話題の芸人にインタビューする不定期連載「このインタビューはフィクションです」。タイトルの通り、半生や今後の目標を聞きながらも、ゲストにお願いするのはひとつだけ、「本当のことは言わないでください」。
今回のゲストはスローテンポの異質な漫才で独走中、タイタン所属のコンビ、キュウのボケ担当ぴろ。一体どんな嘘が飛び出すのか!?  回答の真偽は気にせずに、ゼロタイムで返ってきたアドリブの答えを純粋にお楽しみください。

【写真】“嘘つきインタビュー”に挑戦する、キュウ・ぴろ

──ミステリアスで私生活が見えないぴろさんですが、いわゆる「モーニングルーティン」はあるのでしょうか?

ぴろ 床で寝ているので、起きたら体が痛いんですよ。だから、ストレッチをして体をほぐすところから一日が始まります。

──床で寝なきゃいいじゃないか、という話になると思うのですが。

ぴろ ミニマリストというわけじゃないんですけど、極力モノを増やしたくないんです。ベッドも布団も場所をとるからいらない。そうなると、床で寝るしかないんです。

──モノが少ないということですが、部屋には何があるんですか?

ぴろ 漫画が好きなので本棚にズラッと並んでます。自分が楽しむためのエンタメには出費を惜しまないんです。楽しいからお笑いをやっていますから。楽しくなくなったら意味がないんです。
後は、壁に飾りというか。

──飾り?

ぴろ アメリカで走ってる黄色いタクシーのドアを飾っているんです。部屋をアメリカにしたくて。

──冷蔵庫や洗濯機はあるんですか?

ぴろ 洗濯機はいくつもあります。曜日ごとに分けているので。

──7つほどあると。

ぴろ ベランダに洗濯機を並べているんです。アメリカのコインランドリーみたいな見た目だと思ってもらえたら。

──アメリカへの憧れがあるんですね。

ぴろ 小さい頃にハリウッド映画を観てから、「アメリカってカッコいいな」と憧れているんです。アメリカ人に生まれてこなかったことを悔やんで生きてます。

──親に「何でアメリカ人に産んでくれなかったんだ」と反抗したこともありますか? 

ぴろ 父も母もアメリカ人で、僕だけ日本人なんです。
しかも、日本で生まれて、日本で育てられた。中学高校の時は、「なんで僕から急にアメリカじゃなくなるんだ」という苛立ちがありました。実家にいた時は、両親と僕で食事も違ったんです。両親はハンバーガーやステーキがメインで、主食はマッシュポテト。僕は焼き魚でした。

──日本に馴染んでほしいという優しさかもしれません。

ぴろ いま思えばそうだったのかもしれないけど、当時はわからなくて。一度、勝手にデリバリーのピザを食べようとしたらバレて……ものすごい殴られました。あの時、アメリカを諦めたんです。一人暮らしを始めてから、自分の部屋はアメリカに寄せようと。

──その苛立ちを家庭以外にブツけたことはありますか?

ぴろ 高校1年生の時、初めて付き合った同級生の彼女に金髪を強要しました。自分が無理なら、まわりをアメリカにしようと思ってしまったんです。
あの頃はどうかしてました。

──将来の夢はあったんですか?

ぴろ 子どもの頃はお菓子メーカーに入りたかったですね。日本のお菓子って色が薄いじゃないですか。アメリカのように色を濃くして、お菓子から日本をアメリカに変えたいと思ってました。

──アメリカに行くより、日本をアメリカにしたいと。

ぴろ はい。アメリカに行ったら、そこで終了ですから。

──憧れていた作品はありますか?

ぴろ ニンジャ・タートルズです(キッパリ)。ニンジャ・タートルズが食べているからピザを勝手にデリバリーしたし、ニンジャ・タートルズみたいにピザを食べたかった。でも、人は亀になれないですから。

──漫画家を目指していた時期があったそうですが、ニンジャ・タートルズの影響もあるんでしょうか?

ぴろ ありますね。日本の漫画よりアメコミが好きでした。
自分なりのアメコミを描いていたこともあるんですけど、親にバレちゃいけないから、日本風にアレンジして『米男』とか書いてました。

──『米男』。

ぴろ エックスメンみたいな作品で、小さく「ライスメン」と書いてます。米って日本の主食だけど、「アメリカ」という意味もあるダブルミーニングです。

──どんなキャラクターなんですか?

ぴろ 米を食べるとパワーアップするポパイのようなキャラクターで、甚平を着て和キセルを吸ってます。戦闘シーンはコマ割りもフォントも完全にアメコミで、最終話は米騒動を止めます。

──『米男』は出版社に持ち込んだんですか?

ぴろ 持ち込んだところ、編集の方は30秒くらいで読み終わって「面白くないね」と。40ページ近く描いたのに一瞬で終わりです。何回か持ち込んでダメだったので、漫画家の道は諦めました。

──それでお笑いの道に進んだ、と。

ぴろ 大学を卒業するにあたって、将来は「お笑い」「サーカス」「野球選手」の3択だと思っていたんです。サーカスってモテそうじゃないですか。
猛獣を操ったり、空中ブランコで技をキメるような人って魅力的でしょ。野球はアメリカンドリームを掴みたかったんです。

──メジャーリーグを目指して。

ぴろ いや、日本でやろうと。ただ、心の中で「コント、メジャーリーグ」と言いながら打席に立とうと思ってました。

──そのなかでお笑いを選んだのはなぜですか?

ぴろ 当時、テレビに出ている人たちが全員下ネタしか言ってなかったんですよ。

──そんな時期、ありましたっけ?

ぴろ (無視して)それを観て「勝てそうだな」と思って、お笑いを目指したんです。

──お笑いで憧れている人はいますか?

ぴろ エルビスです。

──歌手のエルビス・プレスリーですか?

ぴろ エルビスの本業はお笑いです。じゃないと、腕にあんなヒラヒラつけませんよ。番組の企画でレコードを出して、それがヒットしたんじゃないですか? 『電波少年』の猿岩石みたいに。

──いろいろあってキュウを結成しますが、「キュウ」というコンビ名に込められたメッセージを教えてください。


ぴろ いろんな説が囁かれているんですけど、僕の本名がキュウの由来なんです。親に怒られるから使ってこなかったけど、「キュー」というアメリカの名前があって。それを「キュウ」に変えました。だから、親も気づいてません。

──両親はお笑いをやっていることも知らないんですか?

ぴろ いや、コンビ名の由来を知らないだけで、応援してくれてます。「YouTubeチャンネルを観たけど、象が3体出てきてケンカするネタに笑ったよ」と連絡をくれて。

──そんなネタは……。

ぴろ キュウのネタにはありません。誰のネタを観ているんだろうと思いながら、聞き流してます。

──もし昨年、M-1の決勝に進出することができたらやるはずだったネタを教えてもらうことはできますか?

ぴろ ひとりずつセリ上がって登場したかったんです。ネタが終わった後も、ひとりずつセリが下がっていく。新しいことをしたいなと思ってました。

──それができたら優勝できた、と。

ぴろ 濃厚だったと思います。

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