【写真】新作エッセイが大ヒット中のハライチ・岩井勇気
──『どうやら僕の日常生活はまちがっている』を拝読させていただきましたが、映画を観るのにそれまで未見の『寅さん』をわざわざ選んだり、謎のセルフ・ラブ・ヨガ教室にひとりで行ったり……、めちゃめちゃアクティブに動かれていますよね。
岩井 そうっすね。単純にやんないと何にも生まれないですし、基本、文句はやってから言おうと思ってるんで(笑)。それに、もともと休むのもあんまり好きじゃないし、寝るのもそんなに好きじゃない。できることなら、寝なくていい身体になりたいくらいですからね。
──ボーッとする時間があるなら、何かをして過ごしたい、と。
岩井 何もしないのは、苦手ですね。このあいだまで「何日か休み欲しいなぁ」とか思っていたんですけど、よくよく考えたら諸々の仕事を片づけるために休みが欲しいってだけで、本当の意味での“休む日”が欲しかったわけでは全然なくて。
以前仕事でハワイに行ったときも、けっこういいホテルに部屋を取ってもらったんですけど、昼間の空き時間に窓開けて、海見て、うわーってなりながらゴロゴロして、「どうやらこれがハワイの過ごし方のいいところらしい」ってひとしきりやったら、やっぱりすぐに「合ってないな」って思いました。初めてなのに楽しくないわ、帰りたいなって(笑)。
──となると、芸人さんの多くが時間を持て余したであろう昨年のステイホーム期間も、岩井さん自身はとくに苦もなく?
岩井 することないな、とはまったく思わなかったですね。
──なんでまた、ヌンチャクを(笑)?
岩井 あの時期って、芸人たちがみんな一斉に筋トレし出したり、ギター始めたりとかしてたんで、それがちょっと嫌だなって。別に逆張りしてるわけじゃないんですけど、みんなが一斉に同じことやり出すのって、なんか怖いじゃないですか。何にも思いついてないからって、とりあえず筋トレやって急にムキムキになるのはワケわかんないし、思考停止だなって。
でもまぁ、なんでも仕事になっちゃうのが芸人の世界なんで。実際、このあいだもTOKIOさんの番組に出て、ヌンチャク披露しましたしね。あのTOKIOさんの前でヌンチャクを披露するって、自粛期間にヌンチャクをやってた結果としては最高峰じゃないですか(笑)?もちろん、ヘンな感じにはなりましたけど、俺としてはそれでいい。別に「おぉ!」って言われたいがためにやってたわけじゃないですしね。
──「芸人たちがみんな一斉に」というところでは、YouTubeチャンネルの開設もこのコロナ禍で一気に進みましたよね。
岩井 多かったですね。
──ただ、流行りに乗っかるというのは一概に悪いことでもないですよね。
岩井 いやまぁ、そのほうが受け入れられやすいからそうしてるっていうのもわかるんですけど、芸人界隈なんて俺みたいな感じで見てるやつもいっぱいいるのに、恥ずかしくないのかな、とは思いますよね。なんて言うんだろう。芸人からの評価は別に気にしないんだ、やっぱお金が欲しいんだなぁ、って(笑)。
──ということは、岩井さんの行動原理としても「これ、仕事になるな」「儲かりそう」みたいな部分が先に来ることはないと?
岩井 今回の本とかも全部そうですけど、基本的には自分のやりたいことをやって、後々考えたときに「これ面白かったなぁ」ってことを書いたり、しゃべったりしてるだけなんで、その時点では何にも考えてないですね。芸人がしゃべってるのとか観てても、たまにわかるときあるじゃないですか。「あ、こいつ、エピソードトーク作るためにやってんな」って。あれ、好きじゃないんですよね。
(取材・文/鈴木長月)
▽岩井勇気
1986年、埼玉県生まれ。幼稚園からの幼なじみだった澤部佑と、お笑いコンビ『ハライチ』を結成し、2006年にデビュー。09年の第9回 M-1グランプリで決勝進出を果たし、一躍人気者となる。近年は『ゴッドタン』(テレビ東京)の“腐り芸人セラピー”や“マジ歌選手権”でみせる毒舌ぶりで脚光をあび、エッセイの執筆の他、ゲームの原作、プロデュースや漫画原作など、サブカル分野でも精力的に活躍中。
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