3月30日(土)31日(日)に幕張メッセで開催された「Hello! Project 20th Anniversary!! Hello! Project ひなフェス 2019」。初日昼公演はハロプロ20周年企画回として、
に関するニュース">モーニング娘。OGの辻希美加護亜依新垣里沙道重さゆみ鞘師里保が出演し大きな話題を呼んだ。それぞれにそれぞれのストーリーがある中、『月刊エンタメ』で連載コラム「モーニング娘。年代記」を執筆している乗田綾子氏は新垣里沙に注目。ひなフェスの感想を特別コラムとしてお届けする。

2019年3月30日、幕張メッセにて行われた「Hello! Project 20th Anniversary!! Hello! Project ひなフェス 2019」。その昼公演は平成のアイドル史に名を残した辻加護(辻希美・加護亜依)の2人が13年ぶりに共演を果たすステージであり、2010年代のモーニング娘。再ブレイクに大きく貢献した伝説的エース・鞘師里保の復活のステージであり、同時代の伝説的リーダー・道重さゆみも登場するステージであり、間違いなくハロプロ20周年企画のラストに相応しいライブであったのだが……。

そんな中、幸運にもそんな奇跡的現場に立ち会うことのできた客席の私といえば、実はこんな黄緑のリストバンドをこっそり懐に忍ばせていた。

「RISA NIIGAKI GRADUATION 2012.05.18 NIPPON BUDOKAN」

そう、あのひなフェス、実はモーニング娘。歴代在籍2位記録を保持する7代目リーダー・新垣里沙も出演していたのだ。

しかし、それが記憶になかったとしても全然無理はない。
なぜならあの日の新垣里沙の立ち位置は、どう考えても空気がベストポジションだったからだ。そしてまた、新垣里沙もその役割を愚直にやり抜いていた。
「私は頼もしく勇ましい新垣里沙を忘れない」平成最後のモーニング娘。OG共演


辻加護再会や鞘師復活と目まぐるしく移り変わる会場の感情を慣れた煽りで再びひとつにし、偉大なレジェンドたちの影に隠れそうになる現モーニング娘。の若手メンバーをパフォーマンス共演という形で一手に引き受け、モーニング娘。OG(新垣・道重・鞘師)だけのMCでは自ら目立たぬ回し役に徹し、あっという間に出演を終える。

当然、直後のウェブメディアにもテレビの芸能ニュースにも、新垣里沙の名前はまったく出てきていなかった。

しかし、だからこそ、あの日新垣里沙を観にいっていた数少ない新垣ヲタのひとりとして、せめて書き残さねばならないことがあると思った。それはあのひなフェス3月30日昼公演は、おそらく平成最後のモーニング娘。OG共演回であったということ。そしてさらに言えば新垣里沙は、【昭和生まれのモーニング娘。として、現役と共演した平成最後のモーニング娘。OGになった】ということである。


こんなに地味で、でも心から誇らしい事実が、他にあるだろうか。

振り返れば1997年に誕生したモーニング娘。は、まだ全員が昭和生まれのアイドルグループだった。それから本人たちが予期していなかった形でメンバーの卒業と加入は進み、モーニング娘。に初めて平成生まれ(道重さゆみ、田中れいな)が加入したのは結成から6年後の2003年のことだ。

以降、モーニング娘。メンバーは年を追うごとにだんだんと平成生まれの割合が高くなっていく。そしてそんなモーニング娘。の中で当時からリアクションがちょっと古臭かった新垣里沙は、昭和っぽいとよく突っ込まれ、本人も「ギリ昭」(ギリギリ昭和の意)とよく持ちネタにしていた。

そして新垣里沙は2010年、盟友・高橋愛の卒業により本当に「モーニング娘。最後の昭和生まれ」という、かつてない大きな肩書を拝命してしまうことになる。

加入前からモーニング娘。
の大ファンで、そのまま黄金期メンバーがほぼ全員揃っていた2001年のモーニング娘。に5期メンバーとして加入した彼女。そして長い長い人気低迷の時期を青春をかけて支え、グループの新時代を担う9期10期メンバーの加入まで見届けて、2012年5月18日、ついに昭和生まれ最後のモーニング娘。はグループを自ら巣立っていく。

同じく昭和生まれの私の黄緑のリストバンドにも、刻まれていた日付。それは昭和生まれの最後のモーニング娘。が、平成生まれのモーニング娘。たちに夢を託して去っていったという、大きな変化のタイミングでもあったのだ。

しかし。あのひなフェスを新垣里沙を観にいっていた数少ない新垣ヲタだからこそ、同時にこんなことも思う。

「一瞬で地味に過ぎたからこそ、なんかとてもガキさんらしかったな」。

彼女の出番はよりによってあの鞘師里保の復活直後で、道重さゆみが現役当時と変わらぬ黒髪の可愛さを存分に振りまきまくった直後である。
その中で金髪ベリーショートで登場した新垣里沙は、なんかもはやメンバーのお母さんのようだった。

やっぱりもうすっかり忘れ去られていると思うのだが、新垣里沙もプライベートでは昨年離婚を経験していたりする。同じく昭和63年生まれの加護ちゃんほどではないにせよ、ガキさんだって、それなりに思うところのある大人の人生を送っているのだ。

しかしその色々あった上の大人の揺らぎが新垣里沙においては、登場の瞬間から最後に至るまで一切なかったのが、客席で見ていてとても印象的だった。そしてその強い表情はあの日『I WISH』に素直な涙をこらえきれなかった加護ちゃんとは違う形の、彼女なりの、モーニング娘。に対するけじめのような気もした。

頼もしく、勇ましい、アイドル時代の彩りともまた少し違う「30歳の新垣里沙」。

地方在住がゆえに卒コン以来、初めて生で新垣里沙を見る機会に恵まれた、そして同じく昭和後期の生まれである私は、7年の人生経験を経たそのリアリティにこそ、客席でなんだかとてもグッときていた。

ひなフェスから2日後の2019年4月1日。この記事をまさに書き始めたところで、新元号「令和」がついに発表された。

モーニング娘。への加入最小年齢が現時点で小学6年生(辻希美、加護亜依、佐藤優樹工藤遥)であることも踏まえると、モーニング娘。
がこのまま続いてくれればグループ結成から34年後、令和12年頃には「令和生まれのモーニング娘。」が登場することになるのだろうか。

もし本当にその計算の通りに進んだなら、昭和生まれの最後のモーニング娘。である新垣里沙は、43歳頃に令和生まれのモーニング娘。との共演チャンスがやってくるはずだ。

その時はやっぱり、現地で変わらず見届けてみたいものだなぁ、と思う。

「私は頼もしく勇ましい新垣里沙を忘れない」平成最後のモーニング娘。OG共演

現役のモーニング娘。’19と共演するOGたち(3月30日のひなフェスより)