中学・高校の家庭科教師から転身した異色の女子プロレスラーがいる。スターダム所属のレディ・C。
177cmという恵まれた体格から、「河津落とし」や「脳天唐竹割り」といった故ジャイアント馬場さんの技を繰り出し話題を呼ぶ今売出し中のレスラーだ。だが、彼女、実は子供の頃からスポーツエリートだったわけでも、プロレスファンだったわけではない。それでもプロレスに出会い人生を変えられた。「教師を辞めてプロレスラーになります!」猛反対する父親に涙で土下座し、リング上で生きる道を選んだ彼女に話を聞いた。(前中後編の後編)

【写真】家庭科教師時代のレディ・C、試合中のカットほか撮り下ろしカットも【12点】

【前編はこちらから】「多忙で学校でもボロボロ泣いていた」家庭科教師を変えたプロレスとの出会い【スターダム レディ・C】

【中編はこちら】元家庭科教師 レディ・Cのデビュー秘話「プロレスをやらせてください!」父に号泣土下座した夜

──1年間の練習生期間を経て、2020年10月にとうとうプロテストに合格します。「レディ・C」という名前の由来は?

レディ・C デビューするなら本名じゃなくてリングネームでやっていくつもりだったんですけど、どうせならプロレスラーらしい名前がいいなと考えまして。それで(団体エグゼクティブプロデューサーの)ロッシー小川さんに相談しながら決めたんです。「レディ・C」という名前を小川さんが思いついたときは、私としても「それだ!」と感じまして。Cから始まる言葉って” Challenge”“Chance””Champion”とポジティブなものが多いですし。

──当たり前ですが、デビューがゴールではありません。レスラーとして、どんな個性を持った選手になろうと考えたんですか?

レディ・C それが本当に最大の悩みどころでした。「私の売りって何だろう?」と初勝利を掴むまでの10カ月間くらいずーっと考えていました。
まず身長が177cmあって、これは現役女子プロレスラーで最長なんですよ。それから「元教師」という肩書も異例というか特徴にはなっているはずなんですよね。だけど、そういった要素を試合に活かせていないというのが大きなジレンマで。そんな中で8月の汐留大会で岩谷麻優さんと戦ったとき、とっさに脳天唐竹割りが出たんです。

──故・ジャイアント馬場さんの得意技ですね。

レディ・C 私も身長が高いので、ジャイアント馬場さんの試合映像を見て参考にすることはあったんです。デビュー当時から河津落としも使っていましたし。だけど脳天唐竹割りを出した瞬間、それまでにないくらいの反応が客席からあったので、すごく手応えがありまして。そこでようやくプロレスラーとして自分の色がついた気がしました。

──ところで現在のスターダムは観客動員も増え、大きな盛り上がりを見せています。躍進の理由は、どこにあるとお考えですか?

レディ・C いくつか理由はあると思うんですけど、一番大きいのは試合のクオリティ。プロレスっていろんな楽しむ要素があって、たとえば選手のキャラクターとか物語性も大事じゃないですか。
だけど結局、ファンが一番見ているのは試合なんですよね。セコンド業務をしながらもスターダムってすごいなと感じるのは、同じ選手同士が戦うことになっても、毎回、試合内容がバラバラなんです。それでファンの方に何回も来ていただけていると思うんですよ。

──リピーターが多いというのは、たしかによく指摘されるところです。

レディ・C 上谷沙弥さんのように飛んだり跳ねたりが得意な選手もいれば、舞華さんや林下詩美さんのようにパワーやテクニックで攻める選手もいる。かと思えば、フキゲンです★さんのようにコミカルな選手もいますし。試合内容もキャラクターも幅広いから、初めて見ても必ず推しの選手が見つかると思うんです。

──本当に説明が授業みたいで淀みないですね(笑)。それからスターダムは、選手のビジュアルレベルの高さもかねてより指摘されています。

レディ・C 私も最初に中野たむ選手を見たとき、「本当にプロレスラーなの!?」って衝撃を受けたんです。さすがにアイドルをやっていただけあって、可愛さが常軌を逸しているなと。たむさんがすごいのは、24時間、中野たむでいるところ。
普段からアイドルっぽいオーラを振り撒いているし、練習のときですらメイクもバッチリ。可愛いということに対してプロフェッショナルだから、試合が終わりボロボロになっているときですら可愛いんです。今のスターダムは女性ファンが増えているんですけど、ビジュアルのよさから同性として憧れるというパターンも多いと思うんですよね。

──普段はプロレスラーとして、どんな生活を送っているんですか?

レディ・C 今は月に10日くらい大会があるんです。試合は土日が多いので、オフになるのは月曜日と火曜日。中でも月曜日は家で死んでますね。動いたとしても、整体や美容院に行くくらいで。コロナが始まってからは、外出なんてほとんどしていないな。今はひたすら家でアニメを見たり、ゲームしたり……。『アイドリッシュセブン』という男性アイドルをモチーフにした音ゲーがあって、それを原作にしたアニメとともにハマっています(笑)。

──恋愛観や結婚観は?

レディ・C プロレスラーになってからは恋愛に縁がなさすぎて、せいぜい『アイドリッシュセブン』のメンバーにキュンキュンするくらい。好みのタイプが定まっていないんですよね。
相手の身長は自分よりも高いほうがいいと思っていた時期もあるけど、今は別にどうでもいいかなと考えていますし。でもなぁ……もし好きな男の人ができたら、リング上で髪を振り乱して戦っている自分は見せたくないですよ。だから恋愛してしまったら、私はもうプロレスができなくなると思う。団体側から特に言われなくても、自ら恋愛禁止令を出すことにします(笑)。

──最終的にレディ・C選手は何を目指していくのでしょうか?

レディ・C チャンピオンになりたいという考えももちろんありますけど、一番のモチベーションはプロレスを広めたいという気持ちです。生徒に聞いても、クラスの中に今はプロレス好きって1人いるかどうかというレベルなんですよ。ほとんどはオカダ・カズチカ選手や内藤哲也選手の名前すら知らないという感じですから。私自身が挫けたときにプロレスに救われた人間だし、こんなに心を鼓舞するジャンルはないと信じているから、1人でも多くの人にこの素晴らしさを知ってもらいたいというのが偽りざる本音。アントニオ猪木さんやジャイアント馬場さんが活躍していた頃の熱気を超える本当の黄金時代を、これからスターダムで作っていくのが私にとって究極の目標です。

──ところでプロレスラー転向に大反対していたお父さんですが、さすがに今は応援していくれているんですか?

レディ・C いや~、いまだに文句は言われます。ただお母さんの密告によると、家にあるパソコンの検索履歴がプロレス関連の記事ばかりらしいんですよ。おそらく陰でこっそり見てくれているんでしょうね。
それからプロレス雑誌の記事を切り抜いているという話も聞きました。お父さんが胸を張って堂々と応援できるような、そんな一人前のレスラーに早く成長したいです!

▽レディ・C
1994年11月17日生まれ、千葉県出身。スターダム所属の女子プロレスラー。日本の現役女子プロレスラー最長身の177cm。得意技は「河津落とし」「脳天唐竹割り」など。Twitter:@LadyC_stardom/Instagram:ladyc_stardom
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