話題の芸人にインタビューする不定期連載「このインタビューはフィクションです」。タイトルの通り、半生や今後の目標を聞きながらも、ゲストにお願いするのはひとつだけ。
「本当のことは言わないでください」。

今回のゲストは嘘しか言わない架空漫談家としてお笑いライブシーンを独走する街裏ぴんく。芸歴11年以上のプロのみが参加できる「Be-1グランプリ2022」で優勝を果たし、また『マヂカルクリエイターズ』(テレビ東京)などで嘘エピソードを披露しバラエティ番組でも存在感を発揮している。そんな“嘘つきのプロ”街裏ぴんくから、どんな嘘が飛び出すのか!?

【写真】嘘しか言わない漫談家・街裏ぴんくの撮り下ろしカット【6点】

──街裏さんはどんな子ども時代を過ごしていましたか?

街裏 北海道の裏側の金髪町出身なんですけど、北海道の表側、いわゆるA面に対するコンプレックスが強くて。町中がB面体質といいますか、みんな卑屈でしたよね。僕も自然とひねくれました。

──ご両親は何のお仕事をされていたんですか?

街裏 父親が「座集(ざしゅう)」という仕事をしていて。

──ちょっと聞いたことがない仕事ですね。

街裏 僕も子どもの頃はわからなかったので、父親にせがんで職場を見せてもらったんです。「座集」とはいうものの、一瞬たりとも座ってなかったですね。むしろ立ちながら解き放っているというか。ちょっと離れたところから見ていたんですけど、もうね、室内が暑そうで暑そうで。
実体としての父親は消えて、概念としての父親だけが残っていたんです。それと、副業でゴムを作ってました。

──ゴムですか。

街裏 輪ゴムですね。この職場も見学させてもらったんですけど、気球に乗った状態で上から見ていたので、初気球の歓喜から輪ゴムなんてどうでもよくなってました。母親も仕事をしていたんです。

──どんなお仕事を?

街裏 大サポートですね。医療、経済、金融、土木……ありとあらゆる職業のサポートをしていました。

──そうなると、ひとりでいる時間も多かったんじゃないですか?

街裏 ひとり遊びを覚えましたね。大きいお好み焼きを作って、中に入ったり。

──お好み焼きの中に?

街裏 引き戸を開けて入りました。居間があって、ダイニングがあって、床はフワフワして足触りがいいように設計して。
完全にDIYでした。

──最初に憧れた芸人というと、どなたになるのでしょうか?

街裏 入り口はEE JUMPでした。僕は音を線で聴くクセがあるんですけど、EE JUMPはエンタツ・アチャコと同じ周波数なんですよ。僕はまだ中学生だったんですけど、EE JUMPのことを「あのご両人は」と話してましたから。

──無意識に。

街裏 はい。大正時代の方だと思い込んでいたんでしょうね。それほど凄みがありました。初めて聴いた時は、拳を握り倒して、額からは生ぬるーいオレンジ色の汗が流れたことを覚えてます。EE JUMPから大きく離されますが、2番目の憧れがダウンタウン。少し離れてダウソタウソです。

──それだけ周波数を重視しているんですね。


街裏 両親からの愛を受けてないと感じて、その分、あらゆる周波をキャッチしようとしたんでしょうね。

──街裏さんご自身も周波を出す側になろうと。

街裏 言葉を使って人を笑わせることって簡単なんですよ。その先に、「どんな周波を出すか」という課題があるわけで。どんどん周波を研ぎ澄ませていく作業に取り組みました。

──どういった作業をされたんですか?

街裏 街の電信柱であるとか、郵便ポストであるとか、みなさんが口に入れないようなものを舐めていきました。今でも街の一番汚い部分を探すことを日々怠らないようにしてます。

──そうするだけでだいぶ周波数が違ってくる。

街裏 今ふうの言葉でいうと、differentですね。

──街裏ぴんくという芸名の由来を教えてください。

街裏 あるホームパーティーに参加したところ、そこにキアヌ・リーブスがいて。僕と目が合った瞬間、キアヌが放った言葉が「マチウラピンク」と聞こえたんです。
「これや!」と思ってキアヌと熱い握手を交わしましたね。

──語感がよかったので芸名にしようと。

街裏 ただ、後から差別的な言葉だと知って、信じたくない気持ちになりました。キアヌは最悪な奴ですよ。廊下ですれ違っても無視されますから。

──あれだけ固い握手を交わしたのに。

街裏 イオンモールの営業とか、キアヌにめっちゃあげているんですよ。感謝せいっちゅうの。

──イオンでキアヌ・リーブスを見たら、街裏さんの斡旋だと思ったほうがいい。

街裏 そう思ってくれていいと思います。アイツは儲けているんだから、ちょっとええもん奢ってくれてもいいのに。黒クレープばっかりですわ。


──黒クレープ?

街裏 黒くて、ちっさいクレープばかりくれるんですよ。いらんねんって。まぁ、激ウマやねんけど。

──上京されて驚いたことはありますか?

街裏 女性の間でマイ鍾乳洞が流行っていた時期があるじゃないですか?

──ちょっと知らなかったです。

街裏 知らなかったですか。シャネルやらヴィトンのバッグのように鍾乳洞を手にさげているからビックリしましたね。鍾乳洞があると周波数が乱れるので、僕の中でよくない位置付けにあるんですよ。あれは困りました。

──東京は普通に有名人が歩いてますよね。

街裏 たくさん見かけましたけど、ローラさんは想像以上に跳躍力がありましたね。

──跳躍力。

街裏 ピョンピョン跳ねて、ちょっと高い建物に飛び移った時、ただものじゃないと思いました。
僕も持ち前の跳躍力で追いかけてみたんですけど、よぉ見たらローラさんの目、カンガルーの目でしたね。その時思いましたよ。「カンガルーや……」って。

──カンガルーでしたか。

街裏 片手に何か持ってるなと思ったら、緑色のファミチキでした。それを食べた後、ローラさんは「モッケ―」と言って。

──「オッケー」ではなく。

街裏 ファミチキ、藻味やったんでしょうね。「モッケ―」と言ったら首の骨が折れてそのまま動かなくなってました。

──東京の怖さを感じますね。さまざまなアルバイトもされていたと思います。

街裏 トキを試食するバイトをしたことがあって。

──特別天然記念物の。

街裏 本当に食べるのは下衆いので、「精神食事」です。大画面に映されたトキの写真を見ながら、トキの中に入っていくところをイメージする。トキに食べられることが、食べたことになるという真理です。ワッフルの専門学校で学びました。

──ワッフル?

街裏 4歳から20歳まで通っていたんですけど、食に関することはすべて学びました。チャゲアスの曲って、全部「食」について歌っているんですよ。

──そんなことまで教えてくれるんですね。

街裏 本質が見えてくるというか。ちなみに、スピッツは全員女性です。

──最近はテレビ局に行く機会も増えたと思います。

街裏 テレビ局って、建物に見えてひとつの竜なんですよ。その竜に上手く乗れるかどうか。「(鼻にかかった声で)大縄跳びと一緒や」とアドバイスをくれた先輩もいました。竜に乗るタイミングの話だと思うんですけど、その人、頭の後ろに鼻がついてました。

──街裏さんが目指しているところを教えてください。

街裏 最高のベージュになりたいです。

──最後に、何か告知があれば。

街裏 近いところだと、B’zのコンサートに出させていただきます。そこで、雑巾にアタッチメントをつけて掃除する「空揚(からあげ)」を披露する予定です。目をつむっても楽しめると思います。匂いもしますから。

──5感を刺激するような演芸なんですね。

街裏 そうです。そうです。その間、稲葉さんは叫び続けて、松本さんは一番気に入ってるギターをぐちゃぐちゃにしてます。

──楽しみにしています。

街裏 ぜひぜひ。よろしくお願いします。


街裏ぴんく第十二回漫談独演会『みそ汁おめでとう』」
日時:5月13日(金)
場所:東京・武蔵野公会堂で開催

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