【写真】HKT48 『君とどこかへ行きたい』MV場面カット
今作は、同グループにとって初となるW選抜システムを採用。
JR九州が全面協力したMVも大きな見どころとなっているが、筆者は今作の歌詞に注目していた。というのも、昨年4月に発売された13thシングル『3-2』が、興味深い内容だったからだ。
大まかに説明するならば、『3-2』は三角関係の話だ。きっと仲が良かった3人(男性2人、女性1人)だったのだろう。しかし、親友は女性に告白をする。この告白は功を奏し、2人は付き合うことになる。主人公は先を越された。勇気を出して告白した親友と彼女のことが幸せそうに見える。主人公は取り残され、孤独を感じている――。
昨年、行われた取材で何人かのメンバーに「この歌詞をどう思うか?」と問うたところ、「切ない」や「自分だったら……」といった感想が聞かれた。主人公に感情移入するならば、そういった感想になるだろう。何も間違ってはいない。だが、秋元氏がそのような表面的な歌詞を表題曲に持ってくるとは思えない。
そこで、近年の秋元氏の作詞法を紐解いた。例えば、HKT48の『キスは待つしかないのでしょうか?』(2017年)。タイトルからもわかる通り、これも表面上は恋愛の曲だ。だが、秋元氏が歌詞に込めた思いは、「待つ」という消極的な態度ではなく、ほしいものは自分から行動して掴めというものだろう。タイトルに反語表現を用いているのが、そう読み解ける理由だ。
NMB48の『高嶺の林檎』(2014年)にも同じメッセージが込められている。
このように、秋元氏は若者へのメッセージを歌詞に込めつつ、その時のグループの状態を歌詞にする傾向がある。「待っているばかりではなく、行動しなさい。少々の無茶があってもいい。若者とはそういうものだ。そうでなければグループは活性化しないし、人生は拓けない」というのが秋元氏の人生観だ(その一方で、「無理をしなくてもいい」という歌詞も散見されるのだが)。
昨年春のHKT48の状況を考えてみる。『3-2』は、同グループの大黒柱・指原莉乃が卒業してから初となるシングルだった。宮脇咲良と矢吹奈子は期間限定ながらIZ*ONEの活動に集中していた。指原はテレビで見ない日はないほどの活躍ぶりだし、海を渡った宮脇と矢吹は韓国で脚光を浴びていた。
そんな状況を『3-2』に落とし込んでみる。幸せそうな存在が指原と宮脇・矢吹で、柱だったメンバーがいなくなり、孤独を感じているのがHKT48――。そう思えてならない。だとすると、メンバーは『3-2』を、孤独を打ち払うような決意で歌わなければならない。MV撮影の前に、振り付け師のSeishiro氏はメンバーを集めて、「強い女性になりなさい」とアドバイスを送っているが、歌詞に込められたメッセージを汲み取ったのだろう。
では、今回の『君とどこかへ行きたい』の歌詞にはどんな意味があるのか。主人公(男性)には意中の存在がいる。そんな人と泊りがけの旅行を計画している。実際に行動したかどうかは書かれていない。だが、「友達から恋人」へと関係を変化させようと、あれこれ模索している。前作と打って変わって前向きだし、曲調もポップだ。
HKT48は昨年11月に専用劇場がオープンして以降、積極的な動きを見せている。同月、結成9周年を迎え、10年目に突入した。昨年12月からはレギュラー番組『HKTのピシャっと48』(テレビ西日本)がスタートした。今年2月はリモート演劇に挑戦した。シングルの発売も決まった。コンサートの開催もいくつか決まっている。前途が拓けてきた。グループの状況と、新曲の主人公の心情は符合している。『君とどこかへ行きたい』はHKT48の現状を映す鏡だ。
漠然とではあるものの、未来が見えてきたHKT48は、指原が在籍していた2年前とはすっかり別のグループになろうとしている。
コロナ禍により先行きは不透明ではある。宮脇と矢吹の今後の去就も不明だ。
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