2024年のゴールデンウィーク(以下GW)の人出は、かなり変則的になりそうだ。暦通りでいくと、4月27日~29日の3連休の後、3日間空いて、5月3日の憲法記念日から、6日の子供の日の振替休日まで飛び石の4連休となるが、4月30日~5月2日も3日間の休暇をとって、最大10連休にする人も多いと予想されている。


 JTBが4月4日に発表した2024年GWの旅行動向の見通しによると、国内旅行の旅行者数は、株価高騰の好条件がある一方で、物価高騰の影響もあり前年並みと予想しており、平均旅行費用は物価高で上昇傾向にあるとみている。また、行先は前年に比べ分散傾向にあるが、近場がやや多くなりそうだ。海外旅行に関しては、コロナ禍の反動もあり、前年比167.7%となる52万人と予想しているものの、高い旅行意欲に反して、円安や旅行費用の高騰が大きく影響し、アジアを中心とした近場への渡航に人気が集中すると見ている。


 それでも、どこに出掛けても混雑してしまうのがGWだ。特にテーマパークやレジャー施設などは、インバウンド観光客も加わって、人で溢れかえることだろう。近場のショッピングモールやアウトレットモールなども同様で、家族連れを中心に大混雑や大渋滞が予想される。

そこでお勧めしたいのが、近場にある私立の美術館だ。


 例えば、関西にある「白鶴美術館」などがお勧めだ。同館は、灘五郷の老舗酒蔵・白鶴酒造の私設美術館で、昭和6 (1931)年に白鶴酒造七代嘉納治兵衛の寄贈品五百点をもとに設立されて以来、東洋古美術の優品を収蔵する美術館として、春・秋二回の展示を軸に活動を続けており、今年でちょうど開館90周年を迎える。現在開催中の「開館九〇周年記念展」では、同館が所蔵する中国美術コレクションより50点の名品を展示している。殷時代に作られた祭祀用の盛酒器「饕餮夔龍文方卣(とうてつきりゅうもんほうゆう)」や、整然と反復される唐草文と個々に異なる動植物文の文様帯が印象的な、唐時代の鍍金龍池鴛鴦双魚文銀洗(ときんりゅうちえんおうそうぎょもんぎんせん)などの12の重要文化財をはじめ、仏教美術など、いずれも他では見られない貴重な作品ばかりだ。ぜひ、この機会に足を運んで、圧巻の造形美を鑑賞してほしい。


 関東では、東京都港区虎ノ門の「大倉集古館」がある。同館は、明治・大正時代の実業家・大倉喜八郎が自邸内に開館した大倉美術館を前身とし、大正6年(1917)に財団法人化された、現存する日本最古の私立美術館だ。館内には、喜八郎が生涯をかけて蒐集した日本・東洋各地域の古美術品と、跡を継いだ嫡子喜七郎が蒐集した日本の近代絵画などを中心に、国宝3件、重要文化財13件及び重要美術品44件を含む美術品約2500件を収蔵されている。現在、6月9日までの期間で特別展「浮世絵の別嬪(べっぴん)さん―歌麿、北斎が描いた春画とともに」が開催中だ。この特別展では、浮世絵の中でも、版画ではなく、絵画作品である肉筆浮世絵に焦点をあて、17世紀の初期風俗画と岩佐又兵衛の作品から、菱川師宣、喜多川歌麿や葛飾北斎など、現代でも人気の浮世絵師の作品を経て、幕末までをたどっている。特筆すべきは新発見された喜多川歌麿の肉筆美人画「蛍狩り美人図」(絹本著色 個人蔵)で、こちらは本邦初公開となっている。


 これら私立の美術館は、所蔵品や展示品もさることながら、美術館の建物自体や庭なども見どころだ。今年のGWは、歴史ある美しい建物の中で、黄金にも勝るとも劣らない美術品を堪能してはいかがだろうか。(編集担当:藤原伊織)