お笑いトリオ四千頭身の後藤拓実の初エッセイ集『これこそが後藤』(講談社)が話題だ。自身の生い立ちや家族、そしてお笑いについて綴ったこのエッセイ、独特な着眼点と意外な展開、そして絶妙なスピード感は文章でも顕在で、ネタを見ているかのように思わず笑わせられる。
後藤にエッセイでも話題にしている学生時代の話や友達の話、相方やネタ作りについて聞いた。(前中後編の後編)

【写真】どこかぎこちない? 笑顔でインタビューに答える後藤拓実

――芸人になった経緯もお聞きしたいんですが、どうして「ワタナベコメディスクール」に通おうと思ったんですか?

後藤 お笑いはずっと好きでしたが、きっかけは自分からではなく、中学時代のお友達が勝手に願書を送ったからなんです。僕は高校を卒業したらバイトしようと思っていたんですよ。それをお友達に伝えたら、「養成所に応募しといたから」って。

――それに素直に従って入学したんですか?

後藤 そうです。ただ入学するにはオーディションがあって、お友達にいじられての応募だったので、そこで行かないのもかっこ悪いなと思ったんです。かと言ってテンションを上げるでもなく、今のままのテンションでオーディションに行ったら、みんなから「いいね」ってベタ褒めされて、それを真に受けちゃったんですよね。今考えると養成所に入れたいから褒めるに決まっているんですよ。それに気付いていれば、お笑いを始めることもなかったかもしれません。

――どうして友達はワタナベコメディスクールに応募したんですか?

後藤 友達に「好きな芸人って誰?」と聞かれるたびに、「あばれる君」って答えていたからワタナベだったんです。そこで「パンサー」って答えてたら吉本だったと思います。

――家族は後藤さんがお笑いの道に進むことに反対はしなかったんですか?

後藤 ビックリはしてましたけど反対はされなかったです。
昔からお笑い番組が好きで、よく観ていましたからね。それで「あばれる君がいる事務所と一緒の養成所なんだけど」って言って。

――半ばお笑いの世界は流されて入ったようなものですが、高校時代に将来の夢はなかったんですか?

後藤 高校時代は学校に友達が1人もいなくて、人生終わったなと思ってたんで夢もなかったです。進路を決める上で高校って大事じゃないですか。でも僕の通っていた高校は偏差値の低いヤンキー校だったので、指定校推薦の大学も知れているんですよ。実は僕、指定校推薦の枠をもらっていたんですけど、養成所に行くっていうことで、その枠をスルーさせていただきました。そこは悪いことをしたなって反省しています。

――他にやりたい仕事もなかったんですか?

後藤 林業はやりたかったです。『WOOD JOB!~神去なあなあ日常~』(‘14)って映画を観て、いいなぁと思って。本当はアルバイトしながら緑の教室みたいなところに1か月通って、いずれは林業に携わろうと思っていたんですけど、今こうして講談社の最上階で取材を受けていると、どうしてこんなことになったんだろうって我ながらびっくりします。

――きっかけは自分発ではないですけど、芸人としては順調にキャリアを重ねていますよね。

後藤 林業やりたいなと思いながらやってたんで欲がなかったんでしょうね。


――今でも林業をやってみたいですか?

後藤 今はもういいですかね。

――「冠番組を持って天下を獲りたい!」みたいな野望はあるんですか?

後藤 そうじゃない感じでここまで来られてるんで、ちょっと今後のハンドルの動かし方が難しいというか……。

――過去にバラエティの司会進行を務めたこともありますし、今後、後藤さんが仕切るポジションになっていく可能性も十分ありますよね。

後藤 そうなった日のために、映画とかいっぱい観てます。『ハルク』(03)なんてよかったですよ。強い奴はかっこいいなって。

――『M-1グランプリ』などの賞レースはいかがですか?

後藤 そこが一番頑張りたいところではあるんですけど……。僕らは何にも結果を出してないので、決勝には行っておきたいかな。やっぱ、そのほうがかっこいいですからね。

【前編】四千頭身・後藤が語るトリオ漫才「3人になったのは断れなくて、今でも2人の方がネタは書きやすい」はこちらから

【中編】四千頭身・後藤が語る友達「地元の奴らに“変わったな”って思われるのが嫌なんです」はこちらから
▽『これこそが後藤』(講談社)
四千頭身・後藤拓実初のエッセイ集。テーマは「移動中後藤」「早起き後藤」など身の回りのことや、「小学生後藤」「三茶後藤」など生い立ちや住まいのこと、「第七世代後藤」や「後藤が好きだったお笑い」などお笑いのことまで多岐にわたる。俳優のムロツヨシ作家の武田綾乃との対談も収録されている。
お母様・後藤照恵さんによる推薦文にも注目。
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