2000年代、明るいキャラと笑顔を武器に「和希沙也」の芸名でバラエティ番組、グラビアと引っ張りだこだった倉本清子。現在は1児の母として奮闘し、女優としても活動している。
6月25日の映画『どうしようもない僕の ちっぽけな世界は、』に出演する倉本に、夫との出会いから、通信制大学に入学した理由、さらに小説家になる目標を語ってもらった。(前後編の後編)

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【写真】歳を重ねても美しい、倉本清子の撮りおろしカット【10点】

──2011年、出演された舞台「東京の空に」の演出家を務めた倉本朋幸さんと結婚します。交際から2カ月半というスピード婚でした。

倉本 確かに早いですよね(笑)。自分でもよく結婚を決意したなと思います。出会った舞台は東日本大震災の直後で、日本全体の気持ちが沈んでいた時期。その中で、夫は1人だけ「舞台よろしくお願いします」と明るく登場して、最初は「なんだこの空気の読めない元気な人は」と思ったんです(笑)。でも、そこから演技をつける言葉であったり、励ましてもらうことで救われて。お付き合いの段階で結婚前提という感じで「この人となら一緒に生きていけるかな」と感覚的に思いました。

──2016年にはお子さんも生まれていますね。

倉本 子どもが生まれてからいろんなことは180度変わりました。今は朝4時に起きて、子どもに合わせて夜7時半には寝ています。
なのでテレビを観られなくて、世の中の出来事はスマホのニュースで確認しています。幼稚園に行っている間だけが自分の時間ですけど、家事などやることは永遠にあるので、毎日もうバッタバタしています(笑)。

──その忙しい合間を縫って、2020年からは通信制大学に入学しています。どういった経緯だったのでしょうか?

倉本 昔大学へ進学しなかったことをすごく後悔していたので、どこかで勉強をやり直したいとも思っていたんですよね。それにもともと読書が、言葉がすごく好きだったので、娘が幼稚園に入ったタイミングでやろうと思い、2年前に入学しました。私の場合は4年間で全単位をとるのは難しいので、通信ならではのやり方で少しずつ単位を取るようにしています。

──大学では主に文学を学んでいるのだとか?

倉本 去年はロシア文学を勉強していて、チェーホフやゴーゴリを読んでいました。「ロシア文学とaikoの『カブトムシ』の共通することは何でしょう?」という授業もあり、すごく面白かったです。今年はもっとそこを深めたいという思いもあったんですが、ロシア文学を学ぶことに個人的な葛藤があって......。なので1回離れて、好きだった芥川龍之介について学ぼうと、今は日本文学を勉強しています。

──文学、物語についての勉強は、俳優としての仕事にも役立ちそうですね。

倉本 今は1つのセリフに対して、いろんな方向から見ることができるようになったかもしれません。
それに、夫が演出家として何をやっているか、今まではきちんと分かっていなかったところが最近は分かるようになって。結婚10年が経って、やっとリスペクトし始めました(笑)。

──そんな夫である倉本朋幸さんの初監督映画『どうしようもない僕の ちっぽけな世界は、』が6月25日から公開されます。倉本さんは育児放棄する母・かなを演じています。実際に子を持つ母として感情移入できない部分や、逆に理解できる部分はあったのではないでしょうか。

倉本 かなは無責任で自由な女性で、自分とは全く違うタイプの人ですが、分からなくはない部分もすごくあります。子育てって本当に追い詰められるんですよ。今は情報社会だから「これを食べさせたらいい」「テレビは2時間以上見せると、大人になったときに影響がある」とか情報があふれてしまっていて、何か調べると違う情報にも触れ、結果的に自分のことを追い込んじゃう。なので、これは危険だと思った日からそういった情報や育児本を一切見ないよう決めました。とにかく「自分も健康で、この子も健康で笑っていることが正解だ」とやってきました。

──情報があふれる今は、何か調べるとネガティブな情報を読んで逆に心配を募らせるケースが増えていますよね。ただ周囲に相談する人がいないと、ネットしか頼れないこともありますし、難しさを感じます。


倉本 私が恵まれていたのは、相談する友達もいたし、そのとき住んでいたマンションで一人暮らしをされていたおばあちゃんと仲良くなって。そのおばあちゃんに「子どもは私が遊んでいてあげるからちょっと休んだら」と言ってもらえて、すごく助けられました。やっぱり人との繋がりはすごく大事。育児放棄はよくないことですけれど、本当にちょっとしたボタンの掛け違いで起きてしまうし、他人事ではないとも思っています。

──友達の話が出ましたが、倉本さんのブログには頻繁に安めぐみさんが登場しますよね。

倉本 登場しすぎて、読んでいる人には安さん以外に友達がいないと思われているだろうなと思います(笑)。実際に安さんとしか会ってない時期もあって、子ども同士もすごく仲が良くて、本当に助けてもらっています。知り合ったのが24歳の頃で、そこからずっと月1ペースで会い続けています。最近はコロナになって悲しいニュースも多いので「頑張ってお互い生きようね」とLINEを送り合っています(笑)。

──俳優業のほかに、昨年出演されたテレビ番組の中で小説家を目指すと発言されていました。当時は2021年末までに処女作を発表するとしていましたが、進捗はどうでしょうか?

倉本 実はまだ執筆中なんです(笑)。1回出来上がったものを事務所に見せ、訂正が戻っているのですが、それを直す時間が本当に取れなくて……。
1週間ぐらい自分だけの時間があったらたぶん書けるんですけど、取れて1日2時間程度なんですよね。ただ、書くこと自体は楽しくて楽しくてしょうがないです。ないものを作り出すことはとても大変ですけど、色々なことを考えるし、書くために映画も観るし、本も読むし……すごくいいんです。原稿も、映画の公開までには書き上げます! 

──小説はどんな内容なのでしょうか?

倉本 高校生の話です。SNSがある学生時代を私は経験してないですけど、今の高校生って生きづらいだろうなと思うんです。その中で葛藤する、うまく生きられない主人公を描いています。

──確かに、倉本さんがテレビに一番出演している頃はSNSの影響力は今ほどではありませんでしたね。

倉本 私はSNSのある今の時代のテレビには怖くて出られないです。それに、画質もすっごく良くなっているので、今もテレビに出ている友達は「隠しても、隠しているのが見る人に分かっちゃうから、本当に大変」だと言っていました。私自身、SNSはインスタグラムをやっていますが、全然更新していないですし(笑)、ブログがちょうどよいです。ブログも見たい人だけに見てもらえればもういいなと思っているんですよね。前面に出たいわけじゃないし、ひっそりとできれば十分だなと思っています。


──ちなみに、ミスマガジンの同期の中川翔子さんが約10年ぶりの水着写真集を発売されましたが、倉本さんはいかがですか?

倉本 そうなんだ、すごい! でもしょこたんはずっと可愛いから大丈夫ですね。私は……水着でないグラビアでなら(笑)。でも、誰も見たがらないんじゃないかなあ?

(取材・文/徳重龍徳)
▽倉本清子(くらもと・さやこ)
1983年7月23日生まれ、滋賀県出身。O型。160センチ。2002年、「ミスマガジン2002」のグランプリに選出される。以降『最高の離婚』、『坂道の家』、『ワイルド・ヒーローズ』、『悪魔とラブソング』などのドラマや『ST赤と白の捜査ファイル』、『殺る女』等の映画や舞台で活躍中。
Instagram:sayako_kuramoto
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