2026年2月5日、トヨタ自動車が発表した通期営業利益3.8兆円という上方修正は、世界の自動車産業における「トヨタの独走」を決定づけるものとなった。この数字は、単なる円安の恩恵ではない。

数年前まで「EV(電気自動車)シフトへの遅れ」と断じられていたトヨタのマルチパスウェイ(全方位)戦略が、世界的なEV需要の減速という劇的な市場変化によって、正解へと「逆転」した結果である。


 トヨタの強さは、国内外の競合他社と比較するとより鮮明になる。欧州の雄、フォルクスワーゲン(VW)やメルセデス・ベンツが、性急なEVシフトの反動で在庫過剰と開発費増大に苦しみ、戦略の修正(ハイブリッド回帰)を余儀なくされる中、トヨタは安定したハイブリッド車(HV)の供給能力でその需要を独占した。特に北米市場では、環境規制の揺り戻しやトランプ政権による補助金撤廃の動きを背景に、実用性に勝るトヨタのHVが圧倒的な支持を集めている。


 一方で、世界を席巻する中国のBYDとの対比も興味深い。世界市場で見ればBEVの覇者であるBYDだが、日本国内市場においては、その存在感は極めて限定的だ。日本自動車輸入組合(JAIA)の統計によれば、BYDのシェアは輸入車全体の数パーセントに留まる。日本の消費者は、車両価格の安さよりも、長年培われた信頼性や、売却時の価格(リセールバリュー)の安定性を重視する傾向が強く、全国を網羅するサービス網を持つトヨタに対し、BYDは未だ心理的・実務的な障壁を崩せていない。


 しかし、この3.8兆円という利益は、トヨタにとっての「最終勝利」ではない。日産自動車が2028年の実用化を目指す「全固体電池」の試作ラインを公開するなど、次世代技術の競争は水面下で激化している。3.8兆円という巨額の利益は、単なる「利益」ではなく、次世代の覇権を争う電池技術の量産化や、自動運転ソフトウェアの高度化に向けた、膨大な研究開発費を賄うための不可欠な原資としての性格を帯びている。技術革新のスピードが加速する中、この資金をいかに迅速かつ的確に次なる成長分野へ投じられるかが、トヨタの真の持続可能性を左右することになる。


 トヨタ自動車が発表した3.8兆円という営業利益は、一企業の堅実な経営努力を示すとともに、日本経済の底力を改めて印象づける象徴的な数字となったのは間違いない。この歴史的な水準の利益が、今後どのような形で日本の基幹産業全体へ、そしてサプライチェーンを構成する多くの企業へと広がっていくのかを期待したい。(編集担当:エコノミックニュース編集部)

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