【写真】「和田彩花とオムニバス / 私的礼賛-Live-」ライブの模様【11点】
LEDキャンドルライトやフィラメント電球の温かい光が点々とする会場に、和田とバンドメンバーが登場すると観客が拍手を送る。彼女たちが1曲目に披露したのは「エピローグ」。ループするアコースティックギターの音色からバンドサウンドが導かれ、和田は生命の誕生を想起させる歌詞を優しいボーカルで歌っていく。続けて彼女は、ピアノ、ギター、サックス、ビートが絡み合う「空を遮る首都高速」を歌唱。都市で生きる思いをグルーヴ感あふれるサウンドで届けた。
今回のライブから、和田のライブ活動の名義は“和田彩花とオムニバス”となった。バンドメンバーを表す“オムニバス”というワードからは、仲間たちと自由なスタイルで音楽活動をしていきたいという意思が読み取れる。この日のメンバーは、バンマスの劔樹人(B / あらかじめ決められた恋人たちへ)、オータケコーハン(G / あらかじめ決められた恋人たちへ, LAGITAGIDA etc.)、楢原英介(Violin, Key / VOLA & THE ORIENTAL MACHINE)、U(Dr / ソロアーティスト、コレサワなどのサポートメンバー)、そして6月からバンドに加わったハラナツコ(Sax, Flute / 折坂悠太、LARNERSなどで活動)という編成。
彼女たちが次に披露したのは「mama」。
和田は「目の前で木の葉が落ちた」という詩の朗読を行い「スターチス」を歌唱。別れ間際の心情を、ミディアムポップなサウンドで歌っていく。穏やかなメロディと跳ねるようなリズム感が絶妙な「ゆりかご」、ピアノのリフレインから徐々に広がりを見せる「#15」と、彼女は次々と楽曲を聴かせていく。

「こだわりの紅」という短い詩から、和田はソロとして最初に発表したフランス語詞の楽曲「Une idole」を歌唱する。初期に披露していた頃とライブアレンジはかなり変化しており、バンドの一体感、力強さが強烈に感じられるものとなっていた。2019年の8月にソロになりここまで約2年以上活動してきた、彼女の音楽表現の拡張を改めて実感できた。
ライブは、MCを挟むことなく色とりどりのライティングとともに続々と進んでいく。ファンキーなイントロからスタートする「みやしたぱーく」は、アシッドジャズフレイバーのナンバー。和田の伸びやかなボーカルとスリリングな演奏の突き抜け感はとても痛快。
「ホットラテ」は、エレクトリックピアノの音色と温かいメロディが響く楽曲。人それぞれの違いや幸せを肯定する歌詞が、4つ打ちのビート、サックス、ノイジーなギターが層になってループしていくサウンドに乗って心に深く刺さるように伝わってきた。
トラッド感とマーチング風のリズムが凛とした空気を醸し出す「For me and you」が届けられる。真の感情をさらけ出すことの怖さ、それをも受け止める想い、大きな意味での愛情が伝わる歌が、力強さと優しさが交差するサウンドとともにパワフルに会場に響いた。
“1234”のカウントから始まったのは爽やかなメロディとキレのいいビートが響く「私的礼讃」。歌詞は、ただ大勢の人と群れることや、ただ多数派の意見に流されることへ疑問符を投げかけるストレートなもの。爽快ですらあるサウンドは、自分の道を行く晴れやかなマインドを映し出しているかのようにも感じられた。
そして、ラストチューンは「パターン」が披露される。彼女たちは朝の始まりと恋愛の始まりを鮮やかなメロディとタイトなリズムで伝え、演奏を終えると、和田の「ありがとうございました」の言葉に観客は大きな拍手を送った。和田とバンドメンバーがステージを去ると、会場はLEDキャンドルライトの光のみになり、カセットテープに録音された和田の朗読が流される。テープの声が終わり、明るくなった会場に観客の拍手がわき起こってライブは終了となった。
アルバム『私的礼讃』というタイトルには、人それぞれの幸せを褒め称えたいという思いが込められているという。つまりここで言う“私”という言葉は和田だけでなく、全ての人たちと捉えていい。様々な楽曲を通じて全ての人の幸せを祈る。
11月23日のアルバム配信リリース日当日には、新代田FEVERでワンマンライブも開催される。この日の『私的礼賛-Live-』が今までのまとめ的な内容、より深い表現を見せるライブが行われるそうだ。音源でもライブでもブレることのない音楽を伝える和田彩花。彼女のこれからの活動にぜひとも注目してほしい。

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