12月13日、日本武道館で「モーニング娘
’21 コンサート Teenage Solution ~佐藤優樹 卒業スペシャル~」が開催された。

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モーニング娘。’21が単独でのライブを行うのは2019年12月以来。2年前といえば15期3人が加入して最初のツアーで、これからこの14人での形が作り上げられ、強固になっていくのだろうと期待を集めていたタイミングだった。しかしそれ以降ライブはできず、メンバーもファンもやり場のない思いを抱えていた。

だからこそ、冒頭の『Teenage Solution』から14人それぞれがこれまで募らせてきた気持ちを爆発させ、各々の個性がパフォーマンスから溢れ出る。この2年、グループでの活動はできずともハロー!プロジェクトでチームに分かれ、コンサートを続けてきた彼女たち。15期はフレッシュさに加え力強さを、13・14期は自分たちの持ち味を理解し、12期は熟した表現力で魅了する。11期・小田さくらはリズム感がより洗練され、10期はいつも以上に自然体で、9期は経験に裏打ちされた安定感を感じさせ、この2年で深めたことや花開いたものは、グループで集まったときこそよく見えてくるのだった。

今年リリースしたアルバム『16th~That’s J-POP~』からの初披露曲やユニット曲をパフォーマンスし、これまで見せたくても見せられなかったものをすべて詰め込もうという気概を感じた今回のコンサート。

特に『泡沫サタデーナイト!』でメンバーがバトンリレーでつなぎ、横山玲奈が掲げた掛け軸の「次はメドレー!」から始まった怒涛のメドレーには、これぞモーニング娘。!と思わずにはいられなかった。
コンサート後半戦でのメドレーはモーニング娘。のライブでは定番で、前後の曲が絶妙に混ざりあい、メンバーのパフォーマンスで次の曲に誘われる“繋ぎ”が至高なのだ。一瞬も途切れることのない緊張感と高揚感に、声は出せずとも観客の熱量がぐんっと上がっていくのが感じられた。

そして今回はタイトルにある通り、10期メンバー佐藤優樹の卒業ライブ。ベースはモーニング娘。の通常のライブだったが、セットリストを振り返ると、披露されたのはすべて佐藤が加入した後の楽曲だった。譜久村聖は「歌を聞けば優樹ちゃんのことがわかる」と話していたが、まさにそれが佐藤の面白さだと思う。今でこそ安定したパフォーマンスを見せることが増えたが、必ず当ててくるというより、その日の調子が如実に出ることが多いのだ。その分、ハマったときには並み外れた爆発力を見せる。特に今回のライブでも披露した『わがまま 気のまま 愛のジョーク』の≪愛されたい≫パートは、リリース当初から「今日はどうくるのだろうか」とファンも楽しみにしていたパートだったと思う。そんなある種トランプの“ジョーカー”的だったパフォーマンスも、経験を積み重ねていくうちにいつしかグループを支え、欠かせないものになっていた。

そして加入当初から天真爛漫なキャラクターで周りを翻弄してきた佐藤。
怒られてもそれがなぜなのかわからないなんてことも多々あり、ただ問題児とも形容できず、他と比べることのできない稀有な存在だった。

今回のライブでも、『泡沫サタデーナイト!』の回替わりでメンバーが自由に喋るパートで「今まですみませんでした!」とファンに謝罪し、ライブの感想を話す場面では「今日ですね、振りをたくさん間違えてしまったんですよ。次のコンサートに生かせるように頑張っていきたいので、またコンサートに遊びに来てくれますか?」とまるで次のライブにも出演するかのようにコメント。1人で登場したWアンコールでは、「ちょっと聞いてください!」と妹に味噌汁を作ったときにぬか床を使ってしまった話を始め、拍手が鳴り止まず再度登場したときには「せっかくキレイに終わったのに!」と文句を言うのだった。

そんな奔放なキャラクターや、みるみる進化していくパフォーマンスからから目を離すことができず、いつの間にか10年が経ってしまった。メンバーもスタッフも、ファンも、彼女に振り回され、翻弄され続けた。それでも彼女の笑顔と優しさに触れると、心にかかった雲が消えていく。パフォーマンスできる嬉しさが詰まった満点の笑顔、いたずらを企むような笑顔、メンバーを見つめる優しい笑顔。それを見たら、こちらもつい笑顔になってしまうのだ。セットリストの最後を飾った『笑顔の君は太陽さ』のタイトルのように、佐藤の笑顔はまさに“太陽”で、気まぐれに私たちを照らしてくれたのだった。

佐藤はモーニング娘。に加入してから出会ったたくさんの人々やつんく♂の楽曲から、自分の見せ方や曲に対しての考え方、自分の思いの伝え方など、本当にいろんなことを吸収してきた。
それを確実に自分のものにできたのは、彼女のどんなこともキャッチする素直さと繊細さがあったから。そしてどれだけたくさんのことを吸収しても変わらなかったのは、自分に正直でいること。『笑顔の君は太陽さ』の歌詞にあるように、佐藤は≪嘘がつけないとこが良い≫のだ。実はそれが一番難しいことで、だからこそ、そういられる彼女が眩しく見えたのかもしれない。

佐藤がどんなことを考えているのか、どんな人なのか、この10年で見えたのはほんの一部分だったように思う。この先、グループを卒業した彼女はきっとさらに新しい表現を手に入れていくだろう。モーニング娘。では見えなかった一面が見られることを楽しみに待ちたい。
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