モーニング娘。
’22の加賀楓が、12月10日(土)の日本武道館公演をもってグループを去る。

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現在、23歳。ハロプロ研修生期間を含めると10年以上のアイドル生活に終止符を打つ加賀。卒業発表時に「自分に出来ることは全てやり尽くした」と心境をつづり、卒業後はダンスを勉強し直す予定だという。本稿では加賀のこれまでの経歴や功績を振り返りつつ、苦楽を共にした横山玲奈と北川莉央の証言によって“知られざる素顔”に迫っていきたい。

“苦労人”。
気がつけば、このフレーズが彼女の代名詞になっていた。2012年にモーニング娘。のオーディションを受けたことがきっかけでハロプロ研修生入りした加賀は、キレのあるダンスと凛とした存在感で頭角を現す。℃-uteやモーニング娘。のツアー帯同メンバーにしばしば選ばれ、2015年には「Hello! Project 研修生発表会~春の公開実力診断テスト~」でベストパフォーマンス賞を獲得した。

しかし「デビュー待ったなし」と言われながらも、アイドルの神様は甘くなかった。
後輩の研修生たちに次々と先を越され、仲間の中にはハロプロを去る者も現れる。『Top Yell 2017年3月号』(竹書房)の中で加賀自身が語ったことによると、16年4月に高校2年生になったことで将来に対する不安が肥大化。とうとう「辞めさせてください」とマネージャーに相談したが、「もうちょっと頑張ってみない?」とに留意されたという。

そんな彼女がモーニング娘。’16の13期メンバーに正式決定したのは同年12月のことだった。このとき、同時にグループに入った横山玲奈は次のように振り返る。


「加賀は最初からすごかったですよ。ファンの人は『ついにあの加賀ちゃんが!』と盛り上がっているわけです。歌もダンスも研修生時代からめちゃくちゃ上手だったし、ツアーに帯同していたので最初からメンバーとも打ち解けていましたからね。一方で私は研修生になって4カ月くらいで昇格したものだから、正直知名度も全然なかった(笑)。何をやっても敵わないというのが加入当時の印象でした」

17年12月にボーイッシュな魅力で人気を博した工藤遥が卒業すると、加賀は「イケメンキャラ」「クールビューティー」として女性人気が本格的に増え始め、グループの中でも唯一無二のポジションを確立。しかし同期の横山は、こうした加賀のパブリックイメージに対して違う見方をするようになる。


「私の中の加賀は1日25時間寝ているとか、家でゲームばかりやっているとか、クールととは程遠い感じ。楽屋では誰よりも声が大きいし、常にしゃべり続けています。なにしろ口癖が『ねぇ、聞いて!』ですから(笑)。あとは動画を観ながら笑い声を上げていることも多いかな? でも結局、そういったギャップも加賀の大きな魅力。誰だってギャップ萌えしちゃいますよ! 本人は何1つ狙っていなそうなのがまたずるい(笑)」

加賀はファンによって強力に支えられていた。そのパワーをまざまざと見せつけたのが、加賀温泉郷との強力コラボ実現だった。
もともとは駅に貼られた加賀温泉郷のポスターに加賀ファンが反応し、SNSに投稿するなどのゲリラPRを展開。

これを機に「本人がポスターに登場」「加賀温泉郷観光大使に就任」「浴衣姿の加賀が満載の加賀四湯博のパンフレットが金沢公演で先行配布」「ウェブサイトやスタンプラリーなどのキャンペーンにも加賀を登用」「加賀温泉郷観光大使の継続を願う署名活動」など動きが急拡大していく。ファンの熱量が自治体を動かした稀有なケースとして、アイドル史に残る“事件”だったと言えるだろう。

「加賀さんって本当にみんなから愛される存在なんですよね。私も大好きだし、めちゃくちゃ仲よくさせてもらっています。加入したときは、どうしようもないくらい迷惑をかけてしまったんですけど……」

そう口を開いたのは北川莉央だ。
加賀と横山の13期は、教育係として北川たち15期メンバーを指導していた時期がある。加入当時、15期3人の中で唯一の未経験者である北川はスキップもできない状態で、加賀は指導方法に頭を抱えた。

北川も「当時は周りのことすべてが嫌になっていました。『もうなんだっていいや』って破れかぶれになっていたんですよ」(『Top Yell NEO 2021~2022』/竹書房)と、練習を重ねても思うように上達していかないことに対する気持ちを振り返っている。

そんな北川を見て、「これはマズい」と感じた加賀は、普段は温厚な性格にもかかわらず、あえて厳しい言葉を投げかけて奮闘をうながすことにした。

「北川と同じオーディションを受けた人が今の北川を見たら、『絶対私のほうが踊れるのに』って思っているよ」

発破をかけられたこと北川は完全に覚醒した。その日から意識を改め、気がつけば歌割も多く獲得し、今では人気メンバーとしてグループを牽引する存在となっている。

「加賀さんがダンスを間違えるなんて想像つかないんですよ。リハが始まると、振りが入っていない状態がない。リハーサルがスタートした段階からすでに完璧なんです。もちろんそれはダンスのテクニックがあるからなんですけど、私が言いたいのはそこじゃなくて、練習に取り組む姿勢がすごいということ。加賀さんって自主練の鬼なんです。

加賀さんがいなくなることは、もちろん寂しくてしょうがないですよ。でもそんな中で自分ができることは、加賀さんに見せてもらった死に物狂いで練習する姿勢を引き継ぐこと。16期で入ってきた櫻井梨央ちゃんに続いて、近いうちに17期もおそらく入ってきます。加賀さんの背中から感じた“イズム”を伝えていきたいですね」

娘。の魂は輪廻転生する。最後に武道館で加賀はどんな生き様を見せてくれるのだろうか?