芸歴57年目にして再ブレークし、73歳で活躍の幅を広げているおぼん・こぼん。今回、芸歴15年以上の芸人を対象にしたお笑い賞レース「G-1グランプリ(ジカタNo.1グランプリ)」の決勝および準決勝の総合司会を務めることが決定した(3月6日準決勝、4月10日決勝)。
大会を前に、改めて2人に“仲直り”前後について、反響や変化を聞いた。(前中後編の中編)

【前編はこちら】『水曜日のダウンタウン』以降のおぼん・こぼん「人間、死ぬまでに3回チャンスがある」

【写真】芸歴57年目にして再ブレークしたおぼん・こぼんの撮り下ろしカット

──『水ダウ』で不仲をいじられることに抵抗はなかったんですか? 師匠ほどの地位とキャリアがあるなら、失うものもあったのでは?

おぼん いや、俺はむしろ率先して仕掛け人になったくらいだから。最初に聞いたときから、面白い話だなって感じたよ。チャンスだと思った。

こぼん そこは2人の間でも考えが分かれるんだよね。正直、俺は嫌だった。というか、今でもああいう感じで扱われたことは納得いっていない。

──番組の中では「10年に渡る深刻な不仲期間」と報じられていましたが、実際、そこまで本気で憎しみ合っていたんですか? というのもガチで敵対していたのなら、速攻でコンビ解散に踏み切るのが自然だと思うのですが。

こぼん あの番組では「10年の不仲」と言われていたけど、実際はそれも唐突に始まった話じゃないからね。お互いに口をきかないようなことは、それ以前から何回もあったわけだし。『スタ誕』が終わってめちゃくちゃ忙しかった時期ですら、険悪になって3年くらい話さなかったことがあるんですよ。

おぼん まぁ期間でいうと、10年が一番長かったのは間違いないね。
なぜ、それでも別れなかったか? それは単純な話で、おぼん・こぼんでやっているとお金になるからですよ。イヤらしく感じるかもだけど、いわゆるビジネス・パートナーというやつで。

こぼん そうね。1人でやっても安定した収入が稼げるなら、とっくに別れていたと思う。

おぼん あとはやっぱり根本のところで2人が同じところを目指していたという面もあるんじゃないかな。いくら相手がカネになるパートナーだったとしても、「俺は芝居をやりたい。相手は歌をやりたい」みたいな話だったらとっくに別れているはずだし。

こぼん うん、それもあるだろうな。

おぼん やっぱりね、俺もこの男(こぼん)も根っこの部分は似ているのよ。好きなものが同じなの。高校時代に2人で一緒に『ウエスト・サイド・ストーリー』を観て、カッコいいなって憧れた気持ちをいまだに持っている。要するにガキの頃に好きだったショービジネスだよね。
ホテルのディナーショーとか、世界一周クルーズにゲストとして呼ばれショーをやるとか……。

──おぼん・こぼんさんはタップダンスや楽器演奏もこなしますが、ベースには昔のショービズに対する憧憬があったわけですか。

こぼん そうそう。それしか今までやってこなかったしさ。昔のミュージカルでは、必ず狂言回し的な面白いコメディアンが出てきてね。自分が歳を取っても、ああいうポジションでいたいなと夢見ていたんだ。

おぼん サミー・デイヴィスJr.みたいな本物のエンターテイナーになりたいと俺は思っていたけど、こいつもこいつでまったく同じことを考えていたの。間違いなく感性は似ているんだよ。歌でハモるときも2人ならバッチリだし。今じゃ俺たちも73歳になったけど、これで80歳、90歳になってもタップ踏んでいたらカッコいいじゃない。

──最高です。このあたりは今の若手芸人にないセンスでしょうね。


こぼん 育ち方が大きいと思う。僕らは寄席とかお笑いライブで育ったわけじゃなく、キャバレーとかクラブで育った人間だからさ。

おぼん やっぱり変わりようがないよね、若い頃に培ってきたものは。

──さて今回、おぼん・こぼんさんは芸歴15年以上が対象となる『G-1グランプリ』の総合司会を務めることになりました。

おぼん G-1の「G」は何の略? まさか芸歴15年だからって「ジジイ」じゃないよな(笑)。

こぼん 「地肩」らしいよ。つまり「実力はあるけど、いまいち埋もれている芸人」ってことじゃないの?

おぼん なるほどね。でも、売れる・売れないは不確定要素も大きいよ。たとえば去年の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)で優勝した錦鯉にしたって、俺らの間では面白いってずっと言われ続けていたのよ。にもかかわらず、売れなかった。今のコンビになる前の時代も知っているし、ピンでやっていたことも覚えている。結局、大事なのは回ってきたチャンスをモノにできる嗅覚じゃないかな。


──「G-1グランプリ」は出場条件が芸歴15年以上ですが、お2人は芸歴57年になります。ズバリ長く続ける秘訣はありますか?

こぼん 秘訣ねぇ……。「気づいたら長く続いていた」というのが正直なところかな。他にできることもないしさ。ただ、確かに同時期にデビューした芸人たちを見なくなったなと感じることはあるよ。実は今日も昔からの仲間の葬式に出てきたばかりなんだけれど……。まぁでも同じことを長く続けていると、いいことは確実にありますよ。漫才を続けることもそう。コンビを続けることもそう。長く続けないと気づかないことって本当にいっぱいあるから。

おぼん 俺らが『スタ誕』で10週勝ち抜いたとき、すでに年齢が31歳だったのよ。芸歴も15年くらい行っていたと思う。
だから最初は若手に混じって番組に出ることに抵抗があったんだけど、それをチャンスと考え直したことが運命の別れ道だったんだと思う。この『G-1』も参加者にとっては絶対チャンスになるよ。それは間違いない。

こぼん でも、この『G-1』って審査がものすごく難しいよね。だって漫才、コント、漫談、一人芝居となんでもアリなんでしょ? ジャンルがあまりにも違いすぎるから、それを同一線上で評価するのって至難の業だよ。

おぼん だから、そこは単純に会場で受けたほうが勝ちというルールなわけでしょ。出る順番とか会場の空気感によっても結果は影響されるだろうから、そのへんの駆け引きも問われてくるよな。実は俺らも『キングオブコント』(TBS系)に出たことがあるの。優勝賞金が1000万円ということだったので、500万円ずつ山分けしようぜって話し合ってさ。

こぼん まだ仲がよかった頃だったからね(笑)。

おぼん だけど会場がいつもやるところとはまったく違う客層だったものだから、普段ドッカンドッカンとウケるネタでシーンとしちゃったんだよね。今思うと、あれは他の出演芸人が自分らのファンを会場に呼んでいた可能性もあるよな。


こぼん 当然、そうなるとファンの人は他の芸人の出番では笑わないようにするじゃない。敵に塩を送ることになるわけだからさ。でも、それだって一種の作戦なんだよね。勝負に勝つためには、なりふり構わずいかないとダメなのかもしれないよ。(後編に続く)

【後編はこちら】芸歴57年おぼん・こぼんが語る野心「73歳でもまだまだ売れたいし、ワーキャー言われたい」

▽「G-1グランプリ2022」オフィシャルサイト https://jikata-no1.com/

▽おぼん・こぼん
オフィシャルサイト http://www.tobik.sakura.ne.jp/oboncobon.html
おぼん 
1949年2月2日生まれ
大阪出身
大阪福島商業高校卒
170cm 63kg

こぼん
1948年12月24日生まれ
大阪出身
大阪福島商業高校卒
160cm 56kg

 1965年 コンビ結成! 学生漫才としてデビュー
 1969年 NHK漫才コンクール努力賞受賞
 1970~80年   赤坂コルドンブルー出演
 1972年 フジサンケイグループ第3回演芸大賞ホープ賞受賞
 1980年 NTV「お笑いスター誕生」10周勝抜きグランプリ受賞

漫才協会出演スケジュールはこちら http://www.manzaikyokai.org/
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