テレ朝が誇る戦隊ヒーロードラマ×ジャニーズJr.・美 少年=『ザ・ハイスクール ヒーローズ』最高
(c)2021 テレビ朝日・ジェイ・ストーム・東映

高校生たちの熱いドラマ『ザ・ハイスクール ヒーローズ』

親子で観ることができるオシドラサタデー『ザ・ハイスクール ヒーローズ』(テレビ朝日系 毎週土曜よる11:00~/以下ハイヒロ)は終わることが非常に惜しいドラマである。テレビ朝日で長い伝統を誇る戦隊ヒーロードラマの主人公にジャニーズJr.・美 少年を据えた最強といっていいような作品は8回という短期間で終了しないでいつまでも続いてくれればいいのにと思うほどなのだ。

真中大成(岩崎大昇)は亡き父・大志(関智一)が作ったヒーローに変身するアプリを使ってアカヒーローになり、学園にはびこる魔人と戦う。


学園の平和を守る「学園防衛部」を結成した大成の元に仲間が次々と集まって来る。アオヒーローこと滝川雄亮(那須雄登)が野球部から、ミドヒーローこと森村直哉(藤井直樹)がダンス部から、キヒーローこと土門龍平(佐藤龍我)がバスケ部から参加し、モモヒーローこと学生イラストレーターの桜井一嘉(金指一世)、そしてちょっと距離をとって協力するギンヒーローこと生徒会長の大浦飛馬(浮所飛貴)と個性的な面子がそろった。美 少年の6人は皆、きりっと端正な顔立ちで、まさにヒーローという感じである。

彼らの目的は魔人を倒すことだから、その首謀者にまでたどりついたら終わりが来るのは残念ながら仕方ないことで、最終回直前の第7回では魔人を操る者たちの全貌が明らかになっていく。魔人になるアプリがなぜヒーローになるアプリに似ているのか、その秘密を握っている者は意外な人物だった。この流れはヒーローものの王道と言ってもいいだろう。

テレ朝が誇る戦隊ヒーロードラマ×ジャニーズJr.・美 少年=『ザ・ハイスクール ヒーローズ』最高
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大志の母が出したお茶を飲むアカレンジャー

ヒーローものには名作がたくさんあるのでオマージュしやすい。美 少年の先輩である関ジャニ∞『エイトレンジャー』というオリジナルヒーローを作って、それは堤幸彦監督によって映画化もされた。これはこれでディテールにこだわった非常に出来のよいものであった。

さらに遡ると、先輩のV6・長野博『ウルトラマンティガ』(96〜97年)の主人公を演じていた。こちらはオマージュではなく、歴史あるウルトラマンのひとりである。『ハイヒロ』は戦隊ものを作ってきたテレビ朝日、東映による制作で、プロデューサーも脚本家も戦隊ものに関わってきた人物が手掛けている。正統派のオマージュである。


その象徴のように登場するのが70年代にテレ朝で放送された『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年〜77年)である。父が好きなヒーロー番組で、子供の時、大成も一緒に観て育ち、高校生になった今もこれを意識して「学園防衛部」活動を行っている。彼の前に現れる魔人たちの造形はゴレンジャーのオマージュだそうで、知っている人にはたまらないようだ。『ハイヒロ』がファミリー向けというのはこの点においてであり、ゴレンジャー世代の親と子供がコミュニケーションできるようになっている。

『ハイヒロ』でアカレンジャーは時々、ドラえもん(これまたテレビ朝日の重要コンテンツ)のように押入れから現れ、大成に助言する。謎の存在アカレンジャーは大成のイマジナリーフレンドかと思いきや、第7話で母・瑠璃子(中山美穂)も存在に気づいていたというエピソードが描かれ、SNSを沸かせた。母が出したお茶をちゃぶ台の前で飲むアカレンジャーはシュールで、くすっとなる。このようなちょっとしたエピソードがセンスよく、エンタメとしてよく出来ている。

また、それまで学園防衛部の顧問として大成たちを見守ってきた天利先生(戸次重幸)もまたゴレンジャーが大好きであることが伏線となって、意外な事実を大成に突きつけてくるところも戸次の演技も相まって盛り上がった。

テレ朝が誇る戦隊ヒーロードラマ×ジャニーズJr.・美 少年=『ザ・ハイスクール ヒーローズ』最高
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ネタバレになるが、天利はヒーローよりも悪に感情移入して、魔人になるアプリを作ったのは彼だったのだ。誰もがヒーローになれるわけではないという現実を吐露する天利。余談ながらこの回の演出家・及川拓郎が手掛け、戸次が出演していて、クイズショウを通して心の奥の闇があぶり出されていくサスペンスものの名作『ザ・クイズショウ』(08年)をちょっと思い出した。


長年作り続けられてきたヒーローものは勧善懲悪とは限らない。時に正義と悪のシンプルに切り分けられない問題を見つめることもある。悪に惹かれ、友人殺しという罪を犯した天利先生の存在によって、『ハイヒロ』も陰影が深くなった。



テレ朝が誇る戦隊ヒーロードラマ×ジャニーズJr.・美 少年=『ザ・ハイスクール ヒーローズ』最高
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ジェンダー問題も

『ハイヒロ』では正義と悪のみならず、ジェンダー問題も取り入れている。戦隊ものはたいてい5人のヒーローの中にひとり女性がいる。いわゆる「紅一点」というパターンで、女性はピンク色を担当することもお決まりである。ところが『ハイヒロ』ではヒーローの中に女性は存在せず、トランスジェンダーの桜井が「モモ」を担当している。男性ながら「モモ」を担当した桜井はそれによって自分を肯定されたと感じていることを言葉にする(第7話)。

第3話では森村の妹・花(箭内夢菜)がモモ候補だった。ヒーローになるには「何かを守りたい覚悟が必要」で、花はどうしてもモモになれない。代わりにモモになったのは桜井だった。

テレ朝が誇る戦隊ヒーロードラマ×ジャニーズJr.・美 少年=『ザ・ハイスクール ヒーローズ』最高
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第7話では、花が自分は防衛部に入れないと嘆くと、部員は5人に限定されているわけではないと言われて……。これをジェンダーに配慮していると見るか、けっきょく、女性はヒーローの頭数に入っていないのだから配慮されてないと見るか。
夢のない話をすれば、美 少年ありきの企画だから彼らをヒーローにしないと成立しないわけだが、この件についても親子で話し合える良いテーマであろう。

芯のしっかりしたドラマだから、このままずっと毎回、ネガティブな気持ちを持った人物が魔人化して悪さをして、それをヒーローたちが解決する1話完結ものをずっと続けていても楽しく観られたと思う。一回完結した後、いつか続編を作ってほしい。

筆者が好きだったのは、変身後、主人公たちは制服風のジャケットのような戦闘スーツを身に着けているが、普段は夏服の白いシャツを着ていて、その白がアカでもアオでもミドでもキでもモモでも銀でもなく、ただただまぶしいことだった。
(木俣冬)

テレ朝が誇る戦隊ヒーロードラマ×ジャニーズJr.・美 少年=『ザ・ハイスクール ヒーローズ』最高
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ドラマ情報

テレビ朝日系
オシドラサタデー『ザ・ハイスクール ヒーローズ』
最終話:9月18日(土)よる11:00〜

出演:美 少年
岩崎大昇 佐藤龍我 那須雄登 藤井直樹 金指一世 浮所飛貴
箭内夢菜・長田成哉 関智一・戸次重幸・中山美穂 柳葉敏郎 

脚本:高橋悠也 吉高寿男 筧昌也
監督:及川拓郎 竹園元 筧昌也
アクション監督:栗田政明(倉田プロモーション)
音楽:沢田完
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日) 原藤一輝(ジェイ・ストーム) 塚田英明(東映)
プロデューサー:服部宣之(テレビ朝日) 井上千尋(テレビ朝日) 浜田壮瑛(テレビ朝日) 大森敬仁(東映)
制作:テレビ朝日 ジェイ・ストーム 東映

(c)2021 テレビ朝日・ジェイ・ストーム・東映

公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/the_highschoolheroes/
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