【前編はこちら】『ザ・ノンフィクション』神回、ゲーム芸人・フジタが語る父親に捨てられた壮絶な幼少期
【写真】『ザ・ノンフィクション』で話題を呼んだゲーム芸人・フジタ
「『ザ・ノンフィクション』を観た知り合いや、それこそツイッターのフォロワーの方とか知らない人からも、いろんなご意見をいただいたんです。『痴呆症の父親を施設に入れなきゃだめだ』とか、『内縁の妻と切れさせたほうがいい』とか。そうしたらいいっていうのはわかってるんですけど、認知症と介護についていえば、父親のお姉さんも同じような状態で、その子どもが自宅で面倒を看てるんです。だから僕もまだなんとかなるんじゃないかって感じが強くあって」
番組では、フジタへの密着取材を通して、フジタの父が2か月分の年金を一月で使い切り、キャッシングをしてまでも内縁の妻Aさんに度々金を渡していること、アルツハイマー型認知症を診断されたことが取り上げられていた。父親の生活を心配し金銭管理を申し出たフジタと、フジタが父親の財産を奪おうとしていると思い違いをしたAさんとの間の確執も取り沙汰されていたが、番組のラストでは、父親の年金を内縁の妻であるAさんが管理する代わりに、定期的に父親の暮らす家を掃除して食事を作ることといった条件で合意し、新たなスタートを切れたようにも思えた。が、あれから二ヶ月経った今、事態はまた違った局面を迎えているという。
「あの放送を観た後に、内縁の妻が『お金目当てと思われてるの嫌だから(毎月、フジタの父親から毎月渡されていた)3万円は、もういらないけど、その代わりに父親の面倒も見たくない、任せる』って言い出したんです。僕はお金を渡すことなく2人が外で会う分には全然問題ないと思うんですよ。メシを食わせるくらいなら全然いいし。僕はもう、彼女にお金を渡すつもりはないです。内縁の妻が、それで納得するのかしないのか」
Aさんが匙を投げたことで、父親の金銭管理は再びフジタがすることになるという。
「本当は、内縁の妻に財産を全部取られちゃっても、内実を見なければすっきりするんですよ。でも、今の僕は、ゲーム芸人という仕事にすごく満足しているんですけど、やっぱり当時“相手の子どもを殺していたら”、こういう今はなかったんじゃないのかって思っちゃうんですよね。あの頃の父親は、内縁の妻に『自分の子どもよりも可愛がってくれるんだ』って思ってもらうために、相手の子どもを可愛がって、逆に僕には体罰を与えていた。だから、向こうの子どもがいなきゃすべて解決すると思って、実は小学生の頃、殺そうと思ってたんです。実際はやってないわけですけど。いまそれを人に話すと『やらなくてよかったね』って言われるんですけど。でも、今も父親と内縁の妻の関係が続いているからこそ、『あの時本当にやっておけば、話が変わったんじゃないのかな』って…」
再びの一波乱が起きそうな予感もあるが、金銭問題のほかに、フジタはもうひとつの問題を抱えている。父親の認知症と介護の問題だ。いくら身内に在宅介護という選択をした人が存在するといっても、家庭状況は人それぞれであるし、フジタの場合は、前編で紹介したように、幼少期のネグレクトや暴力など、父親から散々な目に合わされてもいる。それでもなお、父親に尽くそうとするのはどうしてなのか。
「昔のことを謝ってくれたからですね。それと遺産です。
フジタにとっては、父親が「お前にやる」と約束してくれた遺産は “父親に愛された証拠”と思えるものに当たるのかもしれない。清算できない過去を抱えながらも、いまだ父親と自分にとってのベストの道を模索しているフジタは、最近婚活を始めたという。いったいどんな家庭を望んでいるのだろうか。
「家族は、バラバラじゃなくて一緒にいたいです。仲がいい家庭。子どもが欲しいんです。これは押し付けでよくないかもですけど、僕が出来なかったことをしてもらいたい。僕を育ててくれたファミコンのマリオブラザーズとかアイスクライマーとかスト2とか、ふたり対戦で出来るゲームを一緒にやって、で、ゲームが好きな子に育ったら、高橋名人みたいな感じになって欲しいです」
(取材・文/大泉りか)
▽『漫画版 ファミコンに育てられた男』
刊行:双葉社
発売日:2022.12.22
予価:1,595円 (本体1,450円)
書籍『ファミコンに育てられた男』のコミカライズ。主人公のフジタ氏はグレープカンパニー所属のゲーム芸人。小学校入学前に母親が急死、父親の育児放棄により壮絶な半生を歩んだ。彼の孤独を癒し、人生を教えてくれたのはファミコンのソフトだった。