『ヲタクに恋は難しい』(2020)や『新解釈・三國志』(2020)など、現代の日本を代表するコメディヒットメーカー、福田雄一監督による新作映画は、なんとクリスマス映画『ブラックナイトパレード』。もちろん単純なクリスマス映画ではなく、福田監督ならではのクセの強いギミックがいたるところに仕掛けられていることは言うまでもない。


【写真】吉沢 亮、橋本環奈出演、福田雄一新作『ブラックナイトパレード』

『ブラックナイトパレード』は、ストーリー展開、作品を通して何を描きたいかは、正直よく理解できない部分が多く、難解な作品ではあるが、テンションとノリで突き進む強引なストーリーテリングは、もはやリスペクトに値する。それが福田監督の良さであり、それで良いと思わせるのも巨匠である証拠だ。

福田監督作品の特徴ともいえるのは、出演俳優陣の、他では観ることのできない一面を発見できるということだ。

「天使すぎるアイドル」というキャッチフレーズの清純派路線で売ってきたはずの橋本環奈は、福田作品に出演する度に「変顔ショー」が過激さを増す。ここまできたらお家芸といったところで、福田作品以外の『かぐや様は告らせたい~ 天才たちの恋愛頭脳戦~』(2019)や『カラダ探し』(2022)なども巻き込んで、なくてはならないものになりつつあるが、今作では、そんな変顔に加えて、もう一段階上のサプライズが仕掛けられている。

橋本環奈ファンは覚悟して観てもらいたいが、そんな橋本環奈の姿こそが福田監督からのクリスマスプレゼントなのかもしれない……。


橋本環奈はたまたま変顔だったのかもしれないが、福田監督は俳優の新たな一面を引き出し、そして開花させることに関しては天才的といえる。

今作の主人公を演じる吉沢亮も『銀魂』(2017)や『斉木楠雄のΨ難』(2017)など、複数の福田監督作品には出演しており、主役に抜擢されたのは今回が初めて。福田作品以外の『青くて痛くて脆い』(2020)や『AWAKE』(2020)では少し闇がある役を演じ、12月19日に最終回をむかえたばかりのフジテレビドラマ『PICU 小児集中治療室』では真面目な医療ドラマのはずなのに、ちょっと変な一面を見せている。今回、『ブラックナイトパレード』では白目を剥いて痙攣するなど、他の作品で見たことがない振り幅を見せている。

賀来賢人も福田雄一作品である『今日から俺は!! 』に出演していなければ、ケンタッキーのCMでコミカル演技を披露していないかもしれない……。

また、今作の舞台はコンビニ? といえるほど、コンビニのシーンが非常に多い。
その中のユルくてシュールな掛け合いを観ていると、福田監督が脚本・演出を手掛けたドラマ『ニーチェ先生』(2016)を思い出すほどで、いつまででも観たくなってくる。ネット配信などの短編で続編を作ってもらいたいところだ。

【ストーリー】
これは、本当のクリスマスの話――。コンビニ「ポーソン練間北口店」バイト歴3年。受験、就活失敗。彼女無し。
何をやってもダメな男・日野三春。世間がクリスマスムード一色で盛り上がる中、突如、黒いサンタ服を着た謎の男・クネヒトに連れ去られてしまう。目覚めるとそこは、クリスマスを裏で運営する「サンタクロースハウス」‼世界中から届く子供たちの手紙、山積みのプレゼント、そして大勢のサンタたち…。なんと彼らは、悪い子にがっかりするプレゼントを贈る超激務の“ブラックサンタ”だった。そんな“ブラックサンタ”に就職した三春は、強烈な個性を持つ同僚たち・北条志乃、田中カイザー、古平鉄平と共に働き始めるが、クリスマス滅亡を目論む怪しい影が迫る……。

出演:吉沢 亮、橋本環奈、中川大志渡邊圭祐若月佑美、藤井美菜、山田裕貴佐藤二朗玉木宏
原作:「ブラックナイトパレード」中村光(集英社「ウルトラジャンプ」「デジタルマーガレット」連載)
脚本・監督:福田雄一
脚本:鎌田哲生
制作プロダクション:CREDEUS
配給:東宝
(C)2022「ブラックナイトパレード」製作委員会 (C)中村光/集英社
2022年 12月16日(金) 全国劇場公開

【写真】若月佑美が福田雄一監督作品『ブラックナイトパレード』に出演、佐藤二朗とタッグ