『人志松本のすべらない話』『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)、『水曜日のダウンタウン』(TBS系列)、などで自らの壮絶なエピソードを話し、驚愕と共に大爆笑をかっさらう芸人・チャンス大城が自身の半生をまとめた私小説『僕の心臓は右にある』(朝日新聞出版)を上梓した。「まぁ、綺麗ごとにはなっちゃうのかな。
でも、誰かを救えたらいいなっていうのもあります」と語る大城は、どんな気持ちで本を書き上げたのか…。(前編後編の後編) 

【前編はこちら】チャンス大城、自殺を考えた過去の自分へ「ダウンタウンさんに会えた、生きててよかったよ」

【写真】私小説『僕の心臓は右にある』を書き上げたチャンス大城

──これまで「芸人」を何度かお休みされていますよね。

大城 はい、何回か芸人を辞めては復活して。ある日『人志松本のすべらない話』の打ち上げで僕が酒を飲み過ぎて松本さんに「大喜利しましょう!」と絡み酒をしてしまい…。そのときも、「もう辞めよう!」と思って千原兄弟さんに最後の挨拶をしようと思ったら、千原兄弟さんのおかげで東京吉本の所属に戻れることになって。本当に全部、助けてもらってます。千原兄弟さんがいなかったら100パーセント辞めていましたね。

──酔って絡んでしまった松本人志さんとの関係はどうなりましたか。

大城 『水曜日のダウンタウン』に出させてもらったとき、松本さんは僕のことをもう嫌いだろうなって思っていたので、僕のロケの映像を見ている松本さんの顔が見られなかったんです。それで、怖くて手で(テレビ画面の)松本さんの顔を隠しながらそーっと確認して。「笑っているかな? 笑ってる、爆笑してる!!」って、嬉しかったなぁ。

──小説を読むと交友関係も広いですよね。


大城 浅く広くです。ありがたいことに、みんなが「しゃーないなー」みたいな感じでいつも助けてくださるので、詐欺師に向いているかもしれないです。

──私小説を出したその先には、ドラマ化、映画化の夢もあると思います。

大城 それはないと思います。だって、どの部分をメインに切り取ったらいいかわからないでしょ(笑)?

──たしかに人生がぎっしりつまっていますもんね。

大城 でも、僕の役はウエンツ瑛士さんにやってもらいたいです。

──山に埋められて、首から上だけ出ているウエンツさんが見られますね(笑)。

大城 「助けてくれー」ってね。でも視聴者から「さすがにチャンス大城として観れないよ」って言う人も出てくるかもしれないですよね、ウエンツ瑛士さんじゃ。

──では、向かいの山に埋められたワダさん役はどなたが?

大城 菅田将暉くん。ガチガチのメンバーでやりたいです。蓋を開けたら実力者のイケメン俳優ばっかりで、「嘘つけー!」と全員を裏切りたいですね。
でもあの…マジでやっていただけるんだったら…仲野太賀さんとか(照)。

──小説の冒頭にも書かれていましたが、今はお酒も止めて、とても健康的な生活をされているそうですね。

大城 刑務所にいるという設定で、お酒も煙草も止めました。知り合いに清野とおるさんという漫画家がいるんです。彼から、「神社に『1年間タバコ止めるから仕事ください』って言ったら止められますよ」とアドバイスをもらって、その通りに神様と約束してしまったので、すんなり止められました。

同時に神様に見られている気がして、ずっと街の吸い殻拾いもしていたんです。そしたら…不思議な体験でしたね、アパートを出てコンビニ行こうと思ったら神様がいたんですよ。

──す、すごい! 本当に⁉

大城 夜の10時ぐらいですかね? なんて説明したらいいかわからないんですけど、そこに神様がいたんです。僕も芸人として一回結果を出したいですから「あのぅ、このまま吸い殻拾いを続けていくんで、ちょっとイイ感じやなと思ったら、もしよかったら仕事くれませんか?」って頼みました。そうしたら本当に仕事が増えてきたんです。

この間は、友人が病気になったので、友人のために吸い殻拾いしようと思って、「これは自分のためじゃないんです、あの子の病気を治してあげてください」って神様に祈って、300本くらい拾いました。「僕に仕事をくれというのはフリではないんで!」と言いながら(笑)。
今はコンビニに行くと、なるべくトイレも掃除するようにしています。偽善者とかそういう話ではなく、神様が見ているんで…。

──著書のタイトルにもなっていますが、大城さんといえば、右心臓の持ち主ですね。

大城 ある日、主婦の方から「息子が右で産まれたんですけど、ネットで調べたらチャンス大城さんというお笑い芸人さんがそうだと知り、DMさせていただきました。息子がすぐに死ぬんじゃないかと不安でしたが、大城さんが40数年間生きていらっしゃるので、安心してよろしいでしょうか?」とメッセージが来たんですよ。

そこで、「安心してください!」と、とにかく明るい安村くんのパワーをもらいながら返信しました。この本を通して、もちろん笑って欲しいですけど、誰かを救えたらいいなっていう思いはあります。まぁ、綺麗ごとになっちゃうのかな(笑)。

取材・文/富田陽美

▽チャンス大城
ちゃんす・おおしろ 本名は大城文章。1975年1月22日生まれ。兵庫県出身。NSC8期・13期生。
8期生の同期には千原兄弟、FUJIWARAバッファロー吾郎などがいる。芸歴33年にして、現在、『水曜日のダウンタウン』、『さんまのお笑い向上委員会』など数多くのバラエティー番組に引っ張りだこ。「この前、マクドナルドの方が番号札渡すときにこそっと『いつも観てますよ』と言ってくれた。街を歩いていてもガードマンさんや、映画館のもぎりの人にも言われる。顔を刺されるまでに33年かかった。刑務所に入った人が刑期を終えても『お前まだ売れてないのか!』ぐらいの長さやったなぁ」と、知名度が上がった現状に喜びの声。また、「道でコソコソされることも多くてね。一期一会やし、こちらから声かけるわけにもいかないから声かけてくれてもいいのに」とも。そんな気遣いができる人間だからこそ、いろんな事件に巻き込まれるのかもしれない。
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