実店舗における書籍の販売取り扱いは、委託販売という形が主流であった。書店は取次という問屋を仲介して本を仕入れ、店舗で売れなければ問屋に返品する。
委託販売には例外もある。岩波書店から出版されている本は、書店が委託ではなく買い取って販売を行う、買い切りという形態が導入されている。本を取次や出版社に返品させず確実に売るためであるという。返品ができないため、買い切りで仕入れた本を確実に売り切ることができるとは限らない小規模な書店などでは、取り扱いができないなどの問題もある。
委託販売をしている限り、書店とすれば売れなかった本は取次や出版社に返品をすれば売り上げとしてのマイナスはでない。しかし、買い切りの本は確実な販売が見込めないのであれば取り扱うことができず、購買者のニーズに応えられない書店になってしまう可能性もある。
しかし、本のネット通販によってこの状況が変化しつつある。インターネットで本を注文することに関しては、書店に足を運ばなくていいことや予約すれば発売日当日に確実に入手できるなどの利便性がある。それだけでなく、本のネット通販が盛んになったことによって、従来の書店、取次、出版社という流通経路にも変化があらわれた。
もともとAmazonは、サイトでの欠品数をなくしたいという考えから、出版社との直接取引を増やしていた。これは売り場面積が限られることもあって売れない本を返品する必要のある実店舗型書店では難しい。買い切りに移行することで、それまでの再販制度という価格維持システムが崩れる可能性もある。TSUTAYAは買切りに移行したことによる値引き販売は行わないとしているが、Amazonはポイント還元という形で実質的な値引きをはじめている。この流れにより、問屋を介した書籍の委託販売は縮小するおそれがある。普段消費者の目に見えない流通に関してだけでなく、販売価格の設定や品揃えといった目に見える形での変化も今後あらわれてくる可能性が高まるだろう。(編集担当:久保田雄城)