「バイトAKB」出身という共通点を持つスターダム所属の女子プロレスラーの上谷沙弥とHKT48の松岡はな。レスラーとアイドル、それぞれ別のステージで活躍している中、昨年6年9ヶ月ぶりに再開を果たし交流が再開した。
今年の5月6日、松岡はなが所属するHKT48のチームTIIが5年半ぶりとなる新公演の初日を迎え、そこに上谷沙弥がベルトを持って駆けつけた。「あのころ、私が立ちたいと思っていた場所にはなちゃんが立っている」と感涙する上谷。そんな歴史的再会に、HKT48とスターダムを長年取材している小島和宏記者が密着した(前後編の後編)。

【写真】バイトAKBで同期だった上谷沙弥と松岡はな

【前編はこちら】スターダム上谷沙弥が“バイトAKB同期”のHKT48松岡はなと再会「チャンピオンになれました!」

HKT48劇場で松岡はなが出演するチームTII公演を観覧するために関係者席に座った上谷は、幕が開いた瞬間、思わず涙を落とすことになる。

この日からスタートする新公演はシークレット扱いとなっており、幕が開くまでのお楽しみ、となっていた。実際、メンバーに尋ねてもぼんやりとしたヒントをくれるだけで誰も教えてくれない。記者もまったく白紙の状態で幕が上がるを待っていたのだが、上谷は開演の1秒後にはもう泣いていた。

シークレットとなっていた公演名は『恋愛禁止条例』。かつてAKB48チームAが長期に渡って劇場にかけていた有名な演目なのだが、上谷にとっては忘れられない、いや忘れることなんてできない思い出の公演だった。

じつはバイトAKB時代、上谷は『恋愛禁止条例』公演にバックダンサーとして立ったことがあったのだ! 出番は2曲目の『スコールの間に』、そして9曲目の『真夏のクリスマスローズ』。何度も練習して、憧れのAKB48劇場で踊った記憶はいまだに鮮明で、ついさっき当時のマネージャーと再会したことで(前編参照)、より思い出はクリアになっていた。そこにあのころ耳にしたイントロが流れてきたら、そりゃ、涙が止まらなくなるはずである。


ステージに立ったことはあるけれど、この公演を客席で見たことはない。

そこに松岡はなが立っている、という不思議な感覚。HKT48劇場の時空が歪んでしまったんじゃないか、というような気持ちを超満員の観客の中で上谷だけが抱いていた。

「もう、ずっと涙目でした。アンコールのラストが『大声ダイヤモンド』だったじゃないですか? あの曲もバイトAKBとしての劇場公演で歌ったんですよ! もうエモすぎて、エモすぎて……こんな偶然、ありますか?」

公演が終わると上谷は興奮気味にそう語った。

めぐり合わせとは不思議なものである。2月に新潟でタイトルマッチをやったときも「かつてNGT48のオーディションに落選した会場でリベンジ!」と話題になったが、会場を抑えた人も、タイトルマッチを組んだ人も、そんな過去は知らなかった。合格した人たちは写真入りで報じられたから、まだ記録が残っているが、落選した人のことは当然のことながらニュースにはならない。本人がSNSで発信しなかったら、誰も気がつかないまま当日を迎えていたことになる。今回も同様でまったくの偶然だった。上谷沙弥はヒキが強いのかもしれない。

「とにかくはなちゃんのセンターオーラがすごかった! あのころ、私が立ちたいと思っていた場所にはなちゃんが立っていて、私の夢を叶えてくれている……そう考えたら、泣けますよね。
今日は劇場公演でのはなちゃんを見ることができて、本当によかった!」

松岡がはじめてHKT48のセンターに大抜擢されたときには悔しくてTVの歌番組を見ることができなかった、という上谷だが今回「私の夢を叶えてくれている」と言えたのは、自身もチャンピオンとして、マットのセンターを張っているからだろう。立場というものは、本当に人を大きく変えてくれるようだ。

松岡はなにタイトルマッチを見てもらう、という大きな夢は今回、叶わなかったが、結果として劇場公演を訪問し、松岡はなのステージを見る、という形になってよかったのだと思う。この日、上谷が抱いた感情はこれから先、絶対に活きてくるはずだし、プロレスラーとして活動し続けていれば、また試合を見てもらえる機会はきっとやってくる。7年越しの同期の物語は、さらなる高みに向かって、これからも続いていく――。

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