7261組という史上最多エントリーを勝ち抜いて漫才の日本一決定戦「M-1グランプリ決勝」(12月18日放送)に駒を進めたのは、ウエストランド、カベポスター、キュウ、さや香、真空ジェシカ、ダイヤモンド、男性ブランコ、ヨネダ2000、ロングコートダディ。ここに当日の敗者復活戦の勝者を加えた10組が優勝を争うことになる。
M-1に取り憑かれた男であり、M-1のご意見番、スーパーマラドーナ武智が予想する展開と、優勝候補のコンビとは!?(前後半の後編)。

【前編はこちら】M-1に取り憑かれた男・スーパーマラドーナ武智が熱弁、今年の決勝をより面白く観る方法

【写真】M-1に取り憑かれた男・スーパーマラドーナ武智

決勝進出するコンビって、単純に準決勝までのウケの大きさで決まるわけじゃないんです。やっぱり、お客さんの笑うツボと、審査員やプロが笑うツボって違う部分があって。その両方が笑う、より深い面白さを持つコンビが決勝に進む。今回の9組も、そういうコンビでした。

ここ最近の決勝は漫才の熱量や声の大きさ、そういう部分で魅せるいわば「パワー系」のコンビが多かったんですが、今回は割とシュールめの漫才のコンビが多く通った印象です。静と動でいうと、「静」の漫才師が多い。勢いや熱量で盛り上がりを作るわけでなく、自分のセンスをぶつけて笑いを生み出す。それは僕にはマネできないことなので「すごいな」と驚いたのと同時に、例年とは違う、また一皮むけたM-1が始まるかもしれない、という楽しみがありますね。

特に注目しているコンビは3組あって、ウエストランド、ヨネダ2000、さや香です。ウエストランドは予選の段階から、もう会場がうねるくらいの爆笑を取り続けていました。僕としても、井口君の面白さが120%出たネタだなあ、と思いながら見ていました。
あのグチや文句をいうキャラクターの面白さが、考えられるマックスのところまで振り切っている。決勝でも3組に残るところまで行くんじゃないかな。

ヨネダ2000は、あの若さにしてとんでもなくトリッキーで、見ていてド肝を抜かれました。リズム系のネタみたいなのが多いですけど、それでも笑いどころがめっちゃ多い。最近で言うとマヂカルラブリー的な、「理解不能なんだけど面白い」みたいな印象です。去年の決勝でランジャタイに最高得点をつけた立川志らく師匠なんか、めっちゃ気に入るんじゃないですかね。唯一の女性コンビでもありますし、あの舞台で見るヨネダ2000は絶対新鮮に映ると思います。注目です。

さや香は今挙げた3組の中では一番オーソドックスなんですけど、全体的にシュール系の多いラインナップでは、逆に正統派としてめちゃめちゃいい感じに目立つと思っています。あとは、強いネタをちゃんと2本持ってるんですよ。やっぱり2本ないと優勝できないので。僕自身、関西の劇場でさや香を見て来て、5月くらいからもう「仕上がってるな、今年は行くやろな」って思ってました。
正直、一番の優勝候補じゃないかと思っています。

ただここで難しいのは、決勝は順番もめっちゃ大事で。過去の傾向を見てきても、前半で基準点を設けなければいけない関係上、3、4番手まではどうしても点数が渋いんですよ。後半の出番が有利なのは間違いない。この3組も優勝できる力はあるけど、当日の笑神籤(えみくじ)がどうなるか。これもまたひとつの見所ですね。

個人的に、願望も込めた予想としては、敗者復活から勝ち上がったコンビが優勝争いに絡んでこないかな、と思っています。オズワルドやミキを筆頭に、ママタルト、コウテイ、ビスケットブラザーズ、マユリカ…ほんまに紙一重で決勝に進めなかったコンビもたくさんいるので。歴史を振り返ると、敗者復活で初めて優勝したのが07年のサンドウィッチマンさんで、次が15年のトレンディエンジェル。だいたい7、8年周期で優勝コンビが出てるんですよ。完全なオカルトですけど、そろそろ敗者復活枠がかき回してくれるんじゃないかと勝手に思っています。
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