総合格闘家の朝倉未来がプロデューサーを務める1分間の格闘技イベント「BreakingDown6」が11月3日に開催される。今回はTHE OUTSIDER軍団とBreakingDown常連の抗争が目玉のひとつ。
THE OUTSIDRは地下格闘技ブームを作った不良格闘技大会で、朝倉未来や朝倉海もこの舞台から大きく飛躍していった。まさにファン垂涎の対抗戦となるが、実現に至るまでに意外なキーマンがいた。“ハマの勇二”こと高垣勇二である。まずは彼の説明に耳を傾けてみよう。

【写真】緊張感を漂わせながらBreakingDownについて語る高垣勇二【5点】

「BreakingDownが盛り上がっていることはもちろん知っていたよ。『この波、乗っかったほうがいいでしょ』って思っていたし。それで俺とクロ(黒石高大)の共通の先輩がいるんだけど、その人と『出てみようか』って話をしているうちに、『だったら昔の仲間を集めてTHE OUTSIDER軍みたいにしたほうが面白いんじゃね?』ということになったわけ。先輩はその場ですぐにBreakinDown関係者に電話をかけて、もう即決。だから対抗戦に関しては俺が言い出しっぺみたいなところがあるんだよね」

THE OUTSIDER時代の高垣は、抜群の当て感と動体視力で才能を開花。主催者の前田日明も「名伯楽の所で育てれば、こいつは世界ランカークラスになる」と断言するほどだった。しかし一方で練習嫌いとしても知られており、試合中盤になるとあからさまにスタミナ切れを起こすなどの弱点もあった。

「もちろん勝ちたいし、勝つつもりではいるよ。
実際、余裕で勝つだろうし。開始3秒で眠らせてやるよ。だけど俺はもっと大きな目線で物事を考えているからさ。今回のBreakinDown出場だって人生の通り道でしかないんだ。別に俺はここで有名人になりたいとか、チヤホヤされたいなんていう気持ちはない。これは他の誰でもない、俺の人生だからね。ディス・イズ・マイ・ライフ。流れに身を任せて、なるようにしかならないわけよ」

THE OUTSIDER出身者の中でも啓之輔や黒石はSNSやYouTubeで情報発信しているが、高垣のプライベートは謎に包まれていた。普段はどんな生活を送っているのだろうか。

「(神奈川県の)大和という街でキャバクラを2軒やっていて、それとは別に横浜・黄金町にでGOD SIDE GYMという格闘技ジムもやっている。一応、ジムは俺が代表ではあるんだけど、地元の仲間と一緒にやっている感じなんだよね。別に俺が教えているわけでもないしさ。
たま~に気が向いたときは身体を動かすこともあるけどね。まぁでも練習なんて面倒くさいからしないよ」

今回、高垣が対戦する相手は山川そうき。“第2の朝倉未来”を志す本格派ストライカーである。しかし本戦の前に行われたオーディションでは、人気出場者・こめおと高垣の間で因縁が勃発。2人はその後もツイッター上で激しい舌戦を繰り広げたのだった。

「こめおとは、いつかやることになる。それは間違いない。今回の相手に決まったのは体重の関係もあったはずだけど、正直、そんなの俺には関係ないからね。だって街でケンカするとき、相手の体重に合わせてなんていられないでしょ」

THE OUTSIDER出場前の高垣は、横浜の街を舞台にアウトローぶりを遺憾なく発揮していた。手を染めた悪事やトラブルの詳細は、とてもここでは書けないほどの危険度。そんな彼の目からすると、現代のヤンキーはどのように映っているのだろうか。

「正直、若い子のことはよくわからないんだよね。
でも、時代が変わったなとは思う。だって今は悪いことなんて何もできないでしょ。街のあらゆる場所にカメラが設置されていて、悪い真似をしようものならすぐパクられちゃう。スマホで誰でも簡単に撮影して、SNSで晒される時代だしさ。だから国としては住みやすくなったんじゃない? 昔よりも安全になったわけだから。でも、やんちゃする子にとっては生きづらい世の中だろうね。いつの時代もそういう若い奴は一定数いるはずだし」

高垣が単なる不良と意を異にするのは、人望が非常に厚いことだ。横浜の街では先輩から可愛がられ、後輩から慕われている。本人も根っからの仲間思い。居酒屋で自分のイメージと違う料理が出ると、勝手に厨房に入って「ちょっと貸してみろ」と鍋を振り始めるような自由奔放さも併せ持つ。周囲はこうした高垣の人柄に魅了されていくのである。そんな彼に対して礼儀知らずな暴言を浴びせるBreakingDown出場者。
自然と鬱積も溜まっているはずだが……。

「カメラが回っているからおとなしくしてやったけど、同じことを街で言われたら速攻で行ってるよね。でも、あいつらもそれはわかっているんじゃない? 自分たちが安全地帯にいるっていう前提のうえ、キャンキャン吠えているだけでさ。エンタメなんだよ、結局。闘いじゃないわけ。どうせ街で俺たちに会ったら、あいつらはビビッて何も言えないんだから。俺ももう40歳近いオッサンになったしさ、若い奴らが頑張っているんだなって微笑ましく感じるんだよね。だけど、あんな奴らが不良とかアウトローと呼ばれるのは少し違うかな」

BreakingDownという大会そのものに対しては「若い奴らに夢を与える素晴らしい場」と絶賛する高垣。自身もTHE OUTSIDRがきっかけで様々な光景を見ることができたと振り返る。拳ひとつで成り上がることができる格闘技大会は、時代を超えた魅力があるのは間違いなさそうだ。

「ある意味、今の子は恵まれていると思うんだよ。THE OUTSIDERの時代はネット配信もYouTubeも今ほど盛んじゃなかったからさ。
俺なんて運よくそこから雑誌『SOUL JAPAN』とかテレビ番組『BAZOOKA!!!』に出ることができたけど、そんなのは本当に一握りだけだったわけ。今は自分で発信すれば、自分のチャンスを掴める時代。BreakingDown出場者なんて、みんな頑張って濃いキャラを作っているじゃん。大したもんだとは思うよ。夢は絶対に叶えられるんだという気持ちで臨んでほしいよね」

どこまでも自由に、自分の感覚のおもむくままに──。制御不可能な“ナチュラル・ボーン・チンピラ”が、大舞台で魅力を爆発させてくれそうだ。

【あわせて読む】黒石高大に聞くBreakingDown参戦の理由「自分の心が壊れるんじゃないかと思った」
編集部おすすめ