術中断は適切な判断で、手術を昼間の偉い先生に引き継ぐことができた。里中は「こんなにありがたいバトンありませんよ」と成瀬たちナイト・ドクターの的確な仕事に感謝を述べる。

この後輩、めちゃめちゃ礼儀ただしい。以前のドラマだったら後輩なのに鼻持ちならない態度を先輩にとって不愉快な展開になりそうなところであるが、昨今のドラマはそうならない。意地悪なのはセンター長・嘉島(梶原善)だけである。

里中に感謝されて廊下からはけていく成瀬のまぶしげに顔をあげる一瞬の表情を決めカットふうにしないで見逃しそうな瞬間にしている演出家の手腕を讃えたい。


屋上レクリエーション担当の桜庭がいいこと言う

ひと仕事終わり、流しそうめんでねぎらいあうナイト・ドクターの仲間たち。人生100年時代、専門職を見つけるのもいいし、やりたいことをひとつに絞ることはない、働き方が多様化されていいという結論に至る。大事なのはどんな仕事でもひたすら真面目に仕事に打ち込むことである。

桜庭を見よ。心臓に疾患があるためみんなと同じようには働けない。手術には遅れて来る。
代わりに流しそうめんの準備は万端(たぶん屋上レクリエーション担当だと思う)、「働き方が多様化されていい」と大事なことを言って締める。こういう人がいても全然いいのである。

「この時の私たちは間違いなく同じ場所で同じ方向を見つめていたんだ。日本の救急医療の未来を変えるために」とモノローグする朝倉。たしかに、流しそうめんが流れてくる同じ方向を見つめていた。

ナイト・ドクターたちの戦いはまだまだこれからだ、で最終回かと思ったら、心美の容態が変わって……。てっきりバーベキュー先で具合が悪くなる展開かと思ったらその後だった。

運命が彼らに用意した仕掛けがいよいよ動き出す。
(木俣冬)

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番組情報

フジテレビ 系
『ナイト・ドクター』
毎週月曜よる9時〜

出演:波瑠 田中圭 岸優太 岡崎紗絵 北村匠海
一ノ瀬 颯 野呂佳代 櫻井海音 梶原善 真矢ミキ 小野武彦 沢村一樹、ほか

脚本:大北はるか
音楽:得田真裕
プロデュース:野田悠介
演出:関野宗紀 澤田鎌作

制作著作:フジテレビ

番組サイト:https://www.fujitv.co.jp/NightDoctor/


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami
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