【写真】歳を重ねるごとに一層美しさを増す南果歩の撮り下ろしカット【10点】
【前編はこちら】南果歩が語る、幼少期から現在まで波乱万丈の女優人生「小さい頃の苦労経験は強み」
【中編はこちら】南果歩がライフワークの海外一人旅を語る「初対面の人も平気、私はどこでも生きていける」
――南さんは2度目の結婚で、2年半にわたってのロサンゼルス暮らしを経験します。海外での生活はいかがでしたか?
南 そこまで一大決心ではないんですよ。たぶん基本がボヘミアンなので、住めば都と思っていますし、住んでしまえば楽しめます。現地でたくさんお友達ができたので、ロサンゼルスを離れるときは大お別れ大会でした(笑)。
――『乙女オバさん』に書いてありますが、アップルTVで配信予定のドラマシリーズ『パチンコ』の撮影で、2021年の1~3月までバンクーバーに滞在したそうですね。
南 バンクーバーの冬は寒くて大変なんですけど、人はフレンドリーですし、食べ物は美味しいですし、地元の人たちとも顔見知りになったので、ここだったら住めるかもと思いました。
――言葉の壁は苦にならないんですか?
南 英語は下手なんですけど、それは気にしないですね。たぶん間違ったことも言ってますし、聞き違いもいっぱいあると思います(笑)。
――今回のエッセイ執筆や、海外ドラマ出演もそうですが、2018年からバンドを始めたり、2020年にインスタで絵本の読み聞かせをライブ配信したりと、精力的に活動をしています。年齢を重ねても、そういう好奇心は衰えないものですか?
南 年齢というよりも、いろんな時期があると思うんです。お芝居以外のことは全く受け付けないって時期もありましたし、若い頃にCDを出さないかというお話も何度かいただいたんですが、自分の気持ちが動かなかったというか。
――どんどん新たな自分を見つけられるのは羨ましいです。どうしても年齢を重ねると、面倒くさくて腰が重くなりますよね。
南 「面倒くさい」って言葉は使いたくないと思っています。何か行動を移すときに、面倒だからやめようかなって思う気持ちは分かります。要は面倒くささと好奇心、どちらが勝るかですよね。そういう意味では体力温存が重要になってきますよね。私自身、もちろん働くときはがむしゃらなんですけど、ちょっと休憩を入れてあげられるようになりました。
以前は予定を詰め込むほうだったんですけど、若い頃のような体力はないですし、ちゃんと睡眠もとらないと次の日は使い物になりません。今は時々休憩を挟みながら、好きなことをやるのがいいかなって思います。無意識に自分の心の声を聴いているのかもしれないですね。
――2016年に乳がんという大病を患った経験も大きかったのでしょうか?
南 大きいですね。私の場合、出産のときも妊娠高血圧症候群と診断されてギリギリのところまでいきました。乳がんのときも、たまたま早期で見つかったから、こうして仕事も復帰できていますけど、命以上に大事なものはないなと痛感しました。病気を経験して分かったことは、辛いなと感じたときは、仕事でも人間関係でも我慢せずに「逃げる」ということです。どんな不義理があったとしても、お返しは後でもできることなので、まずは自分の命を守ることが大事です。それは『乙女オバさん』を通して伝えたいことの一つです。
――今後も執筆活動は続けて行こうと考えていますか?
南 はい。今回の書き下ろしを書くにあたって、物書きの知人から「毎日書くことが自分を鍛えるトレーニングになる」というアドバイスをいただきました。もともと文章を書くのは好きですし、友人の死や乳がんのことなど、なかなか言葉にしにくかった過去とも、じっくり向き合えました。仕事柄セリフをたくさん発しているので、鍵括弧の部分が好きなんです。なので今後は小説やシナリオにも挑戦していきたいですね。
――改めてどんな方に『乙女オバさん』を読んでもらいたいですか?
南 「乙女オバさん」は私が作った造語ですけど、毎日に息苦しさを感じていたり、辛い思いをしていたり、それでも夢見る気持ちを持っている人たちを称した言葉です。
少しでもアンテナが動くものがあれば手に取ってほしいです。私の人生は失敗ばかりですけど、失敗しながらでも、人間は何度でも再生する能力を持っているということを、みんなで共有できたらうれしいです。