3月8日に開催された『R-1グランプリ2021』の決勝に進出し、2020年12月14日に放送された、『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ)では、見事4代目女王に輝き、一躍時の人となった、吉住。ぼる塾やゆりやんレトリィバァなどの人気芸人を破り、“一番面白い女性芸人”の称号を得た今、そもそもなぜ芸人になったのか、過去を振り返ってもらった。
(前中後編の中編)

【前編はこちら】「THE W」優勝・吉住が明かす急増したバラエティ番組での苦悩「食レポへの苦手意識が…」

【写真】ピン芸人としてブレイク中の吉住

──そもそも、お笑いの道に進んだきっかけを教えてください。

吉住 ずっとお笑いに興味があったわけではなかったんですよ。塾に行って受験勉強して、中学高校はテニス部に入って、キャプテンをやったこともありました。普通の人生でしたね。ただ、高校がけっこう、学区内ではまあまあ偏差値の高いところで、私はそこでちょっと落ちこぼれたんです。全然勉強してないのにテストで100点を取るエリートが周りにたくさんいるような世界で、「ムリムリ、脳の作りが違う」って感じでした。

いい大学に入っていいところに就職して、というモチベーションだけで私はがむしゃらに勉強できなかった。自分はこっち(勉強)の道では勝てないから、別の好きなもの、頑張れることで生きていった方がいいんじゃないかなって思って。

──挫折して、残ったのがお笑いの道だった?

吉住 その頃、没頭しているような趣味もなく、一番興味があったのがコントだったという感じですね。

──お笑い全般ではなく、コントというのも珍しいですね。

吉住 兄がお笑い番組が好きだった影響で見るようにはなっていたんですが、私は漫才のテンポについていけなかったんです。でも、ある時に東京03さんが出ていて、初めて「こんなに面白いんだ! これはコントっていうのか」って思ったんです。
高2か、高3のときでしたね。それで、両親に高校卒業の時点で「お笑いの養成所に行きたいんだよね」という話をしまして。

──進学校に通う娘に「コントに興味がある」なんて言われて、親御さんも驚いたんじゃないですか。

吉住 「あんたそういうタイプじゃないでしょ!?」って感じでしたね。根っから明るい性格ではないですから(笑)。結局、「一応、大学は行ってくれ」という話になり、じゃあ4年間で養成所代とか上京する費用とか、もろもろのお金を貯めようということで、大学時代はバイトばっかりしてました。

──大学で、アマチュアでコンビを組んだりとかは?

吉住 一切してないです。芸人に「なりたい」とも言ってなかったですね。当時の私の周りにはそういう人もいなかったし、1人で夢追い人みたいなことを言うっていうのはちょっと恥ずかしかったですね。

──それでも、想いを秘めて持続させるというのはなかなかできないことだと思います。

吉住 今にして思えば、意地になっていた部分はあるかも。親に対して、「私の気持ちは確固たるものなんだ」って、見せたかった気はします。


──北九州から上京して人力舎の養成所を選んだのは、東京03さんのコントに衝撃を受けたからですか?

吉住 はい。それに、当時私が好きだったのが、ラバーガールさんとキングオブコメディさんで。調べたら全員人力舎だったんです。「好きな3組が人力舎なんだから間違いないな」って。

──養成所に通ったのは大学卒業後の1年間?

吉住 卒業時に事務所に所属できなくて、結局2年行きました。1年目が終わって当時の相方の子には「一緒にフリーでやらない?」って誘ってもらったんですけど、私は人力舎に所属したかったし、フリーだと定期的なライブが無かったり、オーディションもなかなか受けられないから気持ちが続かないなと思って。

もう1年で芽が出なかったら辞めようと、ちょっと泣きながら親に「もう1年頑張らせてもらっていいですか」って電話しました(笑)。2年やって別の女性コンビで事務所に所属することができたけど、それも1年ちょっとで解散して、そこからピンで活動しています。

──またコンビを組もうとは思わなかったんですか?

吉住 本当はそのつもりでした。早く結果を出したくて焦っていたので。でも、同じ事務所の先輩のトンツカタンのお抹茶(菅原)さんから「吉住、ここで組んでそのコンビがダメだったら辞めちゃうでしょ? だからもうちょっと落ち着いて考えた方がいいよ」と言われて。

私もその自覚はあったので、とりあえず、いったんピンで舞台に立つことにしたんです。
そしたら意外と反応が良くて。ネタ見せで引っ掛かってテレビにも出られたり。本当に運が良かったです。

──どんな下積み時代でしたか?

吉住 そうですね……売れていなくても、楽しいは楽しいんですよ。辛いことや悔しいことはあるし、やめようと思ったことも何回もあるけど、ウケたらうれしいし、お笑いが好きな仲間と「どうやったら売れるんだろう」と試行錯誤しながら夢を語り合えるのがすごく楽しかったです。

こんなに自分の気持ちと向き合いながらやっていける職業はなかなかないし、完全に自分の能力が問われるところもやりがいがある。そういう意味では「普通の生活に戻るのはちょっともう無理だな」って、なんだかんだ続けてきた、という感じです。

【後編はこちら】「THE W」優勝・吉住が語る“誰も傷つけない笑い”「やりづらいと思うことも無いとは言えない」

▽吉住(よしずみ)
1989年11月12日生まれ。福岡県北九州市出身。『女芸人No.1決定戦THE W』2020優勝。ドラマチックなで独特な1人コントが持ち味。映画『私をくいとめて』に本人役で登場している。

Twitter:@YOSHIZUMI_2015
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