「なんで私のことを落としたんですか!」安田大サーカスクロちゃんが主催するアイドルフェス「クロフェス」でそうクロちゃんに食って掛かったアイドルがいる。アップアップガールズ(仮)・工藤菫だ。


【写真】クロちゃんに掴みかかる工藤菫、ほか対談中の写真【10点】

二人には浅からぬ因縁がある。実は彼女、『水曜日のダウンタウン』(TBS)で放送された豆柴の大群のオーディションに参加しており、当時プロデューサーのクロちゃんに落とされた過去を持つのだ。「落とした側」と「落ちた側」による異例の対談。中編では、クロちゃんが番組のガチすぎる裏側を語ります。

【前編はこちら】『水ダウ』クロちゃんに選ばれなかったアイドルが異例の噛み付き対談「なんで落としたんですか!」

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──最終的に豆柴の大群は5人でデビューしますが、カエデ・フェニックスを除く合格した4人についてはどのように見ていたんですか?

工藤 ハナエ(・モンスター)さんとは受験のチーム分けが一緒だったこともあり、結構お話したんです。というかハナエさんってWACKの研修生としてすでに活躍していたから、WACK好きの私からすると「あのハナエさん?」って驚きがあったんですね。当然、受かると思っていましたし。

クロちゃん それは結構みんな言うんだよ。なにしろハナエに対しては全員が敬語で接していたという話だしさ。最年少かもしれないけど、WACKのキャリア的には一番上ということになるので。ただ勘違いしないでほしいのは、別にWACKの研修生であろうがなかろうが、俺が落とそうと思えばハナエだって落としていたからね。(WACK代表)渡辺淳之介さんや番組スタッフに気を遣うとか、そういった忖度は一切なかった。


工藤 やっぱりそうだったんですね……。

クロちゃん だから逆に「俺が全責任を負わなくちゃいけないの?」っていうプレッシャーがあったし、こっちもこっちで真剣勝負だったよ。まだ年齢的に若い子たちの進路を自分が決めるわけだし。最後にカエデを落としたことも含めて決めたのはすべて俺。全部ガチ。本当に文字通りプロデューサーとして君臨していたんだから。

工藤 MONSTER IDOLは、あまりにも展開がドラマチックだったじゃないですか。こっちは落ちている立場だから、「これは絶対ヤラセなんだ」「しょせんテレビのバラエティだしな」って何度も何度も自分に言い聞かせながら見ていたんです。自分も出演したからガチだってわかっているくせに、ガチだとどこかで認めたくなくて。

クロちゃん それで言うと、アイカ(・ザ・スパイ)に一次審査合格のカードをすぐに渡したのは、1つのキーポイントだったの。

工藤 どういうことですか?

クロちゃん 実は俺も少し疑っていたところがあるんだよね。WACKや『水曜日のダウンタウン』スタッフの思惑でテレビ的な演出が入るとしたら、相談なくアイカにすぐ合格カードを渡したときに、「ちょっと早いですよ!待ってくださいよ!」ってストップかかるんじゃないかと考えたわけ。
今だから言うけど、本当に思い通りにできるのか、スタッフの介入があるのかを確認するためにも試したという面は正直かなりあった。

工藤 そう考えると、改めて『水曜日のダウンタウン』って恐ろしい番組ですね。結論としては完全にガチなんですから。一次脱落でモヤモヤしたのは、自分が落ちたということもスタッフさんから直接聞いたわけではないんです。なんとなく通過者と不合格者の部屋がバラバラになって、ダメだった人たちのほうは「お疲れ様」って感じでそのまま帰ることになり……。

クロちゃん そうだった! それには理由があって、ナオ・オブ・ナオの存在が引っかかっていたんだよね。あの16人の中で、ナオはアイドルとして一歩抜けた存在。明らかに有利な位置に立っていた。しかもナオ本人を含めた16人全員がそのことに気づいていたわけ。となると、俺としてはやっぱりナオを泣かせたくなるのよ。

工藤 なんですか、その異常な発想は(苦笑)。

クロちゃん 俺自身がアイドルファンだから、アイドルファンの考えていることはわかる部分があるのね。
アイドルファンはアイドルの感情が沸き立つ瞬間を見たい。その子の違う一面が見たい。だからニコニコ作られた笑顔を浮かべるのではなく、悲しむ顔……それも泣いている顔が見たい。だって予想通りの結果になって、余裕綽々でいるナオなんて何も面白くないもん。それでナオを精神的に揺さぶるため、合格か不合格かをギリギリまでわからないような仕組みにしたんだ。

──でも、たしかに『ASAYAN』時代のモーニング娘。や初期AKB48は予定調和を避ける傾向がありましたよね。常にファンにショックを与えるというか。

クロちゃん そうそう。これも今だから言いますけど、オーディションで一番印象に残っているのはミユキ・エンジェルだったんですよ。というのも、ミユキは話しながら泣き始めたんですね。
私は引っ込み思案だし、学校にもなかなか行けないでいる。でも、そんな自分を変えたいと思っているんです……そういうことを涙ながらに語るわけです。それはスマートじゃなかったかもしれないけど、間違いなく彼女の魂の叫びだった。それを吐き出せるのは強みですよ。

工藤 すごく考えさせられる話ですね。

クロちゃん 工藤ちゃんに関しても「顔がタイプじゃないから落とした」ってことでは絶対にないですからね。これは神に誓ってもいい。顔だけで言ったら、今もそうだけど当時だって十分に可愛いと思っていたから。

工藤 えっ!? なんだかうれしいけど複雑な気分……。

クロちゃん 豆柴オーディションのときは、申し訳ないけど何も覚えていないくらい工藤ちゃんは印象に残らなかった。だけどクロフェスでガツガツ突っかかってきたとき、「面白い子だな。あのとき、こんな子いたっけ?」ってすごく気になったのも事実なんだよね。
だから今こうやって対談取材の話も受けさせてもらっているわけだし。なぜ工藤ちゃんは変われたのか? むしろそっちのほうが俺は気になるけどね。

工藤 (※泣き始めながら)クロフェスではズケズケ私のほうから絡んでいったじゃないですか。でもあれは勢いで行ったわけじゃ決してなくて、すごく悩んだうえでの行動だったんです。マネージャーさんにも「この話をすることで何かを残せますかね?」って相談したし、それでも不安だから先輩のあーちゃん(関根梓)にもついてきてもらいましたし。

──意外ですね。実は清水の舞台から飛び降りる覚悟だったんですか。

工藤 (※さらに激しく泣きながら)自分がアイドルをやっているのに、過去に落ちたオーディションの話をするのって決して気持ちいいことじゃないですよ。「こんなこと話して大丈夫なのかな?」って思うし、何よりも恥ずかしいじゃないですか。だけど、落ちたという過去は消せないですからね。しかもその過去は私しか持っていないものだから、武器にもなるかなと考えたんです。あの場でそこに触れなかったら、なんというか成仏させられないと感じまして。


クロちゃん 「成仏」か……。でも、工藤ちゃんからすると本当にそういう気持ちだったんだろうね。

工藤 当たり前だけど、アイドルのオーディションって落ちた理由を教えてもらえないんです。でもクロちゃんの話を聞いてたらすごく納得することが多いし、その部分から学んで次の活動へ繋げていけたら落ちた意味もあるはずだから……。

クロちゃん クロフェスの場で噛みついてきたことは大正解だったと思う。本当に遠慮することなんて何ひとつないからね。どんどん俺のことを利用してほしいと思っているくらいだし。

工藤 うう……クロちゃん、優しい……(涙)。

▽12月19日(日)川崎CLUB CITTA’にてワンマンライブを開催
今年8人体制となったアプガ(仮)にとって最大キャパのワンマンライブ『アップアップガールズ(仮)2021 End of the Year』。12月19日(日)に川崎CLUB CITTA’で行われる。

▽工藤菫Twitter
https://twitter.com/uug_new_sumire

▽工藤菫Instagram
https://www.instagram.com/uugirl_new_sumire/

【後編はこちら】豆柴の大群になれなかった私、「“変わらなくちゃダメ”その意味が本当にわかった瞬間」
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