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1 仕事や私生活がうまくいかず気分が沈んでいるとき、悩みが吹き飛ぶような明るい映画は?
「そんな気分の時に僕が観たくなる俳優はジャック・ブラックですね。なかでもオススメ作品は『スクール・オブ・ロック』。これはもう文句ナシにご機嫌な映画です。ジャック・ブラック演じる、荒んだ生活を送るロック好きのオジサンがバンドをクビになって、何もかもうまくいかなくなった時に、たまたま友達に来た学校の先生の仕事を見つけて自分が代わりに行ってしまう。でも彼はロックしか知らないですから、ロックの授業をして、子どもたちとロックバンドを組む…というお話なんですけど、とにかくジャック・ブラックの動きや演技を観ているだけで元気が出てきます。
俳優でいえばジム・キャリーにも同じようなパワーがありますよね。彼が主演の『イエスマン』という、人生がドン詰まった主人公が、すべてに対してイエスと言った瞬間から人生が変わっていくというコメディ作品があるんですが、これも同時にオススメします。
あと『スクール・オブ・ロック』はエンドロールも見逃さないでください。あれは本当の練習風景を、たまたま記録用のハンディカムかなんかで撮っていた映像で、ジャック・ブラックと子どもたちの掛け合いとか、その場でバンドのサウンドをアレンジしていく様子など、ドキュメンタリーとしてもよく出来ているんですよ」
2 受験勉強などで行き詰まった心に効く、観るとやる気がみなぎってくる映画は?
「これは簡単。
オススメのシーンは、これもエンドロールなんですけど、フィラデルフィアの美術館のところで、一般の人たちがロッキーのマネをして階段登って、両手を挙げてガッツポーズするホームビデオが延々と流れるところですね。あれはグっときます。
ロッキーって、言ってしまえば映画に出てくる架空の人物じゃないですか。でも、本当にいたような感覚になってますし、モハメド・アリみたいなスポーツ界の偉人と変わらない存在になっている。ロッキーは、それぞれの心の中にリアルに存在していて、いまも輝き続けている。
何が言いたいかというと、これはロッキーを観た世界中の人々が、映画の魔法にかかっているということなんですよ。だから、あの階段に行ったら、誰もがロッキーのようにビデオを撮りたくなる。
3 寒い冬は、外でデートするよりも部屋の中でぬくぬくしたい。そんなカップルに向けた、より仲が深まり、心の距離が近くなるようなオススメ映画は?
「男と女、それぞれ見方がありますし、意見も違いますから、カップルのどちらも楽しめる映画ってなかなか難しいんですよ。…と言い訳しつつも絞り出しました。『コーダ 愛のうた』ですね。これはアカデミー賞を取った名作ですけど、愛する人のために何が自分に出来るのかというテーマがあるなかで、それでも自分の夢を追うにはどうすればいいのか、そのために嘘をつく優しさとは、という領域まで深堀っていくんですよね。
主人公の女のコは、歌の才能がすごくあるんだけど、 周りの家族が全員が耳に障害がある、いわゆる聾唖者なんですね。女のコは音楽系のいい大学に進みたいんだけど、家族の世話や通訳ができるのは自分しかいない。その夢と家族の板挟みで彼女が悩むというお話なんです。
この両親は歌を聴くことができない。だから、彼女の喉元にお父さんが耳を当てて、その振動で歌を感じ取ろうとするシーンがあるんですよ。
男と女は見方も違うし、他人同士ですから、どうしても相容れない、分かり合えない部分ってあると思うんですけど、それは健常者と聾唖者も同じなんじゃないかと。喉に耳をあてるくらいのことをして、感じ取ろうとすれば、分かり合えるんじゃないか。
そういう意味では、ケンカしてるカップルとか、倦怠期のご夫婦が観れば、伝え合う、分かり合うという恋愛の原点を見つめ直すことができる映画なんじゃないかと思いますね」
4 映画は楽しければいいというものではない。あえて鬱々とした気分に浸りたい夜もある。そんな時にピッタリで、観たことを後悔したくなるような映画は?
「これも定番ですけど『ダンサー・イン・ザ・ダーク』。もう観終わったあと、こんな映画を作る人がいるんだと驚いたくらい後味が悪いです。主人公を追い込んで追い込んで、さらに追い込んで、最後にそうなってしまうんだというね。これは確実に鬱々とします。
でも、こういう映画って需要があるんですよね。他にも『ドッグヴィル』とか『少年は残酷な弓を射る』とか。あと『ナイトクローラー』もイヤですよね。
ラストの後味の悪さでいえば、やっぱり『ミスト』でしょうね。新作だと『ザ・メニュー』もかなり鬱なラストなので、ぜひ劇場でズーンと落ち込んでいてください」
5 映画を観る醍醐味は、やっぱり感動。世知辛い現実に背を向けて、観るだけでハッピーになれる映画とは?
「個人的にオススメしたいのは『オーロラの彼方へ』という作品ですね。全然ヒットしなかった作品なんですけど、後味が最高に気持ちいい、隠れた名作だと思います。一種のタイムパラドックスもので、主人公がオーロラが出る日に無線機をいじってたら、 30年前のお父さんと繋がるんですよ。そのお父さんは消防士として働いている最中に殉職してしまっていて、調べると、その無線が通じている6日後に事故が起こることがわかる。息子はその事実を知って、歴史を修正してなんとかお父さんを救おうとするんです。
ポイントは、今と30年前がリアルタイムに繋がるので、このお父さんと主人公が同世代ということですね。
僕は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』がオールタイム・ベストですから、基本的にタイムトラベル系の作品が好きなんですよ。最近はタイムリープという、同じ時間を繰り返す作品が増えてますよね。『恋はデジャヴ』あたりから始まって、『バタフライ・エフェクト』とか。あとアクションものだと、『ミッション8ミニッツ』、トム・クルーズの『オール・ユー・ニード・イズ・キル』。ホラーだと『ハッピー・デス・デイ』もあります。最近の邦画で『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』という秀逸な作品も。タイムトラベルものは、アイディアや仕掛けが出尽くしたと思ってても、この手があったのかと感心する作品が次々と出てきますし、最後はハッピーな気持ちになれる可能性が高いジャンルだと思います」
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