お笑いトリオ・ロバートの大ファンで、好きが高じて『ロバートの元ストーカーがテレビ局員になる。~メモ少年~』(東京ニュース通信社・6月25日発売)という本まで上梓した、テレビ局・メ~テレの篠田直哉ディレクター。
小学生の頃にロバートのコント「トゥトゥトゥサークル」を観てロバートのファンになり、ライブでメモを取る姿を見たロバートが“メモ少年”と命名。ロバート・山本博とのSNS交流、秋山竜次の実家に押しかけバイトをするなど、本人自覚なしの健全な狂気の中、少年はいつしかメ~テレ(名古屋テレビ)の社員となり、ついに秋山と仕事をするまでに…。そんな“推し活”のシンデレラストーリーは、好きなことを突き詰めるという熱意が運を引き寄せた結果であり、人を無条件に推せるその気持ちが周囲の人の心も動かす、幸せのループが巡っているのかも。(前編後編の前編) 

【写真】ロバート好きが高じてテレビ局員になった篠田直哉

──ロバートの推し活歴15年。日本一のロバートファンを公認された篠田さんの歴史が一冊になりました。本を出版するというのは人生で想定外でしたか?

篠田 ただのファンが本を出すというのはあまり前例がないケースだと思うので、お話をいただいた時は驚きました。でも、ちゃんとロバートさんにも内容を見ていただいた上での公認本として出せるので嬉しいです。今までプライベートをあまり世に出していないロバートさんとのやりとりが少しは出せたかなという感じです。

──メ~テレのディレクターとして今や秋山さんと一緒に仕事もするなど、ある意味、推し活の成功者? とも思えますが、少年時代に親にロバート活動を認めてもらう上で心がけていたことは?

篠田 僕の親は、「テレビを1日1時間しか見ちゃダメ」という縛りはありましたが、お笑いがNGとかはありませんでした。小学生の夏休みに毎週ロバートさんの同じDVDを借りて4、5回それを繰り返していたら母親が「もう、買いなさい」って(笑)。そんなロバートネタを毎日見ている普通の子だったと思います。「いかにロバートの魅力を伝えられるか」と、クラスの友だちにはロバートのネタを完コピして、布教活動はしていましたけれども。


──気になります。ロバートの布教活動とは?

篠田 スマホがない中学生の終わりまでは、とにかく自分でネタを完コピして再現するしか方法はなかったですね。友だちに「トゥトゥトゥサークル」のリズムを一緒に喋って楽しんでもらいながら、「ロバートさんの面白さは、地上波でやっている『はねるのトびら』だけじゃなくて、一番大事にしてるコントが面白いんだよ!」って話していました。「ロバートのDVDを貸して」と言われたらまず一段階クリア、イベントやライブを観てくれるところまで持っていければロバートの面白さはそこで十分伝わるので、布教活動成功ということですね。

──中学生になり、『ロバート企画』というライブの客席でメモを取っていた篠田少年は、“メモ少年”として、3人に認知されることになります。

篠田 最初は、「なんでメモ取ってんだ?」って、普通にライブのワントーク盛り上がればいいぐらいのイジられ方だったと思うんですよね。そしたら、「次回もまたメモしてやがる」ってなって…。僕は当たり前のようにメモを取っていて、まさかイジられるとは思ってないんですけど、「でも僕はロバートさんのこと全部知ってます。ネタも完コピできますし」ってずっと言っていたんです。だから、「あいつ、ちょっとヤバいな」とは思われていたみたいですね。

──ライブの出待ちをして、3人と話すチャンスを探るのも、推し活の醍醐味です。

篠田 僕らは出口とタクシーに乗る間の10秒、15秒ぐらいしか会話ができないので、秋山さんが来たらこれを話す、山本さんが来たらこれを話すみたいなことは、事前にまとめていました。
その10秒で「高校の入学が決まりました」とか、「受験が始まります」とか、「大学、東京決まりました!」みたいなのをお話して、いかに自分の話と最近面白かったロバートさんの番組の話をコンパクトにまとめて話せるかみたいのは、毎回考えていましたね。

──その短いやり取りが長年続き、3人も篠田さんの成長を見守る形に。そして同じロバートファンの方々は、篠田さんをどう見ていたのでしょう。

篠田 僕がメモ少年となる中学生の時に一緒にいた当時のファンは20代、30代ぐらいの女性で、それこそ僕の成長をロバートさん以外で見守ってくださっていたお姉さんのような存在でした。僕が幼くてまだ知らないころのロバートさんが出ている雑誌の資料をたくさんいただいたり、ロバートがライブで使用してシャレで販売した小道具も譲っていただいたり、とても優しくしていただきました。

──ロバートの3人に認知されていて、「ちょっと悔しい」と思う女子高生がいた可能性もあったのかなと思って。

篠田 それは全然なかったです。ロバートさんが優しいから、ファンの方もみんな優しい方ばかりで、治安はとてもよかったです(笑)。

──出待ち交流の中、印象に残っていることは?

篠田 僕の地元に、他の芸人さんも含めてロバートさんが営業に来た時に、『ロバートの皆さん、ようこそ我が町へ』という横断幕を出したことがあるんです。その時はちょっと喜んでもらえたという感触はありました(笑)。またライブの時に、「お前がどんなメモ取っているか見てみたいね」と言われたので、前回のライブのメモをコピーして渡したり、大学の卒論でロバートを研究した論文を書いたのですが、4万字ぐらいあったかな、そのロバート論文も渡したりはしました。

──「えっ⁉」みたいなリアクションでしたか?

篠田 本当にそんな感じでした(苦笑)。
人の卒論を読むことってないと思いますし、人に卒論を渡すこともないと思うんですけど。そもそもロバートさんで卒論を書かれることもないと思うんです。(後編へつづく)

取材・文/富田陽美

▽篠田直哉
しのだ・なおや 1996年5月12日生まれ。大阪府出身。
メ~テレ コンテンツビジネス局 コンテンツプロデュース部兼イベントコンテンツ部所属。2019年にメ~テレに入社し、制作セクションに配属後、1年間アシスタントディレクターを経験。その後、ディレクターとして映像番組、コンテンツ制作に携わる。これまでの担当番組は『デルサタ』(AD)、料理コーナー『ロバート馬場ちゃんの楽楽ごはん』(AD)、単発特番『唐沢佐吉のメ~テレ大爆発TV‼︎』『ロバート秋山の虚構ドキュメンタリー』(企画・演出)など。現在は、『BomberE』(隔週火曜 深夜0時57分~放送 ※愛知・岐阜・三重の東海3県で放送)のディレクター、『LET’S HOT EVENT パパラピーズ』(毎週火曜 深夜1時29分~放送 ※同上)のプロデューサーを務める。YouTube「テレビ局の生活」チャンネル更新中。2021年10月30日に公開された動画、「【ロバート秋山】元ストーカーがテレビ局員に。職権濫用で番組に呼ばれる」が、579万回再生(22年6月20日時点)。


【後編はこちら】ロバートを追っかけて15年、少年だったファンがテレビ局員に「3人の番組を作り恩返しをしたい」
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