大食いタレントとしてバラエティ番組などで活躍中の「もえあず」こと、もえのあずき。最初は、アイドルとしての“売り”を作るために、あるいは所属グループを有名にするための手段として、大食い道に邁進したという。
その目論見は見事に的中し、もえあずの名は一気に全国区となっていく。だが売れっ子になった彼女の耳には、次のような声も届くようになった。「なんでアイドルを続けているの? 大食いタレントに専念すればいいじゃん」。実際、どんな心境だったのだろうか?(前後編の後編)

【前編はこちら】もえのあずきがアイドル兼大食い戦士になった意外な理由「恩師つんく♂さんの一言で覚悟を決めた」

【写真】アイドル&大食いファイターとして活躍するもえのあずきの撮り下ろしカット【14点】

「大食いタレントに専念…その問題は大食いを始めた初期からあったんですよね。たしかにビジネス的な面だけを考えたら、タレント業に専念したほうが効率はよかったのかもしれません。スタッフさんも含めて、悩んだのは事実です。でも大きかったのは、やっぱり(アイドルとして恩師である)つんく♂さんの言葉。『お前の本業は歌手なんや。歌を大切にする姿勢が、結果として実人生にもプラスになるはずやから』って言われたんですよ。それを聞いてハッとしましたね。正直、若かった私にはその言葉の深い部分まで理解できていたかは自信ありません。でも今となっては本当にその通りだと思うし、いまだにアイドルを続けていることでもご理解していただけるように、そこは絶対ブレちゃいけないポイントだったと思うんです」

もえのは最初から常勝チャンピオンだったわけではない。
アイドルの中では群を抜いた大食漢だったものの、『元祖!大食い王』(テレビ東京系)に出演するとレベルの高さに苦しめられたという。

「もともと大食いファンじゃなかったこともあって、時間配分とかの“戦術”がよくわかっていなかったんですよ。それから気持ちの面でも甘かったですね。死に物狂いじゃなかったし、アマチュア気分が抜けていなかった。私、大食いで一番大事なのはメンタルだと思うんです。『もう食べられない』と考えるじゃないですか。でもそれって厳密には肉体がギブアップしているわけじゃなくて、脳が勝手にSOSを出しているだけなんですね。だから『もう無理』なんていうのは気のせい。勘違い。『まだ平気だ』って自分の脳を騙していくんです。そのへんはダイエットにも通じる部分があるんじゃないかな。根性論といえばそれまでかもだけど、人間、最後に問われるのは精神力だと思います」

プロの大食いとして覚醒したもえのは、ストイックに研鑽を重ねた。
過去の大食い映像を観ながら「この食材は何分くらいまで口に詰め込めばいいのか?」などメモを取りつつ、独自に研究を続ける毎日。女王・赤阪尊子との出会いも大きかった。女王に顎が弱いことを指摘されたもえのは、普段からスルメを食べるように心掛ける。もちろんフィジカルを鍛えるために筋トレも欠かさなかった。

「私は他の人よりも身体が小さいので、それで応援してくれる人が大勢いたんです。日本人って判官びいき的なところがあるから、『こんな小さいのに、よく頑張っているね』みたいな声が多くて。やっぱり根本がアイドルだから、応援の声に応えたいという気持ちが最大のパワーになるんですね。私は自分のことを強い人間だとは思いません。でも1人じゃないんだと思うと、力が湧いてくるんですよ。メンバーのため、仲間のため、そのご家族のため、つんくさん♂さんのため、応援してくれるすべての人たちのために自分が出せるものは全部出し切りたい」

また、大食い美女を取り上げる際、必ず話題に上がるのが、「大食いと恋愛」というテーマだ。もえのは「アイドルだから原則は恋愛禁止なんですけど」と前置きしたうえで、「ファンの方は男性が多いので、大食いと異性受けの関係については考えることもあります」と神妙に語り始めた。

「学生時代の私は『女の子なのに大食いなんて可愛くない』と考え、わざと少食ぶっていたんですね。
だけど、それは間違いでした。実際は『モリモリ食べるから、見ているだけで気持ちいいね~』とか笑顔になる男性が多いんですよ。だからこの記事を読んでいる女性で『大食いなのが男の人にバレたら、モテなくなるかも』とか心配する人がいたら、そこは大丈夫ですよって伝えたいです。……とはいうものの、やっぱり物事には限度があるんですよね。普通の人の3倍くらいまでだったらモテるんですけど、たとえば私なんかは人の10倍くらい食べるんですね。ここまで来ると、さすがにドン引きされる(笑)。筋トレした細マッチョの男性は女性からモテるけど、体重120kgのボディビルダーとかまでいっちゃうと『私はちょっと……』と遠慮する女性も出てくるはず。何事も“ほどほど”が一番なんでしょうね」

 現在も、もえのはエラバレシというグループでアイドル活動に精を出している。同グループはアイドル育成型エンターテインメント・カフェ「AKIHABARAバックステージpass」の選抜メンバー6人によって構成。アニメやゲームとのタイアップも盛んに行いつつ、独自の世界観でファンの心を掴んでいるようだ。

「“本業はアイドル”という考えは自分の中に常にあったんですけど、現実的にはアイドル活動がほとんどできない時期もあったんですよ。だけどコロナ禍に入ってから大食い系のイベント、それに海外ロケや地方ロケがなくなって、タレント業に余裕が出てきたんですね。
これは本当に怪我の功名と言いますか、私としてはようやく本当にやりたかったアイドルに集中できるという喜びがあるんです」

カメラが回っていない状態でも大食いは続けているもえの。「たとえばお店で冷やし中華を注文するとき、ついつい温かいラーメンやチャーハンも一緒に食べたくなる」らしいので、根っからの大食い体質なのだろう。一方で、大食い選手にしては珍しくお酒も嗜む。ビールなら5リットル、日本酒だと1升くらいは一晩で空けるというから、まさに豪傑そのものである。最近は大好きな日本酒のプロデュースも手掛けるなど、ますますマルチに活躍する姿から目が離せそうにない。
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