2月12日に東京国際フォーラムで行われた「卒業セレモニー」をもって、乃木坂46を卒業、芸能界からも引退した1期生・星野みなみ。そんな、星野に憧れ、グループに加入したのが3期生・向井葉月だった。
ファンから先輩へ、そしてかけがえのない存在になった2人の関係を紐解く。

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2月12日に「星野みなみ卒業セレモニー」が開催された。初期フロントの生生星(生駒里奈生田絵梨花、星野)や齋藤飛鳥との“あしゅみな”など、星野が活動してきた10年間の軌跡を思い起こさせるイベントだったが、ここでは星野をグループ加入前から推していた3期生・向井葉月にスポットを当てたい。

イベント内の「みなみちゃんクイズ」で、10年以上活動をともにしてきた飛鳥が「ツーカーなので」と言うと、向井は「私も10年の仲というか、アレなので」と笑いを誘ったが、向井が星野を10年以上見続けてきたことは紛れもない事実だ。

向井は小学6年生のときに『乃木坂って、どこ?』(テレビ東京系)の初回放送を観て、星野に一目惚れ。その後も「番組でしゃべることが全部ホームラン」(向井談)な星野にハマり、ライブや握手会に参加するようになった。
神宮球場で行われたライブでは、星野が投げたサインボールを向井が受け取ったこともあった。

そんな向井は乃木坂46に入ると、後輩に気を遣わせない星野のことをより好きになった。初期こそ“推し”と話すことを躊躇していた向井だが、19年12月に星野とプライベートで焼肉を食べに行くことに。向井は「幸せで倒れそう」と星野に告げたという。2人の距離は縮まったものの、星野が「『みなみちゃん』と呼んでいいからね」と言っても、向井は「みなみさん」と呼び続けた。

ステージ上でも、向井はゆっくりとした歩みながら星野に近づく。
「真夏の全国ツアー2019」で披露された星野のプロデュースユニットに参加して、『自惚れビーチ』をパフォーマンスした。このユニットに向井を選出したのは星野だった。

20年12月18日に開催された「アンダーライブ 2020」で、コーナー内ではあるが、星野のセンター曲『初恋の人を今でも』をセンターで歌った。「アンダーライブ 2020」では『涙がまだ悲しみだった頃』のセンターにも立った向井は、3期生ライブ(21年5月9日)で『涙がまだ悲しみだった頃』、アンダーライブ2021(21年10月28日)では『13日の金曜日』と、センターに立つ機会が増えていく。向井はセンターに立つことで自信をつけていった。
 
松村沙友理の卒業コンサート(21年6月22日、23日)では、『でこぴん』をセンターで歌った。
「(卒業した)白石さんの分も私が声を掛けます」と寂しさを埋めるように行動した向井に心を打たれた松村が、「1期生お姉さんメンバー」の思い出が詰まった曲のセンターに抜擢したのだ。歌い終わると、松村は向井に「夢を叶えてくれてありがとう」と告げた。

生田絵梨花卒業コンサートの2日目(21年12月15日)で、『僕は咄嗟に嘘をついた』のセンターに立った向井の姿は記憶に新しいところだ。

そして、星野みなみ卒業セレモニーでは、星野の「卒業する時は葉月と一緒に何かしようと決めていて。この曲のオリメンも私が最後。せっかく最後だからやりたい」という希望から、『無口なライオン』を星野と向井の2人で歌った。


少し離れた位置にいた2人は、曲が進むうちに距離が近づき、向かい合って歌う。星野は、向井の瞳から溢れた涙を拭うと抱きしめ、最後に「泣きすぎ!」と笑った。

卒業セレモニーのアンコールで、向井が「何年か前に『私が選抜に入るまで待っててください』って言ったら、みなみさんは『頑張ってね』とか『待ってるね』じゃなくて『え~、早くね』って言ってくれたんです。それが私の張っていた心を救ってくれました」とメッセージを送ると、星野は「ごめんね、待てなくて。みなみがもうちょっと待てたら良かったんだけど」「卒業しても仲良くしてね」と応えた。

向井が「はい。
みなみちゃん」と返すと、星野は「やった! 『みなみちゃん』って呼んでくれた。卒業するときまでずっと呼んでくれないから」と喜んだ。

選抜未経験の向井にとって、もどかしい気持ちを抱えることは何度もあったが、そのたびに先輩たちの言葉に救われてきた。北野日奈子から「選抜を目指してもいいんだよ」と言われたときも安堵したという。

「諦めきれない自分を認めてあげることができたんです。『諦めきれないから必死になれるんでしょ』と自分に言い聞かせて、頑張ろうと思います」(『日経エンタテインメント! 乃木坂46 Special 2022』)
 
だからこそ、向井は後輩に気を遣わせないように接している。
佐藤璃果、柴田柚菜、矢久保美緒などの4期生に「『はづちゃん』と呼んでほしい」と声をかけているのも、その一環だろう。世代交代が進むグループの中で、「乃木坂を守る」と言ってはばからない向井の存在感はより増していくはずだ。

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