【写真】ジェームズ・キャメロンの渾身の新作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
初週興行収入は、ハリウッド映画がまだまだアウェーな環境下といわれるインドでも、1位を獲得(2022年に公開されたハリウッド映画の初週興行収/ 12月16~18日)。
前作『アバター』は、3D映画の導入時期と重なったことで最先端の映像体験ができたことも相まって、結果興行収入世界歴代1位という記録的な成績を映画史に残した (一度は『アベンジャーズ/エンドゲーム』に抜かれたが、2021年の再上映分を計上するという反則技で奪還) 。
アトラクション的でストーリー性が乏しいという意見もあるし、それは間違いないといえばそうなのだが、観たことがない世界を構築したことの凄さは誰もが評価しないではいられないだろう。
『タイタニック』(1997)や『アリータ: バトル・エンジェル』(2019)など、ジェームズ・キャメロン作品をいくつも手掛けてきたプロューサーのジョン・ランドーは、初めて『アバター』の企画を聞かされたとき、まるで1961年の月面探査計画のことを聞いた時と同じような衝撃を受けたと語っている。キャメロンにとって『アバター』は、彼が作り出した惑星そのもの。多くのクリエイターたちが知らない惑星を探索するような気持ちで創作にあたっていたのだ。
さらにジェームズ・キャメロンという人物は、映画監督やプロデューサーとして知られているが、優れたデザイナーでもあり、『ターミネーター』の骨格や『エイリアン2』のエイリアンクイーンやパワーローダーをデザインしたというのも有名な話。キャメロンが想像するものは常に独創性に満ちているのだ。
『アバター』では、そんなキャメロンの惑星像を形にするために、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『メン・イン・ブラック』シリーズなどで知られるWETAのスタッフや、コンセプトデザイナーのディラン・コール、ベン・プロクター、ティベル・エリングソンなど一流のチームが全力で取り組んできた。
『アバター』の惑星に住む生物や植物は、ファンタジーではなく、生態学的に見てもあり得るものでなければならないという。そう聞くと劇中に出てくる生物が、白亜紀から古第三紀の中間に生息していた頃の生物に似ているのも、なんとなく納得がいく。
特に今作では、キャメロンの生物愛がさらに強く感じることができる。その理由は、舞台が「海」だからだ。キャメロンは青という色に取りつかれているのかと思うほど、映画のカラーは青が多い。
例えば、『エイリアン2』(1986)も『アビス』(1989)も青いイメージがないだろうか。さらに言えば『エイリアンズ・オブ・ザ・ディープ』(2005)や『ジェームズ・キャメロン深海への挑戦』(2014)など、深海生物を追ったドキュメンタリーをいくつか手掛けているし、2021年にも『クジラと海洋生物たちの社会』でクジラの生態系についてのドキュメンタリーを製作している。ちなみに、クジラへの愛は、今作の中でも痛いほど伝わってくる。
それらの作品の終着点が『アバター』シリーズといえるが、続編となる今作が企画から映画化までに10年以上も歳月を必要したのは、キャメロンの描く世界の着想元が「海」や「深海」からきているから。制作を妥協するわけにはいかなかったのだ。それほど「海」に取りつかれたキャメロンが想像する、誰も観たことのない「海」が観られるというだけでも、好奇心が掻き立てられるはずだ。
ストーリー自体はいたってシンプル。人間はいつの時代も、どこの惑星でも野蛮な生き物だというメッセージ性もあるが、ストーリーを楽しむというよりは、キャメロンの創造した惑星を探索するというのが正しい観方であるのだ。
【ストーリー】
神秘の星パンドラの一員となった元海兵隊員のジェイクは、ナヴィの女性ネイティリと家族を築き、子供たちと平和に暮らしていた。再び人類がパンドラに現れるまでは...。神聖な森を追われた一家は、“海の部族”の元へ身を寄せる。だが、この美しい海辺の楽園にも、侵略の手は迫っていた……。
■監督・製作・脚本:ジェームズ・キャメロン
■製作:ジョン・ランドー
■出演:サム・ワーシントン/ゾーイ・サルダナ/シガーニー・ウィーバー他
公式サイト:https://www.20thcenturystudios.jp/movies/avatar2
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2022年 12月16日(金) 全国劇場公開
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